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アイタラのお母さんが僕の分もお弁当を作ってくれたと聞いたときは驚いた。親切すぎるんじゃないか。お昼担当の警備員はものすごく感じが悪いので、本当に助かった。不機嫌そうなおっさんの「フン」「フンッ」という威嚇に脅かされずに済む。
タッパに満たされたポイを掬って、もう一つのタッパに詰められたおかずと一緒に食べる。漬けマグロが一番美味しかった。この一品、家庭によってどんなタレを使うかが大きく異なるのだが、珍しいことにワサビが入っている。薄緑の粒が濃い味にメリハリを付けていた。アイタラ曰く、外国からの輸入品をメインに扱っている店があって、そこで買ってきているのだとか。
ワサビは好きだ。寿司や刺身が好きなので、日本にいるうちに薬味の味も自然と覚えていった。初めて食べたときはひどく咳き込んだりしたものの、今ではないと物足りなく思うくらい。
サファイキには元々香辛料の文化がない。胡椒や唐辛子が入ってきたのも近代以降のことだとされている。それまでは味付けの基本は塩だけだった。
つくづく今の時代に生まれてよかったと思う。豊かな食生活、快適な住環境、学問の自由。まあこのまま軟禁され続けたり牢獄にぶち込まれたりしたら簡単に失われてしまうだろうものばかりだが。
そういえば、スマホの充電をアイタラに借りた。バッチリ100%。これでしばらく安心である。何から何までお世話になりっぱなしだが、いつか何かしらの形でお返しをしたいものだ。
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