第31話 攻略対象たち

ちょっと物語が気になったので、攻略対象を調べてみる。巻き込まれないように遠くからなら大丈夫だろう。


一番調べやすいのは、宰相の長男。出没場所は学園図書館。次は、大商人の長男。マークさんなら知っていそう。騎士団長の次男が一番調べにくい。王子の護衛で王子の傍らにいるので、ヒロインと遭遇する可能性が上がる。


とりあえず、図書館に行ってみよう。

学園は、コの字型の建物の並びになっていて、左に貴族科と騎士科があり、真ん中にホールと図書館、右に職員棟と魔術科がある。


正門は貴族科側、裏門は魔術科側にある。従魔小屋も裏門前にあるし、授業で使う森へも裏門から出入りする。


図書館へいくには、職員棟を通り過ぎないといけない。あまり気がすすまないけど、仕方ない。


図書館に入り、物語に出てきた宰相の長男がよく過ごす机から見えない場所を探す。従魔関係の本を探し、本棚を挟んで反対側のテーブルに座る。


時間を忘れて本を読みふけっていると、騒がしい声がする。ヒロインだ。ちゃんと攻略してるのね。


『ここは、図書館だ。静かに出来ないなら出ていってくれ。』


え〜、攻略出来てないじゃん。

攻略出来てれば、ヒロインがわからないところを宰相の長男が優しく教えて、ご褒美に頭ナデナデでしょう。追い出されるなんて、攻略もしてないのにいきなり突撃したの??


あ、宰相の長男、怒ってでていってしまった。


『なんで、うまく行かないの?頭ナデナデのはずでしょう。どの攻略対象も全然うまくいかないし、やっぱり入学式に案内されなかったのがダメだったの?あれから、王子に近づけないし、悪役令嬢はあんな無表情だったかなぁ。攻略対象以外あんまり覚えてないだよね。物語の世界のヒロインに転生して、不遇な幼少期なんて送りたくなかったから、色々攻略して、ヒロインを助けてくれるお人好し男爵様に早めに会いにいったのに。ヒロインなんだし、私の思い通りになって当然でしょう。』


それだよ、それ。だから、物語にない私の虐待なんてあったんじゃないの〜?


『ムシャクシャするから、あの生徒会役員のモブに何か奢らせよう。』


ヒロイン…物語はどうするんだ。

他の攻略対象を調べる必要がなくなったね…


ヒロインが出ていき、図書館が静けさを取戻したころ、宰相の長男が戻ってきた。


どこかで隠れて聞いていたのか。


『あれは、なんだ。殿下が調べるように言われていたが、理解できない生き物だ。』


呆然と呟いて図書館からでていった。

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