第53話 これで終わりですから
だったら……私もその標的の1人なのだろう。
「私のお父さんは、もうこの世にいない。そしておそらく
その血が生きていることが許せなかったから。
「殺す相手が少なくなったのは幸いでした」こんな時でも、いつもの
自分で殺すか、勝手に死なれるか。
もしかしたら
だけれど私と
「さて……
「……なんとなく……」迫力に負けて、一歩後ずさってしまった。「もう、隠す必要がなくなったから……だよね」
「はい。だって、私の復讐はこれで終わりになりますから」
私を殺すから。最後の復讐対象をこの世から葬り去るから。
もうその後のことは、どうでもいい。警察に捕まろうがどうでもいいのだろう。
「なんで
「……ついてきてもらったら、止められるからね」
「……?」
私はカバンの中から、目的のものを取り出す。
家で手に持ったときより重く感じた。いつも料理のときは使っているはずなのに、まったく違うもののようだった。
「……」
だから包丁を持ってきた。
そう、思っていた。
「そうしようと、思ってたよ」
だけれど……
「それは、やめたよ」私は包丁を
「……」さすがの
「もちろん」子供じゃないんだから、死ぬことの意味くらいわかっている。「でも、いいよ。
それで
最初から相談してくれたら良かったのに。そうしてたら、協力してあげたのに。私の命くらい、喜んであげたのに。
復讐の手伝い。私の命を差し出して……それで終わり。
私の命で事件が終わるのなら、それでいいんだ。
「……そうですか……」
すでに
私だってもう覚悟はできている。心音は驚くくらい正常だ。
でも……
「最後に1つ、聞いてもいい?」
「なんですか?」
「
「……答えづらいことを聞きますね……」即答してくれたら良かったのに。「最初は……なんの感情もありませんでしたよ。ただ復讐対象に近づいただけ……本当にそれだけでした」
「……じゃあ、今は?」
「……友達だと、思っていますよ」
「そんなことないよ」
いつまでも友達だって約束した。だから
「では、さようなら
「いいの? 捕まっちゃうよ?」
「構いません。私の復讐は、これで終わりですから」
ずっと
こんな形だけれど……お礼ができてよかった。
そのまま……包丁が私に向かって振り下ろされた。
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