第52話 許せなかったからですよ
オンライン会議殺人事件。
まさか、こんなことになるなんて。
最悪の展開に最悪の結末。それがこのオンライン会議殺人事件の終着駅。
私は1度自宅に戻って必要なものをカバンに入れ込む。そして待ち合わせの場所……301号室に向かった。
そこはいつも講義を受けていた教室。そして……
大きくて広くて、生徒を多く集めるときは大抵301号室に集まることになる。そんな教室。
すでに講義時間を終えた教室には誰もいない。私は301号室の扉を開けて電気をつける。
教室の中を見回すが、呼び出した人物の姿は見えない。もしかして逃げられたかな、と思っていると、
「お待たせしました」聞き慣れた声が聞こえてきた。「
振り返ると、そこにはいつも通りの笑顔を携えた
こうして見ていると、彼女が犯人などとは思えない。2人の人間を殺した殺人鬼が、こうも穏やかに笑えるものだろうか。
「勉強会のお誘いですか?」とぼけているのか、
「
「……そう、ですね」
「……いつも
オンライン授業にも対応できなかっただろう。落としている単位も多かっただろう。もしかしたら……悲観して大学をやめていた未来だってあるかもしれない。
そんな私を支えてくれた親友。
「その親友にしてあげられることがないかな、って考えたの」
「……なにもしてもらわなくても……」
「
「目的は復讐。20年前に自殺に追い込まれた
オンライン会議殺人事件と銘打たれた事件において殺された人たち。
「1人は
だけれど……
「でも……
それはおそらく
「それでも
しばらく私たちは無言で見つめ合った。
しばらくして、
「あの人たちの血がこの世に残っているのが、許せなかったからですよ」気温が少し下がった気がした。「
「……うん。詳しくは知らないけれど」
「詳しい説明は避けますよ。でも、私は生まれたときから親がいなかった。その理由を探し回っているうちに、母が数人の男に襲われて……そのまま自殺したという情報に行き着きました」
私たちよりも圧倒的に前に、
私は深呼吸をしてから、
「その人たちの子供であっても許すことができない。だから復讐した、ってことだよね?」
「はい」認めてほしくなかったな……「私の母を殺したやつの子供がのうのうと生きているのが、許せなかったんですよ。私はあんなにも、苦しんだのに」
……苦しんだ。
想像できるだけで、共感してあげられるわけじゃないけれど。
ともあれ、私は続ける。
「復讐の相手は、3人いたんだよね」まだ
少し考えれば、わかることだった。
……
そして……
「私、だよね」
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