第3話 狂った従兄と平常な従妹

 現実世界の私は、身長150、0センチ中学1年生の12歳。

 好きなものは、ピンクのリボン。

 白い肌に、こげ茶色の髪に、茶色の瞳。

 白いワイシャツの上に、茶色の長袖のセーターを着ていて、白と赤のボーダーのネクタイ、白のデニムキュロットをはいている。


 おわる君は、私より2歳ぐらい年上の中学3年生の15歳。

 身長は私よりも15センチも高い。

 白のワイシャツに、ベージュの長袖のセーターを羽織っていて、黄色と青のボーダーネクタイをしていている。


 小さい頃からの腐れ縁だったはずだけど、どうしたらこうなったのかはわからないけれど、おわる君に異性として意識をされている。


「おわる君、どうして私を閉じ込めたの?


そして、なぜ私を好きになったの?」


「どうしてだろう?


僕は中学校に入学してから、急に異性に告白されまくる君に嫉妬を覚えていた」


 私とおわる君は、同じ学校だ。

 確かに、小学校まではそんなんでもなかったけれど、中学になってから急に異性として、男子かの人気を集めて、告白されることが何回も続いた。


 私は普通に友達として接しているだけだけども、向こうはなぜか恋愛として意識してしまうという。


「私は、そんな色目を向けているつもりはなかった。


ただ、友達だと思っていた。


小学校までは、男友達がいても、普通に友達でいてくれても、中学校に入ってから、男子達が変わってしまったの」


 そんなことを発言しても、おわる君は納得なんてしてくれない。

 だけど、私は事実を伝えなくてはならない気がした。

 どんな嘘をついても、火に油を注ぐだけだから・・・。


「それが嫌なんだよ・・・・。


日に日に、女になっていく君が、男子がおわりちゃんに向ける視線が、成長とともに変わっていった。


昔と同じようになんて、なれない。


おわりちゃんは僕のそばから離れないなんて、ことはない。


友達を優先するようになり、しまいには、彼氏を作ってそれに夢中になる。


おわりちゃん、僕は君のことが頭から離れないんだ。


同い年とかじゃないから、ずっと一緒にいらないし、部活もクラブも、それぞれにやりたいことだってできてしまった」


 中学に入ってから、勉強のサポートのために塾に通い始めた。

 部活も、クラブも、委員会もある。

 そして、私とおわる君は同じことができるわけじゃないし、塾が同じでも苦手教科が別々だった。

 だから、塾で教えてもらう科目が違うから、一緒になんてなれない。


「君も国語が苦手なら、一緒にいられるのにって思ってしまったんだ」


 だから、あの仮想世界の私は、国語が苦手だったのか。

 確かに、おわる君は塾で国語を教えてもらっているけれど、私は別の教科の学習をしていた。


「君が元気な体とかじゃなくて、病弱になってしまえば、僕のものにできたかもしれない」


 あの原因不明で、何の病を持っているのかわからない状態は、おわる君が望んでいたけれど、何の持病かまで設定されていなかったのかもしれない。

 話を聞いて、そう予測した。


「車椅子にでもなって、自分の足で歩けなくなれば、どこにも行かないって・・・・」


 おわる君は病んでいる。

 違う両親で育てられたかもしれないけれど、おわる君の義理の両親もそんな狂った人ではなかったような気がする。


「おわる君、何が君をそうさせたの?」


「何がなんだろうね。


君は、幸せな記憶しかないから正気を保ってられるのかもね。


赤ちゃんポストに入れられて、義理の両親に大切に育てられたことしか憶えていないからな!」


「一体、どういうこと?」


「親から虐待されたことなんて、記憶にもないとか幸せだよな」


「虐待なんて・・・・」


 記憶をたどってみても、虐待された記憶なんてどこにもない。

 私が最後まで言い終える前に、おわる君が語り出した。


「2歳の頃に、赤ちゃんポストに入れられて、愛情を注がれたからね」


「生まれてすぐじゃないの?」


 それを質問したとたん、なぜかおわる君が高らかに笑い出した。


「あははは、僕だけが真実を知っている!


嘘だらけの世界で、平凡に過ごしていたわけじゃないんだ!」


 正直に言うと、2歳の頃の記憶なんてない。

 赤ちゃんポストの職員に聞かされた話しか、知らない。


「里親が決まって、君と同じ幼稚園に通えることになった時は、すっごく、すっごく嬉しかったよ!


だけど、クラスが違ったな。


3歳の時に幼稚園に入園した時には、僕は転園って扱いで、どれだけ苦労したか!」


 だめだ・・・・・。

 冷静に会話ができない。


 おわる君は、完全に壊れきっている。


「僕には、本当の家族はいない!


親戚には、君がいる!


僕の両親は、虐待で自分の子を殺害した!


おわりちゃんの両親だって、そうだ!


同じことをしていた!


そして、僕とおわりちゃんを赤ちゃんポストに入れて、逃走したんだ!」


 話がよくわからない。

 どれも、身に覚えのない話だった。


「僕をこんなふうに変えてしまったのは、記憶を保てる幼児期まで、赤ちゃんポストに入れずに、虐待し続けた血だけつながった両親なんだよ!」

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