第8話 番外編


(探りを入れる為にある男をつける)

(賭場から出てくる男に声をかけるねずみ小僧)


ちょいと、お兄さん♪

お前さん、やけに羽振りがいいんだねぇ

あんなに負けたのに、平気な顔してるじゃないか


私かい?

私は、ただの遊び好きな女だよ

よかったら、覚えといておくれ

お互い遊びが好きなら、またどっかで、会うかもしれないからね


そんな事よりさ

今日は、お前さんに折り入って話があるんだよ。

私はもう、さっきのでスッテンテンになっちまったんだよ。

それでさ、ものは相談なんだけど

お前さん、私にちょっと、都合をつけてくれないかい?


勿論、ただとは言わないよ


(男が了承する)


フフフ

そうかい?

話の分かる男は嫌いじゃないよ。


じゃぁさ、ここで話すってのもなんだから

ちょっとお酒でも奢ってよ

素面(しらふ)で、出来る話でもないしさ

ねぇ、いいだろ♪


あそこの店の、二階なんてどうだい?

勿論、二人っきりでさ♪


(男が色っぽい事を期待する事をいう)


え?

フフフ、もう

そんな事いって・・・

野暮な事は聞きっこなしだよ


(飯屋の二階に上がり、酒を飲む二人)


はい、どうぞ


(酌をするねずみ小僧)


フフフ、

それにしても、お前さん、やけに羽振りがいいじゃないか

うらやましいねぇ・・・


もしかして

どこかに、金づるでもいるのかい?


(手がとまる男)


何を疑ってるのさ、

嫌だねぇ、そんなんじゃないよ

もし、いい話なら、

私も、それに一枚かませて欲しいのさ


私って、こんなんだろ?

だからさ、お金が欲しくてね

ねぇ、ダメかい?


でも、もし、それがダメならさ、

私をお前さんの女にしておくれよ

それならいいだろ?

ね?


私はね、悪い男は嫌いじゃないんだよ

お金を持ってる人が好きなのさ

それにお前さん、男前だしね。 フフフ


・・・でもさぁ

女になるんなら、秘密は嫌だよ


だって、不安になるじゃないか

惚れた男が何をしてるかってさ


え?

あたしが、お前さんに惚れてるのかって?


フフフ

んもう♪

そ・れ・は、

お前さん次第じゃないかぁ


だから、私には、何もかも隠さず教えておくれよ

でなきゃ・・・あたし・・・

ね♪

フフフ


(事情を話す男)


へー、そうかい

そんな事がねぇ・・・


それでお前さんは、そんなに羽振りがよかったのかい

面白いねぇ


(男がねずみ小僧に触ってくる)


あん・・

フフフ

せっかちだね。

そんなに焦らないでおくれよ


お・・・

お酒だって・・まだ・・・残ってるじゃないか・・・あん


(男が迫る)


え?

今、ここでかい?


フフフ、もう♪

お前さんも好きだねぇ


勿論いいさ

もうあたしは、お前さんの「もの」だからね♪


フフフ


あ、でも、やっぱり

ここじゃ、恥ずかしいから

あたしが先に、隣の部屋に行って支度をするからさ

お前さんは、ちょっとここで待ってておくれよ


十(とう)数えたら、入って来ておくれ

もう♪

そ・れ・は

その時になってのお楽しみだよ♪

フフフ


(隣の部屋へ向かう女)

(男の方を向いて扉を閉める)


じゃぁね♪


(十数えて、男が部屋に入ると女の姿はない)



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女ねずみ小僧次郎吉(合冊) Danzig @Danzig999

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