第52話 異変の原因


 歩美とお互いの気持ちを確かめ合ってウキウキ気分で帰宅した重徳。「もっと一緒にいたい」と目で訴える歩美に後ろ髪惹かれる思いだったが、彼女の父親の目が理由もなく怖かったので午後7時前には御中神社を発つ。


 そのまま駅に向かう途中で彼の携帯が着信を告げる。その相手は…



「若、今は大丈夫か?」


「カレン、こんな時間に珍しいな」


 重徳とカレンはパーティーを組んでいる以上当然連絡先を交換している。主にダンジョン行きの集合時間の確認くらいしか電話で喋ったことがないのは、他の男性からすれば「なんてもったいないことを…」とこれでもかという具合に突っ込まれるかもしれない。



「それよりも若、何でも四條流を挙げて生徒さんたちを救出したらしいじゃないか」


「なんだ、その件か。道場の誰かから聞いたのか?」


「若、私はバイトといえども管理事務所の職員だぞ。どこからでも情報は入ってくる」


「そうだった、すっかり忘れていた。ああ、それから今日は連絡もナシにキャンセルしてすまなかったな」


 実は重徳、本日もカレンとダンジョンに入る予定だったのを思い出す。もちろんあのような状況で彼女と一緒に探索など不可能。自動的にキャンセルになった形なので、ひと言謝っておきたかったらしい。



「それは気にしないでくれ。私もゴブリンで溢れたダンジョンなど入りたくはない」


「それもそうか。それで何か用件か?」


「そうそう、今の話と関係があるんだけど、しばらくの間ダンジョンは閉鎖されるみたいだ。なんでも若たちが引き揚げてからもゴブリンの異常発生が続いているらしい」


「そうなのか… いつになったら通常に戻るんだろうな?」


「私に聞かないでもらいたい。それよりも当分私は暇になってしまったから道場に出向いていつもより長めに稽古を積むとしよう」


「そうか、カレンは開店休業状態なんだな」


「そういう若だってダンジョンに入れないと戦闘狂の血が疼き出すんじゃないのか?」


「俺は大丈夫だ。た、たぶん… ただこのまま放置しておくといつになったらダンジョンに入れるのかわかったものじゃないな」


 ここで重徳の言葉が途切れる。このとき彼の脳裏には絶対に我慢できそうもない究極の戦闘狂の顔が思い浮かんでしまったよう。



「若、どうしたんだ? なんだか歯切れが悪いぞ」


「いや、ジイさんの顔が思い浮かんでしまって… ダンジョンに入れないと聞いて大人しくしているかどうか、俺にはまったく自信がないんだ」


「そ、そうなのか… まあその辺は若が頑張ってくれ」


「はぁ~… とはいってもあれだけ大量のゴブリンを片付けるとなるとジイさんの力を借りなきゃしょうがないしな~。どうすればいいのやら…」


「そ、そうか。あとは若に任せるからな」


 苦悩する重徳の声が聞こえてくる。カレンはどうやら雲行きが怪しくなってきたのを感じているよう。手早く重徳との話をまとめて通話を終える。



 夜の7時過ぎに重徳が帰宅すると両親と祖父母が食卓を囲んでいる最中。



「あら、重徳お帰りなさい」


「ただいま」


 重徳はこのところほぼ毎日のようにカレンと連れ立ってダンジョンに入っている。このくらいの時間に帰ってくるのは母親にしてはもう当たり前なのかもしれない。一応両親にはダンジョンに入っていることは伝えてあるが、内部で何をしたかなどといった細かい話は今まで一度も聞かれたことがない。こんな感じで重徳は両親からはかなり放任されている。その分祖母が身のまわりの片づけや礼儀作法といった躾けに関してキッチリと教えてくれた。もっとも両親たちは重徳が物心ついた頃から共稼ぎで働いており、夜遅くにならないと帰ってこない生活が当たり前だったので、重徳的には今日のように両親が夕食に揃っている方が珍しい。


 ということで着替えを済ませた重徳が食卓に着くといつも通りの日常の風景に終始する。もちろん重徳は両親がいるところでは本日のダンジョンの異変について何もしゃべらない。


 ということで夕食を終えた重徳は骨董品を眺めてニマニマしているジジイの部屋へと向かう。



「ジイさん、今大丈夫か?」


「なんじゃ、重徳か。早う入れ」


 骨董品を眺めている時のジジイは一番機嫌がいいのは前述の通り。食事をしながら重徳は真剣に考えた。ゴブリンが再度湧き出している件をジジイに伝えるべきかどうかを。そして意を決してジジイの部屋にやってきている。



「ジイさん、ゴブリンの件なんだけど」


「ふむ、今日の相手はあまりに歯応えがなさ過ぎて退屈じゃったわい」


 ジジイにとってはゴブリンごとき1体いようが1万体いようが大した問題ではないらしい。本当に呆れたスケールのジジイだと言える。



「それがな、どうやら俺たちが片付けたのに、また湧き出しているらしいんだ」


「左様か、かような弱敵などワシがわざわざ手を下すまでもなかろう。そのうちに消えてなくなるわい」


「いいのか? ゴブリンのせいでダンジョンが閉鎖になっているんだぞ」


「なんじゃと?」


「だから、ゴブリンのせいでダンジョンが閉鎖になって、ひょっとしたら次の土日も中に入れないかもしれないんだ」


「それは真かぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ゴゴゴゴゴと音を立ててジジイの体が巨大化したような錯覚に陥る重徳。どうやらジジイにとってはゴブリンのような弱い魔物がどれだけいようが他人事だが、そのおかげで自分がダンジョンに入れなくなるのは由々しき大問題らしい。このような自分勝手な発想こそが、まさにジジイの生き様ともいえよう。



「重徳よ、明日は学校を休むがよい」


「えっ、またかよ」


 出ました! ジジイの「学校を休め」宣告。確か先日はヤ〇ザの本部に連れていかれた記憶があるが、今回は果たしてどんな目に遭うのかわかったものじゃない。とはいえ重徳もゴブリンには迷惑を被ったひとり。このまま放置も出来かねる。しばし迷ったのちに重徳は…



「わかったよ。明日は学校を休んで朝からゴブリン討伐だ」


「まあこのワシが禍根を根元から断って進ぜるゆえ、大船に乗った気でおるがよかろう」


「それじゃあいつもの時間に出発だからな。門弟たちには俺から伝えておくよ」


 こうして翌日もゴブリン討伐に四條流が乗り出すことが決定する。門弟たちに話をしてみたところ彼らも「ダンジョンに入れないと収入がなくなる」と訴えて前向きな態度。こうして本日と同じメンバーで明日もダンジョンに乗り込むことなる。 







   ◇◇◇◇◇






 翌朝、装備を整えた四條流の一団がダンジョンに向かって出発。気合十分に「今日こそゴブリンどもを根絶やしにしてやる」という表情で約5分の道のりを歩いていく。管理事務所に入ると、カウンター前には自衛隊の小隊が内部の様子を窺いつつあちこちと連絡を取りながら対策に忙殺されている様子が目に入る。もちろんダンジョンに向かう通路には封鎖テープが張られており、誰も入れないように措置が応じられているのは言うまでもない。そんな慌ただしい自衛隊の隊員に…



「ほれ、そこを空けるがよい。ワシらがプッチンプリンをきれいに平らげてくるわい」


「ジイさん、子供のオヤツを奪う気か? プリンじゃなくてゴブリンだぞ」


 ジジイのボケと重徳のツッコミに自衛隊員が思わず脱力。とはいっても彼らとしてもそうやすやすと一般人を通すわけにはいかない。



「現在ダンジョンは封鎖中です。誰も内部には入れません」


「そこをなんとかお願いします。せっかくゴブリンたちを一掃しようとやってきたんですから」


 押し留めようという自衛隊員と重徳の押し問答が続く。そこにやってきたのは顔馴染みの係員さん。



「こちらの皆さんは昨日ダンジョンに突入されて学園生を救助された方々です」


 どうやら生徒救助の話は自衛隊にも伝わっていたよう。すぐに隊長と思しき人物がやってくる。



「ダンジョン対策室に確認をとります。入場許可が出るまで少々お待ちください」


 ということでベンチでしばらく待っていると再び隊長がやってくる。ビシッと姿勢を正して…



「皆様のご活躍は政府のダンジョン対策室としても感謝しているそうです。どうか今回の異変の解決にご協力ください。ただいまから封鎖を解除いたしますので、内部にお入りいただけます」


「最初からそうしておけばよいのにのぅ」


 ひと言多いジジイ。とはいえ無事に許可が下りたので、重徳たちは昨日と同様にゲートをくぐっていく。そのままゴブリンが蠢いている場所に向かうと昨日同様に気弾の二段撃ちでゴブリンたちを削っていく。ただ昨日と違う点を挙げれば、内部には誰も取り残されてはいないので余裕をもって討伐に臨める点だろうか。


 そのまま十字路の手前まで進んでいったらお約束のジジイの出番。超高出力の迷わず成仏波が打ち出されて1階層に満ち溢れていたゴブリンの大半が壊滅状態に。ただしホールの方向にかなりの残存数が確認されたので、ジジイにもう再度軽めの一撃をお見舞いしてもらう。こうして目の届く範囲にはゴブリンの姿は見当たらなくなったのだが…



「うん、確かに森田兄の言う通りだな」


 転移魔法陣の方向から断続的にゴブリンがこちらにやってくる様子が確認できる。およそ30体程度が一度にこちらに向かってきて、20秒程度空けてまた次の一団がやってくるといった、ずっと同じペースでゴブリンの数が増えていく様子が重徳たちの目に入ってくる。



「どうやら転移魔法陣に何か秘密がありそうだな」


 ということでこちらに向かってやってくるゴブリンを成敗しながら転移魔法陣の前まで移動すると、やはりと言うべきか約20秒おきにゴブリンたちが転移魔法陣から姿を現す様子が… その数は一度に30体ほど。1分間に約100体で1時間に600体弱のペースでゴブリンが1階層に運ばれてくる。こんな状況ではいくら退治してもしばらく時間が経過すると再びゴブリンが溢れてくるはず。



「若、これは一体どうなっているんだ?」


 手の平から気弾を飛ばしながら森田兄が話し掛けてくる。



「俺に訊かれてもなぁ~。とにかく原因があるはずだ。転移魔法陣でこちらから乗り込んでやろう」


 重徳の言葉に促されてゴブリンが湧き出る間隙をついて転移魔法陣に入ろうとするが、どのような力が働いているのか不明ながらこちら側からが陣の内部に入り込めないようになっている。どうやら現在転移魔法陣は下層から1階層への一方通行となっているらしい。



「こうなったら歩いて下の階層に行くしかないか」


「若、一体どこまで降りていくんですかい?」


「ゴブリンが湧き出るのは5階層までだ。そこまで行く間に絶対に原因があるはず。特に転移魔法陣を入念に調べる必要がありそうだな」


「さすがは若だぜ。中々冴えているじゃないか」


「お世辞はいいからまずは2階層に向かうぞ」


 ということで一行は2階層へ。しばらく通路を歩いてから階段を下ると、2階層は平和そのもの。どこにもゴブリンが溢れ出そうな気配が見当たらない。



「念には念を入れて転移魔法陣のある場所に行ってみるぞ」


 という重徳の言葉に従って実際に転移魔法陣に足を運ぶものの、特に異常は見当たらない。ただし陣の内部に入るのはやはりダメということらしい。足を踏み入れようとしても謎の力に押し返されてしまう。



「よし、次の階層に行ってみるぞ」


 ということで3階層に向かっていく。しかしここでも特におかしな点は見当たらない。仕方なく一行は4階層へ。同様に転移魔法陣に向かっていくと…



「若、あれは人影か?」


「声を立てるな。気付かれないように気配を消して接近するぞ」


 四條流の修行には当然ながら気配を殺す内容が含まれている。それはもはや忍者に匹敵するほどの見事な気配の消し方。しかも全員が気配を消すスキル持ちときているので、まったく気取られることなく容易に人影が集まっている場所に接近する。


 そして重徳の目に映る人影ではあるが、確かにその集団は人間のようにも見える。だがパッと見でまず気付くのはその風体。現代日本人とは大きく異なって革鎧に身を包む兵士と思しき集団と、彼らに守られながら魔力を用いて何らかの儀式めいた所作を行う魔法使いと思しき人物が3名確認できる。


 さらに全体を指揮しているのが中世貴族風の衣装をまとった怪しげな人影。


 これだけでも相当怪しいところだが、三人の魔法使いが訳の分からない言語で何か呪文のようなフレーズを詠唱するたびに集団のど真ん中に置かれた巨大な岩のような物体からゴブリンがバラバラと生み出されていく。


 どうやらこの集団が今回のゴブリンの異常発生の原因というのは間違いなさそう。では一体何の目的でこのようなバカげた行為を行っているのか… 重徳の頭の中にこのような疑問が浮かぶのは当然だろう。


 だがその疑問はひとまず横に置いて、重徳はリュックから携帯を取り出す。先日公園に出掛けた際に歩美に教えてもらったカメラ機能を起動すると、怪しい集団がゴブリンを生み出している光景にピントを合わせてシャッターを切る。


 ピロピロリ~ン


 ダンジョン通路に響く思わぬ電子音。シャッターを切ると音が鳴る仕様まで重徳には考える余裕がなかった模様。当然…



「なんの物音だ?」


 人影たちにもシャッター音が聞こえたらしく、全員でキョロキョロ周囲を見回している。そして…



「おい、あんな近くに人族がいるぞ」


「なんだと! この場を見られるのはマズい。証拠が残らないように消せ」


 どうやらあちらさんは結構好戦的な模様。重徳たちの事情も聞かずに一斉に腰の剣を引き抜いてこちらへとやってくる。



「重徳よ、そなたたちの力で何とかしてみるがよい」


 ジジイは両手を組んだまままったく動こうとはしない。どうやらこんな下っ端たちは端から相手にする気はなさそう。ということで重徳と門弟はバールと鉄パイプを手にして応戦に転じる。


 ガキン、キン、ガキッ、ドサッ、ドボッ、ボコッ


 兵士の半分程度が重徳たちに向かってきているが、ただでさえ剣を持った相手を想定して修行を積んでいる四條流、その中でもジジイのダンジョン漫遊に付き合わされてレベルが天井知らずに上昇している集団。多少相手の人数が多かろうともまったく苦にならない。重徳たちに剣を向けたことを後悔するレベルであっという間に叩き伏せられている。


 襲い掛かってきた兵士全員が瞬殺レベルで床に転がされると、重徳はようやくこの集団を間近で観察可能に。人間に近いとはいえ、よくよく見るとなんだか異なる点も見受けられる。まずは彼らの皮膚の色… 地球に現存するどの人種とも異なって青みがかっているのが特徴。まるでデスラ〇総統のよう。それから耳が細長く伸びて先が尖っている。ロリ長が愛してやまないエルフとも似た特徴だが、ヤツは幼女限定。こんな男たちには興味を示さないだろう。そして人間と最も大きく異なっている点として最後に挙げられるのが、額や頭頂部から短く突き出ている角。一本角もあれば二本角もある。この辺は個人差なのだろう。


 これらの身体的な特徴からすると導き出される結論はたったひとつ。



「コイツらコスプレか?」


 重徳の珍回答に門弟たちが全員引っ繰り返っている。何を隠そう重徳は異世界モノの漫画や小説、アニメ、ゲームに至るまで一切目にしたことがない。エルフの件に関してもロリ長から懇切丁寧に説明されてゲームに登場してくる画像などを見せられた末にようやく理解するというアナログな脳ミソを所持している。



「若、どう見てもこいつらは魔族でしょう」


「魔族? なんだそりゃ? 悪魔の親戚か?」


「たぶんダンジョンで繋がっている異世界からこっちにやってきたんだと思います」


「そうか、じゃあ記念にもう一枚」


 床に転がされている魔族を次々に写メる重徳。携帯の機能を覚えたばかりでちょうど使いたいお年頃らしい。するとそこに


 ヒューン ヒューン


 魔族の魔法使いが放ったファイアーアローが宙を飛んでくる。



「ふん!」


 だがジジイが軽く手の平を前に押し出しただけで、その風圧に負けてファイアーアローは散り散りに消え去っていく。何度見てもこのジジイのヤルこと為すこと桁外れすぎ。



「重徳よ、こやつらは魔族と申したか?」


「なんかそうらしいな」


「この世界の人間ではないと申したな」


「ああ、俺も詳しくはわからないけど、どうやら別の世界から来たみたいだ」


「左様か、ならば容赦しなくともよいな。楽しみにしておっただんじょんが危うくダメになりそうで、ワシも少々業腹でのぅ」


「出来ればほんのちょっとだけ慈悲を掛けてやってもらいたい」


「かような情けは無用。よろしい、ワシがきれいさっぱり消し去るわい」


 ということでジジイがズイッと前に出る。もうこの時点で魔族の命など尽きたも同然。


 立て続けに飛んでくる魔法をすべて手の平から発する風圧で消し去りながらジジイが魔族の前に立つ。



「せっかくのワシの楽しみを邪魔しおって。その命をもってワシに償うがよい」


 魔族にジジイの言葉は通じていないが、どうやら上から目線で偉そうなセリフを吐かれたのは理解したよう。指揮官と思しき貴族風の格好をした男が何やら吠えつつ命令を下すと、残った兵士が一斉にジジイに剣を振りかざして迫ってくる。



「甘いわぁぁぁ!」


 だがジジイにとって下っ端の兵士などゴブリンと大差ない敵という認識。一事が万事この調子なので、相手になるほうが気の毒で仕方がない。


 ということで兵士全員がジジイの気弾の餌食となって手足がバラバラになって吹き飛んでいく。さらにジジイの視線は何かを詠唱する魔法使いに向けられる。その目がギラリと光ったかと思ったら、次の瞬間ジジイの体は魔法使いたちが手の届く場所にいつの間にか移動。そのままアダマンタイトの籠手に包まれたコブシを叩き込む。


 グエェェェェ、ギャァァァァ、アバァァァァァ


 三者三様の悲鳴を上げながら魔法使いたちの体は通路の壁に激突してそのまま事切れたよう。そしてジジイはただひとり残った指揮官に顔を振り向ける。あまりのジジイの暴れっぷりに恐怖を抱いたのか、魔族の指揮官は真っ青な表情。まあ、元々青いのだが… 腰に佩いた剣を抜くのも忘れて呆然とジジイを見つめている。



「ガハハハハハ、貴様で最後じゃ」


 ジジイの右手が魔族の首元を鷲掴み。そのまま壁に向かって放り投げると、グシャッという嫌な音を立てて五体がひしゃげている。とっても無残な死に様といえよう。さすがに誰もがこのような死に方はしたくない。


 ということで魔族がすっかり排除される。もちろん彼らもダンジョンの掟には逆らえずにその死体は塵となって消え去る。残されたのは人の背丈ほどもある岩。ところがこの岩は元々の丸い形が真っ二つに断ち割られており、空洞状の内部には紫水晶の結晶がビッシリと生えている。時折お金持ちのお宅の玄関に飾ってある水晶の飾り物をもっと巨大化した形状。どうやらこの岩、内部に膨大な魔力を蓄えた魔石らしい。例の無限湧き部屋に置いてあった魔石よりも何倍も大きなところからして、内包する魔力量も相当なモノだろう。この岩に蓄えられた魔力を原料にして魔族たちは次々にゴブリンを生み出しては、転移魔法陣を使って1階層に送り込んでいたらしい。


 目的の究明はこの場ではできないし、ましてや重徳たちがその役目を負う必要もない。ということで魔族を片付けた重徳一行はドロップアイテムの代わりに巨大な魔石を回収して試しに転移魔法陣に向かう。予想通り魔族がいなくなった途端に転移魔法陣は元通りに使用が可能となったよう。


 こうしてダンジョンの異変をきれいに解決して、四條流の一行は1階層に戻っていくのであった。



   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ゴブリン異常発生の原因は魔族の仕業でした。とはいえ楽しみを邪魔されてご立腹のジジイにすっかり討伐されて一件落着。次回は舞台が学園に戻って…


この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


「面白い」「続きが早く読みたい」「主人公を差し置いてジジイがヤバすぎる」


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