コウジョウ作戦なんこう中
『コチラリエカ。まずは外側をぐるっと通って、四等分のケーキみたいに中心を目指して。だいたいの設置ポイントは、こういうふうになるようにして』
サングラスの内側の画面に四等分された円形のマップが表示された。ぽつぽつぽつと均等になるようにポイントが指示されている。
『コチラコウイチ、了かい! だけど、ちょっと数が少なくない?』
『これでいいのよ、これだけ大きければ、重要な部分をしっかりこわせれば自重でたおれるもの』
俺とダイチは了かいとだけ通信を入れた。聞きたいことはコウイチが聞いてくれた。
しかしここはふしぎな空間だ。見れば見るほどそう思う。
内部を歩きながら内側を進む。少し歩くとすぐにカベにぶつかる。カベを切払って次の部屋へと強引に切り込む。切り込んだ先にばくだんを仕掛けてまた次の部屋へと向かう。その繰り返し。ばくだんを全部導線でつないで、連鎖するように設置していく。
白い空間にばくだんと線という異物をぬりこめる。
なんとなく小さなころに読んだ絵本の世界を思い出した。でもあれはお菓子の家だった。そしてそれは魔女のものだった。それになぞらえるのなら、コレはキノコの家だ。とすれば……、
「まぁやっぱり出てくるよな」
現れるのはキノコ怪人。いや、ツキヨタケ怪人。
「コチラヒトヨシ。内部で新型キノコ怪人、ツキヨタケ怪人とそうぐうした。これより交戦に入る」
『コチラコウイチっ! 同じく新型とそうぐう!』
『コチラリエカよ、あたしも右に同じ』
『コチラダイチ。ぼくもそっくりそのままおんなじ』
四人同時とはあまりにも出来すぎている。だが、そんなことを考えるひまはないみたいだ。
するぅと目の前のツキヨタケ怪人がすべるように動く。おれは日本刀キノコ切ミライを抜き放ってそなえる。取り付こうと近づいたところを寸バラりんとしてやる!
柄をにぎる手には自然と力がこもる。
無防備に俺を捕まえようとしてくるその手を刀の一閃で切払う!
だが、思い切り振りぬいたそれは空を切った。そして目の前にいたはずのツキヨタケ怪人のすがたも消える。くそ、ここはキノコ怪人の中だぞ? なんでもありか!
周囲へと視線を走らせてあたりにいるはずの相手を探す。
出てくるならば地面から、のはずだ。
『コチラしぃな。ツキヨタケ怪人は出てくる場所を選ばない。カベからも生えてくる。このエノキタケ怪人の内部全部がツキヨタケ怪人のフィールドみたいなものみたい。気を付けて』
だが、おれのそんな予想はあっという間にくつがえされた。それはしぃなからの通信もそうであるし、また振り返った俺の前にカベから横向きに飛び出してきているそいつがいることにしてもそうなのだ。
「――! くそっ、本当になんでもありなのかよ!」
目の前の光景にギョッとしつつも、迷わず刀を振りぬいた。だけど、それはまた空を切る。
出てくるまで姿は見えない、出てきたとしても刃でとらえられないうちに姿を消してしまう。おれは歯がみするしかない。
『コチラリエカ。しぃな相手は常にあたしたちの背後に出てきているのと違うかしら?』
リエカのそんな通信が聞こえた。しぃなからの返答が少し遅れる。
『コチラしぃな、今確認した。確かにそう、全部みんなの後ろに出てきてる。だから反応が少し遅れる、だから取り逃がす』
遅れてやってきたしぃなの答えを基にして作戦を立てる。
「コチラヒトヨシ、情報了かいした。ならツキヨタケ怪人はたおさなくてもいい。背後に気を配りつつばくだんの設置を急ぐ」
作戦指示に全員の了かいが返ってきた。後ろを気にしつつ先へと進む。
この状況で一番注意すべきは作業中の不意打ちだ。だが、不意打ちって言うのは相手の不意を打つからこそ、効果的なのだ。不意打ちに備えている相手に不意打ちを決めるのは難しい。
ついでにキノコ怪人は人間を捕まえるために集団で知能的な動きをするが、機械そのものに関しては全く関心を示さないらしいことは過去のデータから明らかだ。戦車を止めるために集団で道路をふさぐ、が戦車の中から人を引きずり出した後は戦車そのものには目もくれない。拳銃にしてもそうだ、人の手から落ちた銃にはキノコ怪人は一切興味を示さない。どうもキノコ怪人にとって人間(生き物全般かもしれないが)だけが重要なモノらしい。
「それとダイチは気配を感じたら相手に向ってじゃなく、その下の地面に向ってショットガンをうて。そのほうが相手に当たる可能性がある」
『ダイチ了かい!』
追加でダイチにオーダーを出す。ただの銃なら点の攻げき、おれの刀なら、線の攻げき。だが、ダイチのショットガンは弾をばらまく面の攻げきだ。ならばそれを使わない手はない。うまくいけば移動中のツキヨタケ怪人を攻げきできる可能性もあるし、運よく足元を吹き飛ばせれば文句のつけようもない。
それからまた奥を目指して歩く。ときおり背後に現れるツキヨタケ怪人を刀で切払おうとしつつ、カベを切り破って、ばくだんを設置して、また刀で背後を薙ぐ。その繰り返し。
ばくだんを設置しているときに背後を取られると少しひやっとするがそれでも完全に対応できないわけじゃない。刃を当てるのが難しかったとしても、コチラが攻げきの意思を見せれば相手は一旦引っ込む。だからそれ以上はかまわない。いくら話し合いが成立しない相手だからと言って、片っぱしから交戦する必要はない。無視できるものは無視して進めばいい。
『コチラコウイチ、そろそろ中心部につくけど……、ツキヨタケ怪人のちょっかいが少しはげしくなってきたみたい』
『コチラしぃな。確かにこっちのデータと合わせてもひんど上がってる。もしかしたら奥に何かあるのかも?』
流石コウイチ足が速い。おれのほうは今大体半分を少しすぎた頃合いのはずだ。
「コチラヒトヨシ。いよいよになったら全力で排除してしまってもかまわない。判断は各自に任せる」
指示に了かいという言葉が重なる。
ヒトヨタケ怪人をあしらいながら奥へ奥へと進んでいく。コウイチの通信からやや経って、俺自身も最奥までたどり着いた。
「これは……?」
思わず声が出た。ふしぎを通り越して神秘的とでも言いたくなる異様な空間だった。
確かに発光している白いカベは脈打つみたいにドクドクと動く。足元も柔らかく、時々うねるように動く。
そして何よりあたりから伝ってくる銃声と振動。つまり、今この奥までたどり着いたみんながツキヨタケ怪人と交戦しているということか!
戦いの気配を察知しすぐさま刀に手をかけて、相手がいるかいないかを確認せずに振り向き切払った。ざくっ、と確かな手ごたえを感じる。
振るった刀は確かにツキヨタケ怪人に命中した。ただ、両手を使って受けられたようで、相手の片手を切り落とすにとどまる。そして手を落としたくらいならばキノコ怪人たちはすぐに再生してしまう。
だが、チャンスはチャンスだ! すばやく刀を引き戻して、今度は振りかぶって一閃!
しかし、するっとツキヨタケ怪人はじめんへ溶けるように消えた。ここに入った途たんに攻げきをしてきたということは、今まで見たいなお遊びとは違うということ!
すかさずじく足をひねって真後ろに薙ぎ払いをかける。
刀はからぶった。だが、ビンゴ! 出てきたツキヨタケ怪人は刃を避けるためにまたすぐに地面の中へと引っ込んでいったのだ。
『コチラリエカ、奥にたどり着いた! けど、ツキヨタケ怪人の猛攻にあって調査が出来ない。誰かヘルプに来て!』
やはりリエカのほうもそうなったか! だとすればさっきの銃げき戦の音はコウイチだろう。そしておそらくダイチも交戦中だ。なら、ここはおれが援護に向かうしかない!
しかし、本気になったツキヨタケ怪人に背中を見せるのは、少々危険かもしれない。
空振りを続けて相手をけん制しつつ打開さくを考える。
ゆっくり、ジリジリとカベのほうへと後退しつつ柄をにぎる手に力をこめる。
そして相手が背後に現れたらすばやく後ろに向って回転するように思い切り刀を振る。ザクッと剣先がカベに引っかかって止まってしまった。
絶対にツキヨタケ怪人はチャンスを見逃さないだろう。だから俺はそのまま片手を放してホルスターから銃を引っ張り出して適当に弾をうつ! 反動で腕が振り回されて痛い思いをした。が、時間を稼ぐことには成功し、カベから刀を引っぺがせた。
そのまま抜き出した刀を振りかぶって思い切りまた振る。カベを背中にしたままで勢いよく振りかぶって、縦一閃!
だが、やはりツキヨタケ怪人には逃げられた。でも、次に出てくる場所はもう分かっている。おれの真後ろだ!
振り返りつつ下から上へと切り上げる。タイミングはぎりぎり遅かった。そしてまたしても剣先がカベに引っかかって、止まってしまう。銃を抜けるタイミングでも体勢でもなかったから、とっさに後ろへとけりを放った。
だが、けりは出すべきじゃなかったと思い知る。
「くそ、足捕まえやがったか!」
そのまま足を引っ張られる。柄をにぎる手にギュッと力を込めて、思い切り引き抜く。ツキヨタケ怪人の引っ張る力を利用して強引に刀をカベから引き抜いた。そのまま捕まえられた足を軸にして反転。アクロバットな動きでツキヨタケ怪人の手から足を引っ張り出して、後ろへと転がり、カベに足を付けてそれをけりつける!
勢いをつけて刀を振りぬいた!
だが、それはあっさりと回ひされてしまった。思わず舌打ちをして、それから刀をさやへと戻し、SデザートSHI-Kをホルスターから引き抜いて、振り返りざまに引き金を連打する!
だがやっぱりツキヨタケ怪人はよける。でもそれでいい。打った銃弾は傷を受けたカベへとぶつかり、その衝撃を傷に沿って広げる! そう、弾丸がカベに大穴を開けたのだ!
俺は迷わずその穴へと飛び込み、しっ走。キノコ切ミライを抜き放ち、次の部屋のカベも一息に切払う。背後に追いついてきたツキヨタケ怪人の伸びた手をしゃがみ込んで回避して、もう一つカベを超える!
転がり込んだ先にはヒトヨタケ怪人と対峙するリエカがいた!
「ジーチャン班長!」
「残念ながら俺だけじゃない……!」
リエカの背後を取ろうとしていたツキヨタケ怪人目がけて刀を振るう!
代わりにリエカがおれの背後に向けて銃を発砲! 入れ替わりざまに攻げきが交さくする!
『二人になればツキヨタケ怪人のスキつける。タイミング合わせて』
おれとリエカが合流したぴったしのタイミングでしぃなの通信が聞こえた。
「ヒトヨシ了かい!」
「リエカ了かい!」
即座に目配せをして、俺は低く構え、リエカは銃を構えて、正面に向き合う。
おれは迷いなくリエカに向って突っ走る。
狙いはリエカのその後ろに絶対に現れるツキヨタケ怪人だ!
うにょん、と地面がまるでゼリーみたいに盛り上がる。そこに狙いをつけておれはかなりの低姿勢から地面を這うような横一閃を放つ!
背後でバガンバガンっ! と銃声がなった! おれが攻げきしようとしたタイミングと同時にリエカもおれの背後に現れたツキヨタケ怪人に向って引き金を引いたのだ!
攻げきは見事ツキヨタケ怪人に命中、相手の足元を切払い、エネルギーを取り込むための器官と体とをすんばらりんした!
「こっちはたおした!」
「ゴメン! こっちは逃げられたわ」
おれは振り返って、刃を構え直す。
「リエカは奥のカベの調査に入ってくれ。おれが足止めを引き受ける」
「了かい!」
リエカの背中を庇う。もし仮にこの状況でおれとリエカのどちらを狙うのがいいかと考えれば、この奥の部屋が何なのかを調査するために無防備に背中を晒してるリエカのほうだろ。つまり、おれは守り人になればいい。
右うでの機械から色々なコードを引っ張り出したリエカがおそらく最後のカベであろうものにつきさしていく。
「堅い!? これまでよりも断然堅いわね」
俺がリエカの背中を守っているため、ツキヨタケ怪人は中々姿を現さない。だが、スキを見せれば必ずおそってくるはずだ。だから気を抜けない。
「なるべく早く頼むな。コウイチとダイチのほうも心配だ」
「分かってるわよ。待って分析完了まであと二十秒」
カベに電極付きのパッドを張り付つけたリエカが親指の爪をガジガジと噛んでいた。
スキを見せたら確実におそってくる。それは確かだ。
……、確実におそってくる?
それでも全く全然姿を現す気配がない。このままこうしていて気を張っていても仕方ないと判断しリエカのほうへと振り返る。
そのままぐるっと、回転して低い一げきを振るう!
それはちょうどぐわぁと姿を現したツキヨタケ怪人の胴をすんばらりした! さぁぁと目の前でツキヨタケ怪人の体が崩れ落ちていく。
「ちょっと、ひやっとしたわよ」
「でも読み通りだろ?」
「まぁそうね。出たわ……! けどこれは、……! ジーチャン班長、これを壊すために今残ってるばくだんありったけこの周囲に置いていくわよ!」
リエカが右うでの機械の画面をおれに見せてきた。表示はモース八・七。しかしそれがどれくらい堅いのか良く分からなかった。
「これは、コランダム……、えぇと、ルビ―とかサファイアとかと同じくらいには堅いのよ。ダイヤモンドの次くらいに堅い!」
俺が分かっていないのを察したリエカが勝手に補足してくれた。
「相当堅いな……」
「でしょ。実際には単純な堅さだけだからあんまり当てになるモノでもないんだけど……、それでもびっくりするぐらい堅いわよ。生き物がこんなに堅いなんて……」
ぶつぶつ呟きながらもリエカは背中のバックパックからねんど状のばくだんを取り出して設置していく。
残りは次の部屋に使うとしよう。
「よし、次行くわよ!」
「班長は俺だけどな」
作業を終えたリエカを次の部屋へと連れていく。そこでまたばくだんを設置して、それからまたカベを切り破って次の部屋へと進もうとしたところ、おれが傷をつけた場所が向こう側からの強い振動で崩れた。
その穴からはダイチが絶えずグルグルと回転するようにショットガンをうっている姿が見える。ダイチはこちらに気が付いているようすだが、ツキヨタケ怪人に気付かれないように気付いていないふりをしていた。
おれとリエカは穴から様子を見つつうなずき合う。
それから小さく息を吐きだして、音声通信をつなぐ。
「返事はしなくていい、三、二、一で、突入して一気に後ろを取る。タイミングだけ合わせてくれ」
ほんのわずかにダイチ視線が飛んできた。おれはそれにうなずきで返す。
「三、二」
リエカがカウントダウンを始める。柄をにぎる手に力を込めて、穴の横に張り付く。
「一!」
中へと飛び込む。丁度ダイチは穴へと背中を向けている。完全に死角が取れた。地面から伸びあがってきたツキヨタケ怪人を斬! と横に切り払う!
手元に確かな手ごたえが伝わった。目の前では白いバケモノが砂のように崩れていく。
「はー、助かったよ……。さすがにそろそろ体力が限界……」
どん、とダイチは床にへたり込んだ。どうもずっと追いかけっこを繰り返していたらしい。おれは刀をさやに戻しつつ、ぐるっと部屋の中を見る。カベには無数に銃弾のあとが付いていた。
バックパックを抱えて奥のカベへと近づいたリエカはそこに次から次へとばくだんをしかけていく。
「でも、二人はどうしてこっちに?」
「ツキヨタケ怪人を一対一でどうこうするのはかなり骨だけど、二人ならスキをついてたおせたからな。だからフォローがいるだろうって判断して、今回ってる。それから、アレだ」
もくもくと部屋の奥にばくだんをしかけるリエカのほうを指さす。
「そうだそうだ! あそこだけ、異様に堅いんだよ!」
「だからあるだけ全部使ってあれをぶっこわしてやろうってことだ」
「こんなもんでいいわね」
そういえばと手を叩いたダイチにおれが答えるのと立ち上がったリエカが手をはたくのが重なった。
カベに近づいて、居合抜きのように刀を構える。
「あっ、待って待って、ぼくがやるよ」
ガシャンと弾を装てんしたダイチがそう申し出てきたが、
「弾薬がもったいないから、とっとけ」
と断って、短く息を吐きだしてからカベに向けて刀を振る。一度、二度、三度。それからこん身のけりを叩き込む。
バリっともベリっとも聞こえる音と共にカベに横穴が開いた。
そこを通ってとなりの部屋へと移動する。
「コウイチはどんな戦い方してるんだ……?」
中に入っておれは思わずしかめっ面をした。
「これは……、めちゃくちゃ打ちまくってるわね」
後ろから来たリエカとダイチが呆れたような表情をする。
そう、となりからはガガガッ、ダダダッ、ダンダンッ、バンバンッ! と銃声が鳴り続け、カベには無数の穴が開いている。
リエカはまた奥のカベに爆弾をしかけ始める。
「コウイチの援護に入るぞ」
「了かい!」
なるべくカベの傷が少ない場所に立って、カベを破ろうと構えてから考え直す。
「ダイチ、あの、カベの中央を銃でぶっこわして突入するぞ。あれだけこわれてれば、もうショットガンの一発で大穴が開くはずだ」
ただ、心配なのは穴をあけようと構えたときに向こう側からコウイチの流れ弾が飛んでこないとも限らないということ。なので、俺は音声通信のチャンネルを解放する。
「コチラヒトヨシ。コウイチこれからカベを破って援護に入る。真ん中ぶち抜くから、弾うつなよ」
『了かい』
帰ってきた声は小さく、やや息が上がっていた。
「ダイチ、やってくれ」
「了かい!」
ズドンっ! とダイチがショットガンの引き金を引く。銃弾がバシャッと大量に飛び出して、傷だらけ、穴だらけのカベにさらなる穴をうつ。
すぐさま体当たりをかます。ベキィ! とカベが破れた。
俺の体はとなりの部屋へと無ぼうびにも転がり込んだ。すぐさま顔を上げればギョッとしたようなツキヨタケ怪人と目が合った。思わずギョッとしてしまう。だが、すぐさま立ち上がり、刀の柄頭に手をかける。
ダダダッと銃弾が横から飛んでくる。その時にはツキヨタケ怪人はすでに床へと沈みこんでいた。
遅れてダイチがこっちの部屋にやってくる。
「全く、ヒトヨシくんは助けに来るのが遅い!」
何故か俺に文句をつけるコウイチは肩からアサルトライフルを下げていた。確かこの形の型番は……、SHI-MJ改良型カラシニコフ銃、だったはずだけど、SデザートSHI-Kと同じく少し小型化してあるみたいだし、多分それならば頭にSを付けてS-SHI-MJ改良型カラシニコフ銃だろう。なら略称はS-SHI-MJアサルトのはずだ。
「悪い悪い、自分のと合わせて三体敵を切るのに手間取ったんだ」
言ってから気が付いた。きょういの新型撃つい率だ!
「なに? 全部ヒトヨシくんが倒したの?」
「そうらしい」
「さすがじーチャン班長、頼りになるね」
「たまたま運が良かっただけだろ」
ダイチとも合流して三人で軽口を叩きながら背中を合わせる。どこからでも来やがれってんだ。
だが、相手はツキヨタケ怪人。絶対に俺たちの背中を狙ってくる奴だ。この状況では出てこないのは明白。
「ヒトヨシくん、それから報告してない良くないお知らせが一つあるんだけど……」
銃をかまえたまま振り向くことなくコウイチがそういった。
「もったいぶらずにさっさと言え。情報伝達は逐一だって、習ったろ」
「ここツキヨタケ怪人が三体いる」
「なっ――!」
コウイチの言葉に思わず、口をぽかんと開いた。
「それはまた……。良く持ちこたえられたね、コウイチくん」
「まぁ、リエカちゃんからの救援通信が入ったときに順繰り回ってボクのところにも助っ人に来てくれるだろうってのは予想できたから足止めと、時間かせぎに集中してたんだよね。それでも通信する余裕はなかったけど……」
お互いに苦笑いしながらコウイチとダイチが言葉を交わす。それを聞きながら脳みそフル回転で三体のツキヨタケ怪人をたおすための作戦を考え始める。
「コチラヒトヨシ。リエカ、三体のツキヨタケ怪人をたおすには何がいる?」
自分でも考えつつ、となりでばくだんをしかけているリエカに助力を頼む。
『なに? どういうこと? そんなに一度に相手したくないんだけど……?』
「残念ながらコウイチが三体と交戦して足止めしてた。おかげでおれたちは楽できたけどな」
『すごいわねコウイチ。でも基本は同じ対処法で問題ないはずよ、お互いの背中をお互いで追いかけるように陣形を組んで出てきたところを即叩く』
「まぁそれ以外にはないよな。ヒトヨシ了かい」
通信用のチャンネルを閉じて、刀をかまえる。
「だそうだ、ふんばりどころだし、気合入れていくぞ」
「了かい!」
おれの軽口に、二人が声をそろえて返事をする。おれたち十四班の力見せてやる!
『あたしもこっち終わり次第戦線に合流するわ!』
そして三対三の戦いが始まる。
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