第2話 この時に終わりがむかえるまで愛してる

 この世界が、何なのかってどういうことなんだろう?

 私なりに考えてみた。

 

「仮想世界?


幻想世界?


夢の世界?」


 思いつく限りのことを発言してみたけれど、どれも確信のないことばかりだ。


「さあ、どっちだろうね。


ここが、どんな形で再現されようと、僕は君と一緒の空間にいれればいい」


 ということは、どちらにしても現実世界ではないってことになるよね?

 この様子だと、本当のことなんて教えてくれなさそうだった。


「おわる君、どうして私をこの世界に閉じ込めたの?」


「そんなことは、簡単だ。


君といつまでも、いたいけれど、こうしておかないと、逃げられるから」


 この場合は、なんて答えることが正解なんだろう?

 出るはずのない答えだけど、私なりにやってみよう。


「私は、おわる君が理解できない。


私と君は従兄妹だわよね?」


「ただの従妹なんて、思ったことはない。


異性として、意識していた。


だけど、君は何ひとつとしてわかってくれなかった」


 だめだ、おわる君に歩み寄ろうなんて、私には無理なのかもしれない。

 とにかく、ここから抜け出すことだけに専念しよう。

 それが近道かもしれない。


「おわる君は、いつから私を異性として意識していたの?」


「さあな。


気がつけばそうだった」


「私は、おわる君をそんな対象として見れないかも。


兄妹とか、そんな感覚だから」


「それでも、わかってほしいんだ。


わかれないのか?」


 ここは、返事だけしておけばいいのか?

 正直に、自分の気持ちを伝えた方がいいのか?

 どちらにしても、私はおわる君の気持ちを変えることはできない。


 私はおわる君を異性ではなく、兄妹と近い感覚だった。

 そして、ただの腐れ縁なんだ。


「お願い。


おわる君、私は帰らないと。


どんな気持ちであっても、私はおわる君とそんな関係になれない。


家族も、学校の先生も友達も心配するから、現実世界に向かわないと」


「僕の許可もなく?」


「どうゆうこと?」


「この世界は、僕によって創られている。


ということは、どういうことかわかっている?」


 おわる君が元凶なのかもしれないけど、いつまでもこの空間にいるわけにはいかない。

 だけど、私は半ば、脱出を諦めているところがあった。


 おわる君は、諦めてくれない。

 ここは、受け入れたふりをしよう。


「私は、ここから簡単に出させてもらえないということかしら?」


「そういうこと」


「私にできることなんて、全て尽くしたわ。


この世界で、病人もやったし、介護だってしてもらった。


これで、満足しないの?」


「しない」


「私は、おわる君を好きにならないと出られないの?」


「出させるつもりはないけれど、好きになってほしい」


「おわる君、君は強引すぎるわ。


私はどうすればいいのよ?」


「愛してることを、必死に伝えればいい」


「これじゃあ、おままごとじゃない?」


 それは、小さい子供が好きでもない相手に、プロポーズしているようなものだ。


「同じにしないでくれ。


俺は本気なんだ。


何度、言えばいい?」


 おわる君・・・・・。

 私は、愛を伝えてみよう。

 

 男心とかわからないし、私は恋愛とか得意じゃない。


「この時に、終わりがむかえるまで愛してる」


 この一言で、世界は崩壊した。

 

 建物が崩れて、私は思わず、しゃがみ込み、頭を守る体勢をとった。

 そして、おわる君は私に背後から抱きついた。


 私は、ここで目覚めた。

 気がつけば、いつものベッドの上。

 もしかしたら、現実世界に帰ってこれたのかもしれない。


 だけど、近くにおわる君がいた。

 おわる君は、ため息をついてから話し始めた。


「はあ、君はいつも想定外のことをするね」


 私は、おわる君の呪縛からは逃げられない。

 どうしてそう思ったのかは説明できないけれど、なんとなくそんな気がしたんだ。


「おわる君、ここは現実ってことでいいのかしら?」


「そうだ。


ここは、全てが僕の思い通りにならない現実だ」


「おわる君は、私をこれから、どうするつもり?」


 不安でしかない。

 

「君とずっと、ここで過ごすのさ。


このお城で」


 少しずつだけど、記憶が戻ってきた。

 

 私は両親を、この人に奪われたということを。

 そして、おわる君は自分の両親でさえも、手にかかてしまった。


 本当なら警察に捕まってもいいくらいのことをしたけれど、それをさせてもらえなかった。


 私はここに幽閉されて、連絡もたたれている。

 学校に行くこともできないし、現実の私は風邪をひこうが、重い病気にかかったとしても、病院になんて行かせてもらえない。


 仮想世界にいた方が、何もかも忘れて幸せだったかもしれない。

 だけど、今こうして向き合いたくない現実にいる。


「おわる君は、私の両親を手にかけて罪悪感とかないの?」


「養子じゃないか?」


 私とおわる君は生まれてすぐに、赤ちゃんポストに入れられて、養子として引き取られた。

 手紙の情報により、私とおわる君は従兄妹ということが判明している。


 だけど、いくら血のつながらない両親だとしても、私からしてみれば本当の家族だった。


「養子だし、本当の両親じゃないってわかってる。


だけど、大切な存在だったのよ」


「僕は、恵まれた環境じゃなかったけれどね。


何より残念なのは、君と一緒にいられないことかな?


今となっては、裏切らない存在は君だけなんだ」

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