果実の波止場

10まんぼると

雨模様

 僕は世間でいう『引きこもり』と言われるような人だ。ネットで配信を定期的にしながらその収益で何とかお金を賄っている。とはいえ全く出ない訳ではなく、お弁当や飲み物を買うために週に1回ほどコンビニに向かっている。

今日も僕は狭いアパートの中から古びた冷蔵庫の中から昼ごはんを食べようと扉を開ける。しかし中は伽藍堂だ。重たい足を動かしながら5分程かけて近くのコンビニへ向かった。途中、曇天の空を見て天気予報で雨が降るとか流れていたような気もすると思ったが歩く距離が増えるよりはマシだろうと考え、そのまま歩くことにした。行くタイミングはいつも同じってことではないがほぼ必ずと言ってもいいほど見慣れた店員がいる。20代後半くらいであろう男性店員だ。その人に沢山のお弁当とりんごジュースを渡して会計を済ませる。言わなくてもレジ袋をつけてくれるくらいにはずっとこの生活を繰り返している。だいた5年くらいだろうか。ある程度バランスに気をつけながらお弁当を選んでいるが飲み物は必ずりんごジュースを買う。お茶も珈琲も幼少期に苦いと感じて以来トラウマになってずっと飲もうとしていない。りんごジュースが1番好きというのもあって別に飽きることも無い。確実に美味しいものを選んでいるだけだ。重いレジ袋を手に持って自動ドアを出ると予想通り雨が降っていた。コンビニの中で雨音が微かに聴こえていたからビニール傘も買おうと思ったがこれくらいなら濡れても構わない。節約の方が大切だ。だが、しばらく歩いていると雨が横殴りになってきて車も水飛沫をあげるようになっていた。流石に雨宿りをした方がいいと感じた僕は近くの喫茶店へと入った。


「いらっしゃいませ」


お洒落な店内の奥からから1人の女性が現れる。店内は珈琲の匂いで包まれていた。その匂いは、ほとんど珈琲を飲んだことのない僕にとっては新鮮でどこか切なく感じさせた。

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