第24話 無理はするな
その日はほとんど眠れなかった。目をつぶると首を吊った
眠気が襲えば『お前のせいだ』と誰かの声が聞こえる。それは世間の声なのか
……
いや、さすがに夜中は迷惑だよな。この間、出会ったばかりだし……
結局その日の眠りは浅かった。それでも無理やり目を閉じて、眠って起きての繰り返しだった。
朝起きたときには大量の寝汗をかいていて気持ち悪かった。
ベトベトになったパジャマを脱ぎ捨てて、普段は浴びない朝のシャワーを浴びる。
シャキッとしない体と頭に冷水をぶっかけて、無理やり覚醒させる。ついでにくしゃみを1つして、お風呂場を出た。
昨日よりも食欲が無い気がする。ヘタに冷静になってしまって、
そんな言葉は朝のパンとともに飲み込んだ。
無造作にコーヒーを飲み干して、登校用の服に着替える。私はファッションセンスが皆無なので、友達に選んでもらった服を常に登校するときに着ている。
……そういえばこの服も
しかし泣いている場合じゃない。今は涙はお預けだ。
重要なのは真実だけ。どうして
決意を胸に、私は
【おはようございます。今日から捜査のご協力をお願いしたいです】
【おはよう】返事はすぐに返ってきた。【キミの体調は大丈夫か?】
【大丈夫です】本当は頭がいたいけれど。【先輩の都合がよろしければ、すぐにでも調査を始めたいです】
【わかった。では学校で落ち合おう】
というわけで大学へ。途中電車の中で倒れそうになったが、なんとかこらえた。
そうして学校の校門で待っている先輩を見つけた。なにやらカバンを背負っていた。
「忠告しておく」合流するなり、先輩は言う。「これから、キミにとって嫌な思い出がある場所に行く。気分が悪くなれば、すぐに申し出ること。わかったね?」
「……はい……」
ウソだ。気分が悪くなった程度では我慢するつもりだ。倒れる寸前になったら……さすがに申し出よう。
「じゃあ、行こうか」
そうして歩き出した先輩のあとについて、私も歩を進める。
到着したのは当然……
「301号室……」その建物を見るだけで呼吸が詰まる。「……立入禁止とか、じゃあないんですね……」
「ああ。ただでさえオンライン授業やらで授業日数がメチャクチャになっているからな。無理にでも講義を再開させないと、全員が単位を落とすという事態になりかねない。大学側も必死だろうね」
なるほど……殺人事件が起きたなら学校ごと封鎖されそうなものだと思っていたが、そんな理由で封鎖されていないようだ。大学側も大変なんだな。
「……」
「大丈夫です」顔色を戻したつもりだったけど、にらみつけるような顔になってしまった。「私も、行きます」
「そうか、無理はするな」
それだけ言って、先輩は301号室の扉を開けた。
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