第55話 第8ダンジョン部本格始動


 その日の昼の時間…



「師匠! やっと授業が終わったッス。今日もいい感じで訓練出来たから腹が減ったッス。大急ぎで食堂に行くッスよ」


「義人、俺も腹が減ったぞ。今日の食堂のメニューはなんだろうな?」


「ノリ君、午後は学科の授業ですから先生のお話をしっかりと聞いていないとダメですよ」


 どうやら歩美は、満腹になった重徳がいつものように学科の授業で居眠りに走るのを見越しているよう。こうして歩美からありがたいお小言をいただきつつ、重徳たちは学生食堂に向かう。いつものメンバーに加えてもちろん彩夏も行動をともにしている。いつの間にかロリ長とも仲良さそうに話をしているのはどうしたことだろう? もしかしてロリ長は未だ存在さえわからないエルフよりも実在して目の前にいる彩夏に目標を切り替えたのだろうか? ひとまずはロリ長のエルフトリップは収まったようだからこれはこれでまあヨシとしておくべきだろう。とまあこんな普段と変わりない様子で食堂に入った瞬間…



「歩美ちゃん、ありがとう!」


「命の恩人が来たわよ!」


「歩美ちゃん、本当に可愛いんだから!」


「あの力の秘密を教えて!」


 歩美の姿を発見した3年生が一斉に彼女を取り囲んで手を取って感謝を伝えている。その光景は街中にアイドルが突然姿を現したがごとく、何十人もの人の輪がその場に出来上がっている。



「あ、あの… その」


 突然の大歓迎振りに歩美は輪の中心でオロオロするばかり。そして同じ頃…



「四條、感謝しているぞ!」


「一時は死を覚悟したからな。お前がゴブリンを片付けてくれて本当に助かった!」


「よくあれだけ大量のゴブリンを倒せたな!」


「本当に凄いヤツだぜ!」


 重徳は3年生の先輩たちから肩や頭をバシバシと叩かれて手荒い歓迎を受けている。


(いやいや、先輩方! そんな力を込めて叩いたら痛いでしょうが!)


 それでも歓迎は一向に止もうとしない。重徳の肩や背中には無数の手形がついているのではなかろうか。そしてようやく歓迎の儀が終わったと思ったら、重徳の前にはひとりの先輩が立っている。



「四條、改めて礼を言う。俺は3年Aクラスの近藤だ。お前が道を切り開いてくれたおかげで俺たちはあの困難な状況から脱出できた。心から感謝しているぞ」


「お役に立ててなによりです」


 重徳は近藤先輩が差し出した右手を握ってガッシリと握手を交わす。ちょうどそこに見覚えのある顔がやってくる。



「四條、お手柄だったな! 俺が駆け付けた時には先輩たちがダンジョンから出てくるところだったぞ」


「東堂先輩、そんな大したもんじゃないですから」


(東堂先輩の前だから一応謙遜しておこうか。あまり手柄をひけらかすのは好きじゃないし)


 実際には魔族の介入が現実のモノとなっており政府の中枢まで騒ぎが広がっているのだが、重徳的には大した問題ではないことにしておきたいらしい。そんな簡単に話が済むかどうかはこの際別問題なのだろう。



「東堂、お前は四條と知り合いなのか?」


「近藤先輩、こいつとは訓練で一度打ち合った仲です。こうなるとたとえ一度でも四條に打ち勝ったのは自慢になるな。四條、近藤先輩は第1ダンジョン部の部長だ。漢気に溢れた人だから困ったことがあったら俺同様に頼ればいい」


「はい、ありがとうございます。近藤先輩、今後ともよろしくお願いします」


(そうだったのか。近藤先輩が第1ダンジョン部の部長だったんだ。すると次期部長が東堂先輩なんだな。この二人は同じダンジョン部で気心が知れている間柄なんだろう。それになんだか同じ匂いがしてくるし…)


 実際その通りで、東堂は誰から見ても第1ダンジョン部の次期部長なのは間違いない。そして東堂はもちろん元々の人格もあるが、実はこの近藤の影響を結構受けている。現在の第1ダンジョン部の隆盛はこの二人によって成し得ているといっても過言ではなさそう。



「ハハハ! 実力は東堂の方が遥かに上だが、3年生という理由で俺が部長を務めているだけだ。ところで四條はどこかのダンジョン部に入っているのか?」


「はい、第8ダンジョン部です」


「そうか、それは残念だったな。我ら第1ダンジョン部は超有望な新人を取り逃がしたらしい。それは今更仕方がないから、今後は互いに切磋琢磨していこう」


「こちらこそよろしくお願いします」


 すでに第8ダンジョン部に入部をしている重徳の立場を思い遣って敢えて勧誘しないところが近藤の度量の広さだろう。タイプとしてはやはり東堂とよく似ている印象。重徳自身、今回の事件をきっかけにして興味を惹かれる人物と知り合いになれたと感じている。


 こうして先輩たちの歓迎を終えて、彼は歩美たちが待っている席に向かう。



「ノリ君、先輩たちに囲まれてすごい歓迎ぶりでしたね」


「そういう歩美こそ、先輩たち全員から感謝されていたじゃないか」


 重徳については入学当初から「勇者を次々に倒していく謎の一般人」という噂が広がって上級生の間にもかなり名前が知られていたが、今回歩美によって行使された結界術が全生徒の命を守った件も大々的に吹聴されており、結果的に彼女の名前も知れ渡ることとなっている。


 こうして重徳たちは義人が先に確保しておいた席に座ってようやく昼食の時間を迎えるのであった。






   ◇◇◇◇◇






 同じ日の放課後…


 午後の学科の時間が終わって重徳たちはダンジョン部の部室に向かう。重徳が先頭で部屋のドアを開くと…


 パン! パン! パパーン!


 何事かと思ったら先輩たちが盛大にクラッカーを鳴らして重徳たちを出迎えてくれている。いきなりの不意打ちだったので歩美はビックリした様子で重徳の背中にしがみ付いている状態。


(な、なんだか柔らかい感触が俺の背中に押し当てられているぞ!)


 一瞬背中に全神経が集中したその時、テーブルを取り囲む一番奥の席に座っている真由美先輩が口を開く。



「我が第8ダンジョン部に栄光をもたらす英雄が凱旋したぞ!」


「四條君、鴨川さん、本当に大活躍だったわね!」


「第8ダンジョン部の誇りよ!」


「いやいや、そこは至宝だろう!」


「二人のおかげで第8ダンジョン部の評判が鰻登りなの!」


 真由美先輩に続いて他の先輩たちも堰を切ったように重徳たちを褒めそやしている。その表情は今まで見たことがないくらいに明るい。


(こんな風に言われると、なんだか背中がくすぐったいんだよな。違った! まだ歩美さんがしがみ付いているおかげでフカフカな感触だった)



「先輩方、照れくさいからそんな大袈裟なことはヤメてください」


「何を言っているんだ。ゴブリンの大軍に取り囲まれた生徒を守り抜いた女神と、一番に救援に駆け付けた白馬の王子様という噂が全校に流れているぞ」


(どうか勘弁してくれ! 俺が白馬の王子様だって? 本当にそんな噂が立っているとしたら明日から登校を拒否するぞ。俺の精神が耐えられないに決まっているだろうが)


 重徳としては絶対にヤメてほしいのだが、噂の出所が助け出された際の歩美の言動に尾ヒレがついて広まっている状況だったりするものだから、重徳的には結構なダメージ。あの時は夢中だったとはいえ、こうして事件が解決した今となっては相当派手に噂のタネを蒔き散らかしたという自覚がある。



「まあいいから早く中に入れ!」


 ドアの外に並んで突っ立っている重徳たちを真由美先輩は中に入るように促す。ようやく落ち着きを取り戻した1年生は順に空いている席に座る。



「おや? なんだかひとり増えているようだが?」


「真由美先輩、入部希望者を連れてきました。同じクラスの上条さんです」


「はじめまして、上条彩夏です。第8ダンジョン部に入部しますのでどうかよろしくお願いします」


 ロリ長が彩夏を先輩に紹介している。さっき何やら二人で話し込んでいたのは入部の件だったよう。いずれにしても弱小な部活にとって部員が増えるのは大歓迎だろう。



「君たちと同じクラスということは聖女なのか! 願ってもない話だし、こちらも大歓迎だ!」


 彩夏の入部はすんなりと認められる。実は彼女とは午前中の実技実習で四條流の手解きをした間柄もあって、今では重徳もかなり気心が知れている。何も知らない相手と1から関係を築いていくよりも、こうして何らかの取っ掛かりがある方が連携も取り易くなるだろうし、よいきっかけとなったよう。



「失礼いたしますわ」


 ちょうどその時、部室のドアが開いて梓のストーカーこと縦ロール榎本とロリ長の犠牲者第1号の楓が入ってくる。ストーカー榎本は重徳にキッとした視線を向けてから、二宮さんを見てとろけそうな表情をしている。特に重徳が彼女に対して何かヒドイことをしたわけでもないのになんだか扱いが悪いような気が… たぶん縦ロール榎本的には正義のヒーローは梓だけであって、その地位を脅かしている重徳が許せないのだろう。重徳としてはとんでもないとばっちりを受けて解せない気分だろが、だがそれよりも彼の脳裏に真っ先に浮かんでいるのは…


(縦ロール榎本、こいつは近いうちに何らかの犯罪に手を染めるんじゃないか? そう思わせるレベルの危険な目の色だぞ。邪悪な魔女がお姫様の命を狙うような邪な妄想を抱いているのではないかと危惧するのは俺だけだろうか?)


 そう思わせるような危険な香りを漂わせているのかもしれない。まあ彼女のような思い込みの激しい手合いにはこのような誤解はつきものというべきだろう。



「信長君、お隣に失礼します」


 そんな縦ロールとは別に、ロリ長に抱いている好意を隠そうともしない楓はちょうど空いていた左側の席にちゃっかり収まっている。まあロリ長変態ハーレム要員としてどうか頑張ってもらいたい。こうして全員が揃った所で改めて真由美先輩が口を開く。



「実は二人の活躍の話が伝わって第8ダンジョン部に入部希望者が相次いでいるんだ。だが2,3年生については入部を断っている。この部は1年生の君たちが中心になって盛り上げてもらいたいからな。今更そこに先輩面する者が現れても君たちがやりにくいだろう」


「先輩方はそれでいいんですか?」


「私たちは1年生の君たちがやりやすいようにアシストに徹する。それこそがこの第8ダンジョン部に再び栄光の日々を取り戻す方法だと私たちが相談して決めたんだ」


(この先輩方は本当にいい人たちなんだな。何よりも俺たちを優先して考えてくれるなんて中々出来ないだろう。誰がなんと言おうと俺は胸を張って答えるぞ。俺たちの自慢の先輩だと!)


「ぶっちゃけた話をすると、誰でもダンジョンに入る時には優秀な仲間が欲しい。命懸けの戦いだからより安全を確保したい気持ちは当然だろう。それに優秀な仲間がいれば強い魔物の討伐も可能になるから自分のレベルも上昇しやすくなる。だからこそ私たちはそんな考えで君たちに近づこうとする人間を可能な限り排除したいんだ」


 なるほど、と重徳は頷いている。先輩たちが自分たちのために色々と考えてくれているその思いがストレートに伝わってきている。さすがは弱小な部を精一杯守っていただけのことはあると心から賛辞を送りたくなる。様々なしがらみの盾になって、1年生がなるべく自由に活動出来るように守ろうというその思い。先輩たちの心意気を聞いて重徳たちは益々頭が上がらない。



「本音を言うと私たちも四條君や鴨川さんの力を借りてレベルを上げたいのは山々だよ。でも私たちは自分の実力がわかっている。私たちでは君たちの足手纏いにしかならないんだとね。私たちの力ではこの部を辛うじて守るのが精一杯だった。だが君たちにはどこにも負けない素晴らしい部にしていく力がある。存分にその力を発揮してもらいたいんだ」


「先輩方、本当にありがとうございます」


 重徳は心から感服して頭を下げている。この先輩たちと知り合いになって本当に良かったよという気持ちがこもっていそう。先輩たちも今まで苦労した経験があったからこそ、このような考え方に至るのだろう。


 人間の歴史の中で〔中興の祖〕と呼ばれる衰えかけた王朝や時の政府を立て直した人物がいる。日本で例えるなら徳川吉宗などがこれに該当する。江戸幕府において破綻しかかった財政を立て直した改革者として有名だが、これは8代将軍吉宗だけの功労と考えるべきではないかもしれない。もしかしたらその前の代に老害となっていた家臣を引退させていたかもしれないし、有能な若手の家臣を来るべき次の世代のためにあらかじめ取り立てていたのかもしれない。つまり花が美しく咲き誇るためには種を蒔く人間がいるということ。このように歴史を考えるとまた別の姿が浮かび上がってくるかもしれない。


 そして人知れず縁の下の力持ちになる道を選択した第8ダンジョン部の先輩たちは、さしづめこの種を蒔いた人たちに該当するのではないだろうか。重徳たちがやりやすいように進む道を整備していく… これは簡単に出来そうでも実はなかなか出来ないことだろう。


 さらに真由美先輩が続ける。



「1年生に関しては入部を認めるかどうかは、四條君、君に一任する。君が認めた人物を入部させてくれ」


「えっ! 俺がそんなことを勝手に決めていいんですか?」


「構わないぞ。君には人を見る目があると私たちは信じている」


「自分の一存というのは中々難しいので、ここにいるメンバーと相談して決めたいと思います」


「それならそれで構わない。選考は自由にしてくれ。私たちには事後報告でいいから」


 重徳としてはなんだか話が変な方向に行ってしまったという思いだが、先輩たちは全員が満足そうに頷いている。



「これは私たちの総意だから、1年生のことは君たちに任せるよ。さて、これから先の話をしようか」


 どうやら新入部員に関する話はお仕舞いらしい。次はどんな話題なのだろうか?



「今日と明日は安全確認のために大山ダンジョンに入るのは禁止されている。これは管理事務所からの通達だから冒険者全員が内部には入れない。したがって私たちが君たちをダンジョンに案内するのは明後日以降になる」


(そうだったのか! 全然知らなかったよ。明後日までお預けなのはちょっと残念だぞ。今日からロリ長や二宮さんを内部に案内できると思っていたけど、どうやら無理なようだ)


 確かにあんなゴブリンの大発生が再発しないように管理事務所が安全を確認する必要があるのは当然。もっとも四條流が大元の原因の魔族をプチュンしちゃっているから内部は安全なはずなのだが… この辺はある種のお役所仕事的な面があるのだろう。



「たぶん今日は無理だろうと予想はしていたよ」


「そうだったのか、残念だ。アイテムボックスに真剣を用意していたのだが」


 ロリ長はこの事態を予想していたようだが、対してやる気満々だった梓は相当にガッカリした表情。真剣を準備していたなんて、放課後からダンジョンに突撃するつもりだったのだろうか? それよりも気になるのは彼女の「アイテムボックス」という発言。勇者というのはそんな便利なスキルまで持っているのか…



「師匠、自分もダンジョンに入りたかったッス!」


「義人、その分道場でしっかりと汗を流せばいいだろう」


「実戦に敵うものはないッス。魔物を相手に自分の実力を確かめたかったッス!」


「明後日まで我慢するしかないな」


 義人も楽しみにしていたようだが、まるでお預けを食らった子犬のようにシュンとした表情。


(そのやるせない感情を実際にダンジョンに入ったら魔物にぶつけるんだぞ。思いっきりぶち当たってみるんだ。俺がきっちりとフォローはしてやる。それこそが師匠としての務めだからな)



「ワタクシは梓様の勇姿が見られないのは心から残念ですわ」


「信長君、明後日からぜひご一緒したいです!」


(そこのストーカーと犠牲者第1号、欲望丸出しのアピールはそこまでにしておけ! 二宮さんの視線が宙を彷徨っているじゃないか。ロリ長はニヤ付くんじゃない! お前の邪悪なハーレム計画が駄々漏れだぞ! そう言えばこやつは魔族の件を話した時にエルフの存在の可能性が出てきたせいで脳みそがトリップしていたはず。今は何とか正常に戻ってはいるけど、絶対に例の計画を諦めるつもりはないんだな。いい根性だ! 勝手にして欲しいが、俺には迷惑を掛けるなよ)



「さて、明後日から私たちの引率でダンジョンに入るのだが、さすがにこの人数でゾロゾロ入るのはどうかと思う。そこで臨時のパーティーをここで作っておきたい。各自希望があれば言ってくれ」


「僕のパーティーには女性しか必要ありません」


(ロリ長の野郎は真っ先にキッパリと言い切りやがったぞ! どういう神経をしているんだ? 本当にハーレム作りにしか興味がないのか?)


 呆れた表情の重徳をよそに、続いて梓と義人が声をあげる。



「私は特に希望はないな」


「出来れば最初は師匠と一緒になりたいッス」


 梓は誰とでも良いそうだが、義人は重徳と同行したいらしい。段々彼が主人にシッポを振る柴犬に見えてくるのは目の錯覚だろうか?



「そうだな、1年生は勇者が3人いるからそれぞれ別のパーティーにしようか。まずは1年生が3つに分かれてくれ」


 真由美先輩の指示でロリ長の所には楓と上条さんが入る。なぜか女子二人の視線に火花が飛んでいるような気がするが、まあ気のせいだろう。梓にはストーカー榎本が絶対に手放すものかとへばり付く。この事態を予想していた梓は諦め顔で再び視線を宙にお出かけさせている。重徳の隣にいる歩美が事情を察してコブシをニギニギして頑張れというゼスチャーを送っているが、残念ながら梓の目には入っていない模様。


 残った歩美と義人は重徳と一緒になって、これで1年生のグループが出来上る。そこに先輩たちが入ると臨時のパーティーが3つ完成と相成る。



「斉藤君と二宮さんの所は2年生の前衛を配置した方が良さそうだな。斉藤君の所には秋絵が、二宮さんの所には私が入ろう。あとの三人は適当に分かれてくれ」


「真由美先輩、どうぞよろしくおねがいします」


「こちらこそ、二宮さんたちとの連携を楽しみにしているよ」


「吉田先輩、しばらくお世話になります」


「信長君は剣の腕が立つそうだね。楽しみにしているから」


 二宮さんとロリ長が先輩たちに改めて挨拶をしている。その横では目をハートマークにしているストーカー榎本が今にも抱きつかんばかりの勢いで鼻息荒く梓に接近している。重徳としては自分に迷惑が掛からない限りは放置に決定。


 

「噂のゴブリンスレーヤーと一緒になるのはちょっと緊張するわね」


「アリス先輩、ご迷惑を掛けるかもしれませんがよろしくお願いします」


 アリス先輩というのはニックネームで、本名は有栖川ありすがわ芹奈せりなという。高貴な家柄の生まれのようなお名前だが、実際に品のある優雅な振る舞いを見せる2年生。先輩パーティーでは魔法による後方からの援護を担当している。



「あなたたちには2年生なんか必要ないかもしれないけど、一応学園の規則ですから私が付き添います。でも四條君に支援魔法なんて必要なのかしら?」


「戦力としては必要ないかもしれないですが、ダンジョンでの行動の留意点を義人に教えてください」


「先輩、よろしくお願いするッス」


「わかりました、特に義人君の教育係ということでいいかしら?」


「はい、義人の戦闘技術は十分なレベルですが、何しろダンジョンは経験がない場所ですから」


 義人は四條流の道場に通いだしてこのところメキメキと力を付けている。徒手格闘ではロリ長や二宮さんを制するまでの成長ぶり。剣の技術も四條流の体捌きを取り入れて今や別人のように上達した結果、ロリ長や二宮さんを相手にかなりの時間打ち合いを続けられる。天然勇者の二人に食らいついているんだから、義人の努力は大いに見習うべき点がある。元々素直な性格で教えられたことを確実にものにしているのが彼の最大の長所かも知れない。反面で欠点を挙げるとしたら、もうちょっと臨機応変に立ち回れるとなお良いという点だろう。こればかりは本人が気が付かないと他人が教えるのは中々難しい。ダンジョンでの実戦で義人に何かを掴んでもらいたいというのは、重徳の師匠としての親心のようなものだろう。



 こうして明後日からダンジョンで活動する臨時のパーティーが決定。どうせ初日は1階層を軽く歩いてみるだけだろうが、新たなメンバーと活動するのは重徳にとってもやはり新鮮に感じるし、他の1年生も明後日が楽しみにしている表情。



「私が傍で見ていますから、ノリ君は暴走しないでくださいね」


「1階層ではよほどのことがない限り手は出さないよ」


 そして最後に歩美からお約束の釘を刺される重徳であった。



   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



魔族騒動が終息して、いよいよ第8ダンジョン部が1年生と一緒の行動開始。それにしても各パーティーのラインナップは中々充実した陣容。果たしてダンジョンに入ってどんな動きを見せるのか…


この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


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