第08話:なんでライトノベルを下にみるの?①

 最初に謝っておきますが、私も最初はライトノベルを下に見ていました。ごめんなさい。今回は私の自戒の念を込めての話になります。


 私は若いころ本を結構読んでいたんですよね。といっても王道のファンタジー小説はあまり読まなかったかな? 池波正太郎先生の真田太平記を読んでみたり、ミステリーはシャーロックホームズばかり読んでいたし、特に好きだったのがO・ヘンリーですね。これは洋書を買って読んだくらい好きでした。あとは、私の人生を変えた一冊があるのですが、それは別の機会にお話をしますね。


 それで、私がエンタメ小説(その時はライトノベルとは言わなかった)を読んでたのは、まぁ、お決まりのロードス島戦記、アルスラーン戦記、銀河英雄伝説、女神転生、あとはマイナーどころとしては永遠のフィナーレみたいな本を読んでいました。


 ただですね、その当時のエンタメ小説って、一部の例外を除いて、そんな簡単な文章で書いていなかったし、文字の並びで遊んだり、何ページもかけて遊んだ描写を書いたりとかはしてなかったんですよね。なんというか、一般文芸の書き方を使ってエンタメ小説を書いていたという感じでした。


 でも、私が読んだ本の中で、永遠のフィナーレという本はちょっと今のラノベに近くて、読みやすくて、会話文が多かったですね。しかも百合小説だし、ファンタジーだし、我ながらよく読んだなと思います。でも、取り扱っているテーマはすごくよかったんですよ。ネタバレになってしまうので言わないですが、着眼点はすごく良くて感心したのを覚えています。ちなみに私がライトノベル界隈に来た時にこの手法を使ったんですが、まぁ、それは別の機会に。


 てことで、私の本に対する認識ってこんな感じでした。本は何かしら私の人生に教訓や学びをもたらしてくれるもの。その純度が高ければ高いほどいい本であるはずだって、ね。でも、この考え方って私だけの考え方じゃないみたいで、2018年の文化庁の調査によると、読書することの良いところの順位ってこんな感じなんです。


 1位:新しい知識や情報を得られること 61.0

 2位:豊かな言葉や表現を学べること 37.0

 3位:感性が豊かになること 36.5

 4位:想像力や空想力を養うこと 33.3

 5位:感動を味わえること 25.6

 6位:楽しく時間を過ごせること 23.5

 7位:内容を把握する力が付くこと 15.5

 8位:他の人と話題の共有ができること 12.9

 9位:趣味として誇れること 6.3

10位:流行に遅れずにいられること 5.5

11位:国語の成績が良くなること 4.5

12位:特にない 2.9

13位:分からない 0.8


 はい、はずかしいことに、私はこの上位2つだけが本を読むことのメリットだと考えていたんですね。だから、


 ・会話文が多い

 ・文体が軽い


 という小説である今のライトノベルを下に見ていたところがあるんですよね。だって「1位:新しい知識や情報を得られること」に対しては、文体が軽いとそれを織り込むのは難しいし、「2位:豊かな言葉や表現を学べること」に対しては、会話文主体では難しいですもの。てな感じでライトノベルは、その視点で言えば「ちょっとなぁ」と感じていたのは事実です。ごめんなさい。


 ただね、自分でライトノベルを少し書いてわかったのが、ライトノベルがフォーカスしている部分て、「6位:楽しく時間を過ごせること」、「10位:流行に遅れずにいられること」なんですよ。だから「難解」な言葉より、文体が軽い方が好まれるし、読みやすい会話文が好まれるんですよ。だから最近流行している物語構成「テンプレ」の小説が好まれるんですよ。


 結局ですね、読者さまの本に対する期待の「どの部分」に応えるかで、本の書き方が変わって「文芸」になるか「ライトノベル」になるかの差になるだけであって、そこに優劣なんてないんですよ。なんというか、日本茶に合うから「和菓子」があるように、紅茶やコーヒーに合うから「洋菓子」があるに過ぎないんですよ。「ライトノベル」と「文芸」の差なんて、そんなもんなんです。


 ただね、難しい本を読んでいれば自分がすごいと思っちゃう層は一定数いるのも事実なんですよね。ライトノベルは簡単な言葉で書いているから、それだけで馬鹿にする人いるんですよ。あれって不思議なんですよね。


 で、そういう人に聞いたことがあるんです。あなたはどういう本を読んでるんですかって。で、ある人の答えは、今、流行っている文芸小説ばかりあげていました。それも特定の作者ばかり(いや、これはこれで分かります。文芸小説の世界ってウィナー・テイクス・オールなので……)。で、その人はやたらライトノベルは表現が単純で馬鹿っぽいというんですよね。本の内容ではなく文体で馬鹿にするんですよね。


 で、私は性格が悪いのでこう尋ねたんです。あなたはドストエフスキーを読んだことがありますか? って。そしたら答えは「No」なんです。いやいや、そんなに難解な小説が好きでしたら、ドストエフスキーくらい読んでいて欲しんですよね。賭博者なんか中編だし、読もうと思えばすぐ読めるんだから。


 結局、私がこの件から思うのは、人と言うものは自分の属しているカテゴリー、つまり国とか、自分の好きなプロ野球チームとか、自分の読んでいる本の種類とかに愛着を持つんだと思います。そこで終わればいいんですが、自分が属していないものに対して排斥をする傾向もあるんです。これってどうなんですかね? 私は、それはもったいないと思うんですよ。


 たとえばですよ? ハンバーガー。あんなアメリカンな食べ物に和風の照り焼きソースをかけただけで、めちゃくちゃ美味しい「てりやきバーガー」ができるじゃないですか? それと同じですよ。自分の可能性を広げたいのなら、否定ではなく肯定から入るべきだと思うんですよね。間違っていますかね?

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