配信26 ニュース:『魔法の目』を不正利用、男を逮捕
夜十時。
夜の帳がすっかり落ち、闇の合間を魔物や盗賊たちが動き出すころ。人々は通信用の魔石パネルや、装具につけられた魔石に耳を傾ける。
やがて、ジジッと音がしてパネルからひとつの映像が浮き上がる。そこから心地の良い音楽が流れはじめると、聞こえてくるのは明るい少女の声と、やや不機嫌にも思える低い男の声――。
――――――――――――――――――――
「やあやあ。今日も素敵な夜をお過ごしの皆様、こんばんは。今夜もはじまる夜のおしゃべり、『深夜同盟』。お相手は私、アーシャ・ルナベッタと――」
「……バルバ・ベルゴォルだ……」
「この配信は、通信用魔力ネットワークの一部を『お借り』し、こちら独自のネットワークを介在して行われています。みなさま、お手元の魔石パネルや装具類の宝玉で配信そのものや音源の調節ができるぞ。それじゃあ、時間までたっぷり楽しんでいってくれ」
「バル、昨日は剣持ってるって話したけど」
「……もしかすると、今度は魔法の話か?」
「えっ、すごい! なんでわかったんだ!?」
「そりゃわかるわ!」
「何魔法が得意なの? 闇?」
「最初から正解を言うな。答えにくいだろうが」
「……えー、闇かあ」
「なぜそんな不服そうな顔をする!?」
「いや……、こう、あんまり驚きが無いなって……」
「それはそれで吾輩はどう反応すればいいんだ」
「意外にさあ、光魔法とか使えたら面白いかなって」
「そこで出してくるのが光魔法なのも発想力を疑うぞ」
「うわ、ひどっ」
「でも中には属性によらない魔法ってあるよね。無属性的な」
「ああ……、魔法の鍵とかか?」
「そうそう。盗賊がいないパーティとかだと、魔法使いが鍵開け担当してるところもあるって聞くよ」
「魔法の鍵なら、罠があっても関係無いからな。……魔力を消費するから、魔法使いにもよると思うが」
「そんなにガンガン使うものじゃないのかもね」
「我が軍にくだった魔法使いの奴等も、たいてい手先の器用な奴等に任せているからな。罠も付けられるし」
「へー。……いや、へーって言ったけど、マジでどういう状況?」
「ダンジョンでお前らが発見している宝箱だ。アレは一応保管箱なのだぞ」
「アレって保管箱なの!?」
「他になんだというんだ!?」
「でもこういう無属性の魔法って、たいていダンジョンの中で使うのが多いよね」
「そうだな」
「でもそんな無属性魔法を犯罪に使った男が逮捕されたニュースが入ってきてます」
「いつも通りのフリだな……」
+++――――――――――――――――――――+++
《『魔法の目』を不正利用か 魔術師の男を逮捕》
ザルツ王国の首都エルザルツで、魔術師の男が盗撮で逮捕された。
男は湯浴み場や宿屋で『魔法の目』を使って女性冒険者の裸などをのぞき、その様子を撮影していた。
『魔法の目』はマジック・アイ、ウィザード・アイなどとも呼ばれる魔法の一種。
魔法で作り上げた目を通して、小さな隙間や曲がり角の向こうなどを見ることができるという魔法だ。本来はダンジョン内での斥候や調査目的で使われ、この魔法を覚えている魔術師がいると重宝されることがある。
同じ『魔法の目』を使っている冒険者の男性はこう話す。「『魔法の目』は魔法で作った目を通して自分の目で見るものなので、万能ではありません。必ず周囲を警戒してくれる仲間が必要になります。また、『魔法の目』の効果範囲は魔術師によっても違います」
実際、逮捕された男は『魔法の目』を使ってのぞきをしている最中、周囲を騎士団に囲まれたというが、しばらく囲まれたことにも気がついていなかったという。その間に魔力感知などで魔力のもとを確かめて現行犯逮捕された。
男性は続いて、「本来とは違った目的で使われると、他に同じ魔法が使える人達が変な目で見られたり、頼まれたりするのでやめてほしい。今回はちゃんと犯人が捕まって良かった。被害に遭われた女性たちに二次被害が無ければいいんですが」とも語った。
男は撮影した映像を編集して裏で売っていたものと見られ、騎士団は余罪を追及している。
+++――――――――――――――――――――+++
「……」
「バルが見た事無い顔をしている」
「さすがに吾輩だって呆れることはある」
「魔法の使い方というのは魔術師個人に任されるものだからな。どう使おうが自由だ。包丁を料理に使うか、他人を刺すのに使うか、敵と戦うために使うか……というものだな」
「なんかバルに言いたいこと全部言われた気がする」
「言っちゃ悪いか!?」
「悪くないけど、魔王にまっとうなこと言われると変な気分にならない?」
「ならない? って本人に聞くな、本人に」
「まあでも、うっかりのぞいたとかじゃなくて撮影した映像売ってたのは悪質だよね、普通に」
「せっかくの魔法をしょうもない使い方を……」
「あっ、そういう呆れ方?」
「しょうもないとは思わんのか?」
「思う」
「そうだろう?」
「でも魔王に呆れられてるこの人もだいぶ珍しい気がしてきた」
「そんな珍品を見るような目をするな」
「まあでもねえ。のぞきだの勝手に売るだの、やっちゃダメだよ~。魔法を使った悪戯の域を超えてるからな」
「ま、騎士団もちゃんと仕事はしたってことだろう」
「そうだな~。みんなも悪戯の域を超えた魔法の使い方とかはしちゃダメだぞ。というわけで今日はこのあたりでいったんブレイク!」
「それじゃ、このあとも最後まで楽しんでいってね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます