黒猫先輩とオンライン会議殺人事件

嬉野K

オンライン会議殺人事件

これは正当な裁きである

第1話 5月23日11時9分

 私はバカだし、バカのままが良い。





 その日は5月にしては暑い日だった。


 5月23日11時9分。そろそろ11時11分でゾロ目になるな、なんて関係のないことを考えながら大学の講義を受けていたときのことだった。


 数年前から続く感染症の影響で、大学はオンライン授業。機械類が苦手な私は阿鼻叫喚の末、親友2人の力を借り、なんとかオンライン授業という土俵に立つことができていた。


 最初は戸惑ったが、慣れてみればなんてことはない。むしろ登校時間がムダだったと思えるまでにオンライン授業は私の生活に馴染んでいった。


 そんな中、あの事件は起きた。


 いつも通り私が自宅でオンライン授業を受けていると、突然会議のチャット欄にメッセージが表示された。 


【これは正当な裁きである】


 ……裁き……? 

 誰かの、イタズラだろうか。


『……?』オンライン授業をしていた教員が、『なんだこれは……? イタズラならやめなさい』


 教員の声を無視して、次のメッセージが送られる。


【お前の罪がお前を殺すだろう】

『……なにを……』


 それきり、映像と音声が途切れた。今まで滞りなく進行していた講義が完全にストップした。


 ……


 なにか、あったのだろうか。イタズラの静止に手間取っているのだろうか。


『……先生……?』


 誰かがマイクをオンにして呼びかけるが、返事はない。


 その時の私といえば、特に事を大きくは捉えていなかった。

 突然の腹痛で席を外したのではないか、とか。いきなり宅急便が届いたとか……そんなくだらないことを考えていた。


 まさかあのとき……教員が亡くなっているなんて、考えてもいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る