第2話 本日の講義は終了です

 講義がストップして、5分ほどの時間が経過した。


 こういうとき、オンライン授業は不便だ。あたりを見回しても見慣れた自室が見えるだけだし、他の人の顔色をうかがうこともできない。


 まぁ、ちょっとした音声トラブルだろう。よくあることだ。すぐに復旧する。


 そう思って、さらに5分経過。


 ……


 さすがに長めの中断に思えた。


 なにか、あったんじゃないか。


 胸騒ぎがして、私はとあるグループにチャットを送る。無料の通話アプリで、数人でのチャットのやり取りができるツールだ。


 メンバーは私と、私の親友2人。


【なにかあったのかな?】


 チャットの相手も同じ講義を受けているはずだから、これだけで伝わるだろう。


 返事はすぐに来た。


【機材トラブルでしょうか】


 最初に返事をくれたのはかがみ恭子きょうこ。私の親友の1人で、小柄でかわいらしい女の子である。


【回線トラブルかも?】


 次の返信は草薙くさなぎ美築みつき。この人も私の親友の1人だ。背が高くてスラッとしていて、とにかく元気な女の子である。


 そんなやり取りの後、しばらく時間が経過する。


 なにも起きない。熱中症とかで倒れているのだろうか。だとしたら救急車とか呼んだほうが良いのだろうか。


 さらに10分が経過して、


『皆さん』誰かの声が聞こえた。『本日の講義は終了です。会議から退出してください』


 ……講義が終了? まだ講義時間内だけれど……


 やはり、なにかがあったのだろうか。もう5月だし熱中症だろうか。


――お前の罪がお前を殺すだろう――


 そんな言葉は、まだチャットの内部に残っている。


 ……罪が、お前を殺す?


 いったい、どういう意味だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る