第34話 眠くなってきた
少し救われた気分で
「やぁやぁ、僕とキミは他人だが、少し聞きたいことがあるんだが――」
やっぱり通行人に逃げられている
……でも、いろいろ考えて声をかけているのは伝わってくる。最初に学友とか言ってダメだったから、今度は素直に他人って言ってる。そういう問題じゃないと思うのだが、試行錯誤は伝わってきた。
というか
「こんにちは
「ああ」ちょっと疲れた様子の
「あ、ありがとうございます……」
「多少は出たよ。僕みたいな変人にも話を合わせてくれる狂人が、世の中にはいるからね」話を合わせてくれた人を狂人呼ばわりするなよ……「講義動画は見つからなかったが……いくつか面白い話が聞けたよ」
「面白い話?」
「ああ。
それらの事件を起こすには同日に大学の近くにいる必要がある。だから、その両日に大学にいる人は怪しい……
「……よくそんな情報がありましたね……」
「朝練をしていた部活がいくつかあってね。朝から現れる学生は大抵、顔なじみだそうだ。だからこそ、珍しく朝から現れた人間は記憶されているようだね」
じゃあ私も記憶されていたんだろうな。突然現れて謎の声かけを行って……怪しいったらありゃしない。
しかし2つの事件の同日に目撃されていた人がいたとしても……
「……そもそも、その2つの事件が同一犯だとは限らないのでは?」
それらの犯人が別なら、両日に観測されている必要はない。極端な話……
「それもそうだな……」
「え……?」
まだ真っ昼間だが……
「そろそろ昼寝の時間だ」
「時間って……いつも昼寝してるんですか?」
「ああ」本当に猫みたいな人だな。「今日は慣れないことをして疲れた。少し眠らせてもらう」
「は、はぁ……どうぞ」
……私は人前では眠れないタイプなのだけれど、
ともあれ、私1人でもやれることをやっておこう。
プログラミング演習の講義動画……それを探さないといけない。それくらいなら
……私も昼寝してみようかな……いや、やめておこう。どうせ神経が高ぶって眠れやしない。眠ったほうが効率が良いことはわかっているのだけれど、ついつい睡眠時間を削ってしまう。
だけれど……睡眠時間を削っている私とこうして昼寝している
やはり睡眠って重要なんだなぁ……私もこれからは意識して眠ろう。
そんなことを思いながら声かけを続ける。
そうして20分ほどが経過したときだった、
「ああ……事件の講義動画?」とある男子学生が言った。「ダウンロードしてると思うけど……」
……
聞いてみるもんだなぁ……まさか20分やそこらで見つかるとは……
まぁ……
あっさりと渡してくれたら、もっと良かったのだけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。