第19話 商人街と守れなかったリトラーゼ公爵使用人

出来たら連絡をもらうことにして、昨日来れなかった商人街に来た。

マップを展開して、青の店にフラフラ入っては買い物する。

大量買いは目立つので少しずつにする。商人街には時々来る予定だし、無理して買わなくてもいい。


お腹空いたし、そろそろ冒険者ギルドにもどろうとしたとき、視線を感じた。マップを展開。数点、赤があるけど視線とは反対側だ。


自由に動きすぎただろうか?フードを深く被りなおして、冒険者ギルドへ急ごう。



(リトラーゼ公爵元使用人)


数年前まで、リトラーゼ公爵の別荘で庭師をしていた。奥様が亡くなり、旦那様が王都へ行かれた後、後妻を名乗る女と子供がやってきた。旦那様はとても奥様を大事にしていたし、後妻が連れてきた子供は旦那様には全く似ていない。家令が、公爵家を証明するものを持っていると、別荘へ引き入れた。


酷い奴らだった。1人娘のフリィスティアお嬢様を小屋へ入れ、お嬢様を守ろうとしたマーサさんは地下牢へ入れられた。


小屋は鍵をかけられ、お嬢様は閉じ込められた。

正面からお嬢様を救うことは出来ないので、小屋の裏に細工することにした。

お嬢様がいつでも逃げだせるように。

小屋の近くに畑を作り、すぐに収穫できるものを植えた。


なんとかお嬢様を助けたかったが、使用人はほとんど入れ替えられてしまった。


お嬢様は細工に気がついたようで、時々収穫したものを持っていくようになった。


あの日も遠くからお嬢様を眺めていた。森で摘んだ果物を持っていってくれた。次は何を届けようと思案していたら、あの女の子供の前に出てしまった。

汚いと何人かの使用人に折檻され、別荘を追い出された。

なんとかお嬢様を助けたかったが、怪我で動けない。誰が敵なのかわからない。怪我が治ったら、森から別荘へ入ろう。見つからないように。


怪我が大分治りかけ、お嬢様のところへ忍び込む準備をしていたら、公爵様が帰ってきた。

あいつら、やっぱり偽物だった。公爵様が屋敷に来てすぐ逮捕された。

ただ、お嬢様が見つからないらしい。数ヶ月動けない間のお嬢様が心配だった。

よかった。逃げだせれたんだ。どこへ行ったのかわからないけど、あの小屋よりはいいはずだ。


お嬢様の行方を探す公爵家の騎士たちがやってきて、公爵様のところへ連れていかれた。お嬢様を救えなかったんだ。罰せられてもしかたない。


聞かれたことにすべて答えた。お嬢様をどこへ連れて行ったと聞かれたが、小屋に細工すること、畑を作ることしか出来なくて、後妻の娘の前にでてしまい、折檻をされ、怪我をして動けなくなったのでお嬢様の行方はわからないと答えた。


すぐには信用してもらえず数ヶ月監視がついたが、解放された。


あれから数年が経ち、隣のシャーナへ仕入れに行ったとき覚えのある緑の瞳を見た。お嬢様が大きくなればあのくらいだろう。ふと振り向いた。


お嬢様だ。あのお顔はお嬢様だ。


警戒しながら、雑踏のなかへ紛れて行った。


急いで、帰ろう。公爵様へ伝えなくては。

もう、危険はない。お嬢様を公爵様は探している。

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