第46話 キングオブノット
警察官を図書館前に放っておいて、
私もそれに続いて図書館に足を踏み入れる。
暑い屋外から一気に冷房の効いた室内に入って、一瞬寒気がした。汗もかいていたので、ちょっと寒い。上着でも持ってくればよかった。
館内を歩きながら、
「もやい結びって、なんですか?」
「結び方の1つだよ。キングオブノットとも呼ばれるものだ。本来は船を陸につなぐための結び方だが、その強度と汎用性の高さから一般にも普及している」
ノットってなんだろう……と思っていると、
「ノットは結びという意味だ。数ある結びの中でも王様と呼ばれるほどの性能を持っている。高い強度を持っているが、解こうと思えば簡単に解ける」
そんな便利な結び方があるのか……どんな原理なのかは知らんが、とにかくすごそうだ。
しかし……
「そのもやい結びが、どうしたんですか?」
「
「そうなんですか?」
……全然気が付かなかった。あのときは
……そういえば余談だけれど……
私に気を使ってくれているんだろうな。
「2つの事件は同じもやい結びが使われていた。はっきり言って首吊りに適した結び方だとは思わないが……だからこそ、犯人のクセだったと考えることができる」
……だからこそ、同一犯である可能性が高い。
「クセ……」
親友だったのに……そんな事も知らなかった。
思えば私は
「出会ってすぐにオンライン授業になったようだからな。知らなくても無理はない」直接会うことは稀だった。「今回の感染症騒動でオンライン化は進んだが……一概に良いことだったとは言えないな」
「……悪いことのほうが、多いと思いますか?」
「僕は良いことのほうが多かったと思っているが、逆のことを思っている人もいるだろう」デメリットのほうが大きかったと考える人もいる。「実際にオンライン化の波についていけず苦労した人もいるだろう。同時に……オンラインによって大きな恩恵を受けた者もいる。僕のように」
……先輩はパソコンの類が得意そうだから、オンライン化にも対応できたのだろう。そしてむしろ、オンラインのほうが性に合っていたのかもしれない。
私は……どうだろう。そりゃ初期設定こそ苦労したけれど、気がつけば苦労なくオンラインに対応していた。だけれどそれは、親友2人に助けられたから実現できたことで……
もしも
……もしかしたら
そうなっていたかもしれない。この事件が起こっていなくても……私は
なんにせよオンライン化がもたらしたメリット、デメリットは計り知れない。でもそれが進化というものだと思う。
オンラインになったからこそ
……
そうだよな。今回の事件の中で唯一良いことがあったとするならば、それは
私は親友を1人失った。
そしてこれから……もう1人の親友を失うことになる。
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