第4話 お城内での惨殺事件

「おわる君、ごめん・・・・。


君の気持ちに気づけなくて・・・・」


 私は、おわる君を前から抱きしめた。

 小さい頃はこうやってハグをしたことがあるけれど、いつの間にかなくなってしまっていた。


「おわる君は、小さい時と同じようにしてほしかったっていうことでいいのかしら・・・?」


 それが、正解かはわからない。

 おわる君の気持ちに寄り添うことだけが、私にできる精一杯だった。


「そんなことしても、過去はなくならない」


「だけどね、引き取られてからのことも、全部本当のことだったと思うわ。


おわる君は私を愛して、私とおわる君の血のつながらないパパとママも愛してきた。


これも、ぜーんぶ嘘なんかじゃなかった」


「これじゃあ、何も変わらない。


おわりちゃんを独り占めして、実の両親に復讐をするって誓ったはずなんだが・・・・。


小さい時には、戻れないって話をしてたはずなのに・・・・」


「おわる君と、私は小さい時から一緒だったの。


戻ることも、変えることもない。


学校に行けば、いろーんなことがあるけども、私はおわる君を愛してるわ」


 おわる君は、涙を流していた。


「僕は、取り返しのつかないことをしてしまった。


愛する両親も、手にかけてしまった。


ここに残るものは、何もない。


なら、一緒に死んでほしい・・・・」


 私は慌てて、おわる君から逃げた。

 運動神経は私の方がいいから、走れば、お城の外に出られる・・・・!


 だけど、後ろからさされて私は意識を失った。


「この時に終わりがむかえるまで愛してる」


 最後に、その言葉だけが聞こえた。



「ニュースです。


大きな建物に、佐藤おわりさん、中学1年生の12歳と、佐藤おわる君中学3年生の15歳が死体で発見されました」


 突然、テレビが消された。


「あーあ、佐藤のやつ、やっちゃたね。


あいつは狂っているから、冷静になれなかったんだろうねえ。


完全に終わってる・・・・」


 僕は、田中たなかこおり。

 ここは、従兄である田中たなかこおるの家。


「この負の連鎖は、止められない。


佐藤、鈴木すずき高橋たかはし田中たなかである僕も常に狂っている。


人が死ぬなんて、当たり前」


「こおる、私はトイレに行きたいの」


 僕は閉じ込められていて、部屋の鍵はこおるが持っている。

 適当な嘘でも言って、出させてもらえれば、逃げられる。


「君も、佐藤おわりのようになりたいのか・・・?」


 僕は、ここで黙り込んだ。


「ごめん、震えているね。


俺は怒らない、怒らない。


いい子にしてればね」


 こおるは僕の頭を撫でた。


「こおる、どうして急にそんなことをするようになったの?


幽閉なんて、何を考えているの?」


「ヒントを教えてあげるよ。


この時に終わりがむかえるまで愛してる」


「何もわからない・・・・」


 こおるのことが、僕には全然理解できなかった。

 

「わかりっこないだろうね。


君は正常で、俺は狂っているから。


普通の生活はすでに終わっているから」


 やだ。

 こんなの信じられない。


「児童養護施設は、崩壊してしまったし、残されたのは誰かの住んでいた家。


エイプリルフールの日に、どうかしちゃった家」


「こおるの家とかじゃなくて?」


「あははは、軽はずみな発言はしない方がいいよ?


四大ヤンデレ王は、存在するから」


 

 四大ヤンデレ王がいて、それが今目の前にいるこおる、ニュースで報道された佐藤おわる、会ったっことのない鈴木、高橋らしい。


 それも、原因が教祖様のせい。

 この宗教をやっていて、心を病んで、精神病棟に入院してしまった人も少なくないのに、なぜか信じる人がいる。


 ヤンデレ四大王は、この教祖が言う選ばれた祝福者らしい。


「君も、この素晴らしさがわかるために、この本を読もう」


 僕の返事は即答だった。

 

「いらない!」


「この教えには、素晴らしいことが書かれている。


ヤンデレ四大王は、それがあったから救われた。


姉は女神の生まれ変わり。


妹は、天使の生まれ変わり。


年下の女の子の方の従妹や年上の女の子の方の従姉は、悪魔の生まれ変わり」


「僕が悪魔なんて、そんなこと!」


 でたらめだ・・・・。

 そんな根拠、どこにもない。


「呪文を唱えようとしてない?」


「唱えていない。


というか、そんな呪文知らない」


「佐藤おわりが殺されたのは、悪魔祓いのためなんだ。


佐藤おわるは、天使の生まれ変わりも、女神の生まれ変わりも、虐待する両親によって滅せられた。


俺は最初から、女神も天使もないけどね」


「こんな話を信じるなんて、どうかしてる」


 僕は、正論を言ったつもりだった。


「君は、この教えに耳を傾ける気がないのか?」


「ない」


「ということは、本当に悪魔の生まれ変わりかもしれないな」


「宗教の教えを信じようと別に自由だけどさ、僕を巻き込まないでほしいな」


 ここで、僕はこおるに顎をつかまれた。


「君の唇は、浄化してもらう必要があるかもな」


 そう言い、こおるは僕にキスをした。

 ディープとかじゃないから、舌を噛むとかはできない。

 しばらくしてから、こおるが唇を離した。


 僕は、顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかった。


「浄化されたかな?」


「浄化って、何なの?」


「これも、宗教の教えだけど、信じないんじゃないの?」


 今度は恥ずかしさとかじゃなくて、怒りで顔が赤くなった。


「浄化されたってことにしたげる!」

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この時に終わりがむかえるまで愛してる 野うさぎ @kadoyomihon

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