第27話 物語が始まる
リトラーゼ公爵家に戻って2年。
お父様は、相変わらず忙しいが、週に数日は一緒にご飯を食べれるようにしてくれている。
キッドがアウロの森での依頼があるときは一緒にでかけたり、商業ギルドにシャスの糸を卸したり約束通り自由にさせてもらっている。商業ギルドからは、本当の名前で登録するように言われた。屋号をフィリアにして、表向きはフィリアで活動する。
正式に婚約者になったので、キッド、フィーと呼ぶようになった。婚約のときに知ったけど、キッドとは8歳差だった。キッドは、冒険者活動をしながら、公爵家の勉強をしてくれている。
屋敷で1人ぼっちを拗らせて、婚約者の王子に執着したワガママ放題の悪役令嬢はいない。
『フィー、迎えに来たよ。制服、よく似合っているね。』
「ありがとう。」
魔術科なので、制服の上からマントを羽織る。もちろん、シャスの糸で作った付与魔法付だ。
『では、行こうか。』
キッドのエスコートで馬車にのる。学園までは、20分くらいで着く。
馬車が学園へ近づく。
そういえば、日本では高校の卒業式帰り道、桜の木の下の神社での記憶が最後だ。頑張って受かった第1志望の大学には通えなかったなぁ。
『緊張してるの?』
「知っている人いないし、キッドに毎日会えなくなる。」
『魔術科は、毎日学園へ行かなくても大丈夫だし、研究の為や訓練での外出も認められているから、アウロの森へ帰ることもできるよ。』
馬車からエスコートしてもらい、入学式の会場へ向かう途中、遠目に人だかりが見える。
今日、王子とヒロインが出会い、物語が始まる。
悪役令嬢はいない物語で、王子とヒロインは勝手にハッピーエンドになればいい。
「キッド。なんだか人だかりが出来ているし、違う道から会場へいくことできる?」
『ああ、出来る。こっちだ。』
巻き込まれないように会場へ入ろう。
王子は、ヒロインを悪役令嬢が座る席へ案内するはず。うん、王子、性格悪い。
そこに案内しちゃダメだろう。
フィリスティアの代わりの婚約者は宰相の娘、カリーナ・ロンバル候爵令嬢。
魔術科は、貴族科と離れた後方。ここなら巻き込まれない。キッドは、案内してくれた後保護者席へ。お父様も来ている。間に合ったのね。忙しければ、キッドがいるからいいよって言ったら、絶対来るとキッドに宣言していた。なぜ、キッドに…
あれから、お父様は時々子供のように拗ねる。大体は、私がお父様ではなくキッドを頼ったとき。
物語のお金だけ与えて、フィリスティアと向き合うことをしなかったお父様はいない。
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