忘れ林檎
Air
第1話
「林檎を剥いてくれ。」
ある患者が、見舞いに来たなも知れぬ白髪の美少年にそういうと、起き上がり窓の方を見た。
「もう、今頃は冬ごろだろ。林檎がうまい季節だ。お前も剥いたら後で食べたら良い」
「はい、そうですね。旬な果物は美味しいですよ」
少年は答える。その回答はなんの当たり障りもないが、何処か悲しげな雰囲気を醸しだしている。少年は少し、躊躇いながらも、患者に問う。
「......覚えていますか。10年前の冬の事?」
「......さっぱりだ。」
「そうですよね。じゃあ、暇なので少しお話ししましょうか。」
「10年前、とあるお人好しは橋の下で名も知れぬ子供を拾った。その子供は、5歳にも満たなくて、弱くて、小さな子供でした。更に、冬と言う事もあり、凍えていました。そんな時、お人好しの大人がその子供を自身の家まで連れて行き、温かく迎えました。結局、その子供の親は見つかる事はなく、その大人はまるで親の様にその少年を育て、立派に育てました。以上です。」
「......童話の様な話だな。その大人と言うのは、きっと優しくて、愛情に飢えて、その子供が愛らしくて仕方なかったんだな。分かる、分かる。」
そして、少年はその言葉を聞いた途端に、自分の育て親のベッドの前で、泣き崩れました。
忘れ林檎 Air @yachirigi
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