第7話 ~偶然~

彼がうちに来て4ヶ月ほど経ったある日のことだった。


また、彼が1枚の付箋紙を拾ってきてくれた。

そこには、

「あなたの写真がほしい」

と書いてあった。


「あぁ、そういえば渡してなかったよな」

「ごめんな」


と、彼につぶやいた。


「そうだ」といって、僕の顔写真のついた名刺を彼に乗せ、


「これ、届けてきてくれよ」


と、冗談交じりで「自動」のボタンを押す。

すると、彼はベッドの下の方に向かって動き出した。


「なんだ、いきなりそこから掃除しなくても」


彼がベッドの下へ深くもぐっていくと、音が徐々に小さくなり、一瞬音が消えたように思えた後、また、音が徐々に大きくなって、電源台に向かって戻って来た。


「え?」


一瞬目を疑った。


「まさかぁ~」


そこには、僕の名刺の代わりに、妻の元気なころの写真が載っていた。


ベッドの下を覗いてみても、僕の名刺は落ちていなかった。


「なにかの偶然」

「そう、偶然だよね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る