番外編 ベッドの上の花嫁〜グルーム編〜

 僕の名前は、グルーム。

 小学5年生だ。


 僕には、従姉がいる。

 長い青髪で、巨乳で、無名だけど、赤いビキニを着ることが多いグラビアアイドルをやっていて、僕はそのことを学校のクラスメイトには内緒にしていたけれど、ファンだった。


 従妹は、10代とは思わないくらい精神的に落ち着いていた、僕の初恋の人だった。

 そんな僕の将来の夢は、従姉であるブライドと結婚することだった。


 ブライドは、いつも僕のことを気にかけてくれていた。


「グルーム君、どうしたの?


そんなに落ち込んで」


「落ち込んでないってば」


「わかりやすい嘘をつくのね。


顔に、落ち込んでますって書いてあるわよ」


「もうっ、どうしてブライドは、こんなことわかるの?」


 従姉ではあるものの、僕にとっては本当のお姉さんだった。


「子供の嘘なんて、簡単にわかるのよ」


「僕、もう10歳だよ?


もうすぐで、11になるし」


「それをまだ、子供と言うんじゃいかしら?」


「ブライドの馬鹿。


知らないっ」


 何に悔しいかわからなかったけれど、僕はとにかく悔しかった。


「グルーム君は、まだ子供ね」


 ブライドは、なぜか微笑んでいた。


「子供じゃないって、何回言えばわかるんだ!」


 だけど、精神的にもブライドには追いつけなかった。


 家に帰れば、両親はいつも喧嘩をしていて、離婚話もでているくらいだった。

 どうして、喧嘩ばかりなんだろう?

 内容は最初のうちは真剣に聞いてしまっていたけれど、今は自分が辛くなるだけなので、なるべく聞かないようにした。


 ブライドとは家が隣同士ということもあって、よく遊びにきていた。


 ブライドの部屋はなぜか、白い部屋で、あるのは白いベッドしかなかった。


「ブライド、どうして何もないの?」


「簡単な話よ。


あたしの趣味だからね」


「こんなものが趣味とか、ほんと変わってるよね」


「あら?


グルーム君も、変わっているわよ」


「どこが?」


「さあ、どこがなんでしょうか。


あたしは、適格には言わないわ。


だって、グルーム君を愛しているから」


「ふざけんな!


からかうのも、いい加減にしろ!」


 俺はつい、感情的になってしまったけれど、それでもブライドは微笑んでいた。


「あたし、穏やかで一途にあたしだけを見てくれる人が好みだわあ。


そんな人いないかしら?


グルーム君がそうなってくれたらいいのに」


「なるわけない。


ブライドは夢見がちだよなあ」


「夢じゃないわ。


いつ、監禁されてもいいようにあたしはベッドの下に監視カメラと盗聴器を持っているし」


「ここまでくると・・・異常・・・。


僕、正直に言うと引いたよ」


 まさか、こんな趣味があるなんて・・・。

 ブライドのことは、僕には理解できない。


「あたしのこと、理解できるようになる日が来るわ。


あたしの従弟だもの。


あたしは、グルーム君が好きよ」


「からかうな!」


「からかってない。


あたしは、いつでも本気よ。


あたしは、グルーム君の僕から俺に変わらないところも、あたしよりまだ幼いところも、大好きよ。


大好き、愛してる。


この先、ずっと、ずっとね」


 俺は一瞬、ブライドにドキッとしたけれど、すぐに振り払った。


「ふんだ!


どうせ、そんなこと言いながら、数年後には、僕もブライドも、それぞれ別の人と結ばれちゃうんだ!」


「そんなこと、させないわ」


 いつも穏やかに微笑んでいるブライドが、冷淡にゆっくりと呟いた。


「ブライド?」


「あたしは、恋愛サイコパスよ。


従弟ラブなの。


あたしは、グルーム君以外の人となんて、考えられない。


あたしは、いつでも、どこにいようと、たった一人だけの男を愛するわよ。


あたしだけの花婿様」


 僕は、顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。


「言ってろ!


僕は、絶対に相手にしないかんな!」


「かわいい。


だけど、もっと素直になってくれたらよかったのに。


あたしに愛の言葉を囁くようになったらなあ」


「ふんだ!」


 幸せだ。

 素直になれなくても、僕にはブライドがいてくれたらいい。

 好きって、言えたらどんなにいいか。

 だけど、それはまだ早いような気がしたんだ。


 ある時、僕の両親の離婚が決まった。


「これから離婚することになったわ」


「へ?」


「どっちについて行くか、決めるんだ」


「どっちも、やだ!


僕は、ブランドがいい!」


「わがまま言わないの。


離婚はすでに決まっていて、ブルームには二択択一しか残されてないの」


「こんなこと言うのも、おかしいと思うけど、ブライドと離れたくないんだ。


幼い頃から、ずっと近くにいるからかもしれない。


僕は、従姉であるブライドが好きなんだ!


今すぐは無理かもしれないけど、結婚したい。


させて、ほしい。


反対するなら、すればいい。


僕は押し切る積もり書きだから」


 両親はお互いに顔を見合わせて、答えた。


「ブライドのことは、これから、何があっても、どんなことがあっても守るのよ」


「離婚を誓った夫婦が言うことじゃないかもしれないが、妻となる女を最後まで守り抜くのが男だ。


その誠意があるか?」


「ある!


ないなら、最初から言わない!」


「ブライドのところに行ってこい。


守りたいものを、見つけられてよかったな。


父親として、光栄に思うぞ」


「はい!」


 僕は、ブライドのいるところに向かった。

 ブライド・・・。

 ブライド・・・。

 僕は、心の中でそう呟いた。


 今更かもしれないけど、今の僕にはふさわしくないかもしれないけど、両思いなら、告白しないと後で後悔するような気がした。


「ブライド・・・」


 僕は両親とではなく、ブライドと一緒に暮らしたい。


 扉を開けた瞬間、目を疑う光景があった。


 ブライドが血だらけで倒れていた。


「ブライド!」


 僕は、すぐに駆け付けた。


「ブライド!


ブライド!」


 どうしよう・・・!?

 どうしよう・・・!?


「グルーム君・・・」


「ブライド!


誰にやられたんだ?


今すぐ、復讐するから・・・」


「いいのよ」


「ブライド?」


「あたしは、これで終わりだから」


「やだ!


まだ、なんとかなる!


救急車も呼ぶから!


僕、いい子でいるから!


ブライドが本気で好きだから!


好きだから、死なないで?」


「こんな形で終わるのは、どうしてもいや?」


「いやだ。


いやに決まっている。


だけど、こんな結果を変えられるのか?」


「変えられるわ。


グルーム君が、そのことを信じていればね。


何だって、できるのよ」


 ブライドは、何がしたいのか僕にはわからない。

 わからないけど、


「どんなブライドでも、愛してるさ」

 

 あまり、深く考えてなかった。

 ただ、今の状況を変えることしか、目先のことしか、頭になかった。


「ありがとう。


グルーム君。


愛してる。


大好き。


あたしと、恋人になってね。


あたしのことを、いつまでも好きでいてね。


好きよ。


好き。


最後まで一緒にいてあげられなくて、ごめんなさい」

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