第7話


(仕事を終えた帰り道、ねずみが何かを見つける)


すまない、ちょっと先に行っててくれないかい

なぁに、大丈夫さ

ちょいと野暮用を思い出してね

いや、あたし一人にしておくれ


(何かを探している人影に忍び寄るねずみ)


そこのお兄さん

探しているのはあたしかい?

あたしに何か用があるのかい

それとも、自分が盗まれた金子でも取り戻しに来たのかい


どうした、男ならはっきり言ってみたらどうなのさ

ほぉう、あたしの声に聞き覚えがあるのかい

昔の女?

あんたのかい?


へぇ、知らないねそんな女

まぁ、どこの誰かは知らないが、あんたみたいなろくでなしが惚れたような女だ

どうせろくな生き方はしていないだろうさ

それに、あんたみたいな悪党がどの面下げて女に会いに行けるっていうんだい


情けない顔だねぇ

今のあんたのその顔、昔の女とやらが見たらなんて思うんだろうね

まぁ、あたしには関係のない話だけどね

ははははは、

恨むんなら、あたしじゃなくて、惚れた女に顔向け出来ないような生き方をしている、

あんた自身を恨みな

まぁこれに懲りたら、悪党からはさっさと足を洗って、

惚れた女を幸せにしてやれるような、真っ当な人生を歩むんだね。


(立ち去ろうとするねずみ、立ち止まり)


あぁ、そうだ

お兄さんに一つ教えといてやるよ

女ってのはね、

ぎゅっと手を握ってなきゃダメなのさ

一度手を放しちまったら、もう二度ど戻っては来ないんだよ

きっとその女も、もうあんたの事なんて忘れてるだろうさ

あんたも、忘れてやる事だね


じゃぁな



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