第3話 嫌がらせ

僕はショックで次の日、学校を休んだ。

あれから幼馴染の麗華が僕の家に来ることは無くなっていた。


麗華のお母さんが仕事でいつも遅くなるので、夕食は僕の家で一緒に食べる事も多かったんだけど、それにも来なくなった。

いや、僕がいるのが気まずいから来れなくなったのか……


母さんから麗華と喧嘩でもしたのかと聞かれたけど、有耶無耶にして誤魔化した。

麗華が年頃になって恥ずかしくなったと勘違いした母さんは、それ以上突っ込んで来ることも無かった。


それからしばらくして僕は学校で、ぽっちゃりストーカー野郎という不本意なあだ名を付けられていた。

背の低いぽっちゃりした僕が麗華に対してストーカーしているという意味だ。


たぶん麗華の彼氏であるテニス部の赤羽先輩が流した噂だ。

同じクラスの皆は面と向かって言っては来ないけど、他クラスのテニス部員が急に僕に言ってくる様になったので、そういう事だと思う。


僕は誓って麗華をストーカーした事は無い。

だけど家が隣りなので行きも帰りも方向が全く一緒なんだ。

何度か一緒に帰る二人と鉢合わせする場面もあった。

ストーカーは事実でないにしても彼氏としては気に入らないんだろう。


僕はそれに言い返す気力も無く、麗華も積極的に僕を庇ってはくれない様なので、段々とそのあだ名は定着していった。


意気消沈する僕に、親友の達也と同じ中学から来た女子で面識もある渡辺さんは、僕はそんな事をしていないと、わかってくれていたのが救いだった。


特に渡辺さんは、他のクラスから突撃してきた麗華の友達の非難から僕を庇って立ちはだかってくれたりしたんだ。




ーーーーー




五月のゴールデンウィーク明けから、僕に対する物理的な嫌がらせも出てきた。


具体的には上履きや机への名誉を毀損する様な落書きや、机の中にゴミを入れられたり、体操着をゴミ箱に捨てられたりもしていた。


誰かがご丁寧に早起きまでしてやっているんだろう。

御苦労な事だけどやっている事は小学生みたいだ。

テニス部の朝練と嫌がらせのある日が同じなので、恐らく赤羽先輩とやらの指示でテニス部員がやっているんだと思う。


僕の様子から落書きに気づいた達也や渡辺さんが、消すのを手伝ってくれるんだけど、僕に関わると同じ目に合いそうなので今はそっとして欲しいとお願いした。

僕は担任の先生にはこの事を相談したけど、面倒くさそうに注意して見守ると言うだけで、逆に僕のストーカー疑惑を追求して来る有り様だった。


聞けば担任はテニス部のコーチでもあるという事だ。

うちの学校はテニス部が全国レベルで、絶大な権限を持っている。

これでは僕の言い分を通す事は難しいだろう。


楽しかった入学当初とは異なり、麗華に振られてから僕の日常は地獄の様な日々となってしまったんだ。


僕は一体どうすれば良いんだろう……




ーーーーー




もう僕の手には負えない。

このままだと心がすり減って自◯してしまうかも。

僕はとうとう耐えきれなくなって、親に事情を全て話して相談する事にした。


母さんは僕が何よりも一番大切だと抱き締めてくれて、麗華は金輪際家には出入り禁止にすると言ってくれた。

大谷家に対してあれだけ協力したのに! と物凄く怒っていた様子だった。

何やら大人の事情でも大事になりそうで、怒った母さんは凄く怖かった。


父さんの方は、僕の話を聞いて直ぐに引っ越しの準備を整えてくれて、次の週にはもう引っ越しをする事になった。

父さんは人の上に立つ仕事をしているそうだけど、聞いて納得の物凄い行動力だ。

転校も視野に入れて、学校の方にも何やら根回しをしてくれるみたいだ。


親の存在は本当にありがたいと身に沁みて思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る