第51話 今まで、ありがとうございました
チャットを送信しようとしてスマホを取り出した瞬間、スマホが振動し始めた。
私はスマホを耳に当てて、
「はい」
『今どこにいる?』
……ちょっと焦ってる声に聞こえた。
「調査中、ですけど……現在地は、えーっと……」
私は近くの電柱を見て、このあたりの住所を伝える。
すると、
『そうか。重大な情報を仕入れたから共有したい。今からそっちに行くから、待っていてくれ』
「え……あ、はい」重大な情報ってなんだろう……「……電話越しじゃダメなんですか?」
『少々不都合だ』他の人に聞かれたくない話題なのだろうか。『それから、1つ聞きたいことがある』
「なんでしょう」
『
……
授業態度……?
「……なんで今さらそんなこと……」
『考えてみれば、僕は
「……できれば他の人に聞いてほしいんですけど……ちょっと行かなきゃいけないところができたので」
『そこで待っていてくれ、と言っているだろう?』………………『まぁ世間話だとでも思って付き合ってくれ。移動時間の暇つぶしだよ』
私のところに来るまでの暇つぶし……
私も
「わかりました。
『ああ。評判が悪かったことだけは知っている』
「それがすべてだと思いますけど……」私も
教科書の画像を画面に映し出して、読み上げる。
それが
頭の良い人ならそれだけで理解できるのかもしれないが、私には無理だった。
『ふむ。他の特徴は?』
「そうですね……講義時間は無視することが多かったです」
『時間を超過していたということか?』
「超過というか……自分がやると決めた範囲をやったら終わる、って感じです。だから早く終わることもあれば、かなり長引くこともありました」
1から5の範囲をやると決めていたら、そこで終わり。授業の残り時間なんて関係ない。20分とかオーバーしていてもお構いなし。
チャイムが聞こえていなかったのではないか、とか疑うレベルのマイペースっぷりだった。
『……なるほどね……』
「どうかしたんですか?」
『最後の謎が解けた』最後の謎……? 『講義動画の謎だ。やはりあれは録画動画だったんだ』
「録画……どうやって、ですか?」
だから事前録画は不可能だと思っていたのに……
『その事も含めて、直接話そう。近くの喫茶店とかで待っていてくれ』
「わかりました」返事だけはそうしておこう。そして、「先輩」
『なんだ?』
「今まで、ありがとうございました」お礼だけ言っておこう。プレゼントが渡せないのは残念だ。「私のわがままに付き合ってもらっちゃって……本当にありがとうございました。おかげで……決着がつきそうです」
『……』
やはり先輩は私の変化に気づいているようだ。
ならばなおのこと、従う訳にはいかない。
「では先輩。少し準備があるので……今までお世話になりました」
『待て。まだ――』
申し訳ないと思いつつ、私は通話を切る。間髪入れずに
そうして私は目的の人物にチャットを送信した。
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