第50話 四條流救出作戦


 ダンジョン内部の様子を確認した重徳は管理事務所に戻って一階層の地図を広げる。内心では早く歩美を助けたいと焦るものの、無理やり頭を落ち着かせて今後自分が取るべき方向性を確認している。もちろん戦いの前には絶対に冷静さを欠くなという四條流の教えが体の芯に染みついているおかげなのは間違いない。


 さて重徳が広げた1階層の地図ではあるが、ゲートから真っ直ぐ伸びた通路が約80メートル。その中間点が「世界の境目」と呼ばれる空気感がガラッと変化するポイントで、今のところゴブリンたちはここを超えてこちらに這い出してくる気配はなさそう。


 そしてこの通路をまっすぐ進むと最初の十字路にぶつかる。そのまま真っ直ぐ進んでいくと2階層に向かう階段への最短コースである中央通路。左に進むと約200メートル先にホールが存在し、右に進むと400メートル先に転移魔法陣という位置関係。そしてホールと転移魔法陣がある場所からは、中央通路と並行して2階層に向かう階段方面への通路が延びている。もちろんこれらの脇道は中央通路と横道で幾重にも繋がっているのは言うまでもない。


 係員から状況を聞き出して地図上の位置関係を把握した結果、歩美たちはホールに留まっている公算が高い。ゴブリンに包囲されている生徒を救出するためには少なくともこの十字路まで道を切り開いて進み、周辺通路にひしめいているゴブリンどもを残らず片付けてから新たに発生してくるであろう援軍のゴブリンを押し留めつつホールに突入するしかなさそう。当然ホールにも多数のゴブリンが待ち構えているだろうから、もちろんこれらも殲滅の対象。そこまでして安全を確保しつつ総勢80名にも及ぶ生徒たちを退避させるというなかなか困難なミッション。一度でもジジイの力の使いどころを間違ったり、逆に慎重になって時間がかかりすぎても救助できる確率がグッと下がってしまいそう。


 それよりも重徳の心を押し潰しそうになっているのは歩美の安否。一刻も早く彼女の無事な顔を見たいという思いに駆られてはやる気持ちを押さえつつジジイたちの到着を待っている。そして5分ほどすると…



「重徳、来てやったぞい」


 いかにも重徳に頼まれてやってきたと言いたげなジジイが登場。もちろん門弟たちも一緒なのは心強いかぎり。ジジイという大量破壊兵器だけに頼るのではなくて、門弟たちと協力して安全マージンを確保しつつ最短時間で歩美の元に辿り着く計算が現実的になりそう。重徳は取り敢えず簡単な現状の説明から始める。



「内部にウチの学院の生徒が取り残されているんだ。人の命が懸かっているから慎重に行動してもらいたい。ジイさんはくれぐれも勝手な真似をしないでほしい」


「わかったぞい。そなたに任せるゆえに早く出発しようではないか」


 見るからにジジイの表情からは「早く暴れさせろ」という感情が伝わってくる。かといって今回だけはこのジジイの好きなようにはさせられないのが重徳にとっては悩みどころ。常にしっかりと手綱を握っておかないととんでもないことを仕出かしかねない。


 ということで係員の制止など無視無視。七人が一列になってゲートをくぐりダンジョン内部に入り込んでいく。そして〔世界の境目〕に到着すると、先程重徳が目撃した時と同じ光景が広がっている。さすがにこれだけ大量のゴブリンが密集している状況に門弟たちもドン引き。


 例えるのならコミケの開場1分前に会場整理で入場者の前に立つ警備員の気持ちに近いかもしれない。しかもビッグサイトの入場者同様にゴブリンどもが殺気立っているのは一緒。ゲートが開くと同時に「走らないでください」という呼びかけをまるッと無視してお目当てのブースに殺到しようという気迫ももちろんほぼ同様と思ってもらっていいだろう。救いがあるとしたらゴブリンたちは境界線からこちらには出てこようとしない点だろうか。それがいつまで続くかという保証はどこにもないのだが…


 ここでジジイが…



「重徳よ、これがマロニーちゃんか?」


「鍋用の春雨じゃないぞ。ひと文字も共通する音がないだろうが。ジイさん、この大量に蠢いている連中がゴブリンだ」


「左様か、見るからに弱々しい魔物じゃな」


「確かに弱いんだけど、これだけの数が集まっているのが厄介なんだよ」


「バカを申すな。ワシが一撃食らわせればかような弱敵などどうにでもなるわい」


「管理事務所を吹っ飛ばす気か? ここでジイさんが一撃なんて暴挙に出たら爆風で事務所の建物が跡形もなくなるぞ。ジイさんの出番はもう少し後だから、しばらく待っていてくれ」


「つまらんのぅ」


 ということで何とかジジイには我慢してもらって、重徳と門弟たちが三人一組を作る。作戦的には長篠の戦いの織田軍からヒントを得て重徳が思いついたモノ。火縄銃ならぬ、気弾の二段撃ちを試みるつもりのよう。



「いくぞ」


 重徳と門弟2名が気弾を準備して撃ち出していく。そのまま素早く下がると、今度は後方で射出の準備を整えた3名が前に出て気弾を発射。すぐに入れ替わって重徳たちが前に出て気弾を発射… これを延々と繰り返していく。常に3発の気弾がゴブリンたちの最前線にぶつかって小爆発を繰り返す地獄の光景が生み出されている。


 そのまま通路いっぱいにぎゅうぎゅう詰めになっているゴブリンを前から順番に削りつつ徐々に前進していく重徳たち。重徳や門弟が放つ気弾の爆発の威力で一度に40~50体のゴブリンが吹き飛ばされて命を落とすが、その死体を踏み越えて後続がすぐに前進してくる。攻撃の威力で勝る重徳たちと数で押し込もうとするゴブリン軍団のせめぎ合いが続くが、5分間に10メートルほどの遅々としたペースではあるものの四條流の意地で重徳たちは前進していく。



「左翼、弾幕が薄いぞ」


「了解、強めのヤツをお見舞いしてやる」


 どこかで聞いたお馴染みのやり取りを繰り返しながら、攻撃開始から30分以上を費やして最初の十字路が見える地点まで到達。ここまできたらさすがに事務所に被害が及ぶ懸念はもうない。ついにジジイの登場と相成る。



「ジイさん、このまま真っ直ぐの方向に思いっきりぶっ放してくれ。出来ればゴブリンたちの頭上を掠めるようなコースで頼む」


「それは中々難しい注文じゃのぅ。まあやってみるか」


 満を持して先頭に立つジジイ。もちろん重徳と門弟は思いっきり後方に退避している。そして気合い十分なジジイが腰をやや落として両手に大量の気を集め始めて、その直後…



「迷わず成仏波ぁぁぁぁぁ!」


 ゴォォォォォォォォォ


 せっかく重徳が「ゴブリンの頭上を狙え」とリクエストしたのだが、まったくの無駄だった模様。ジジイの放った迷わず成仏波はその強大な威力が通路には収まりきらず、手を離れた瞬間から通路いっぱいに広がって密集しているゴブリンをあっという間に飲み込んでいく。その恐るべき勢いのまま十字路に到達するとそのまま直進してしばらくすると遠くにある通路の壁にぶち当たって大音響と共にとんでもない威力の衝撃波を撒き散らす。その衝撃波は左右に広がってしばらくすると重徳たちが退避している十字路に舞い戻ってくる勢い。視界が晴れると、そこには見渡す限りのゴブリンの残骸が床に倒れるだけの死の光景が広がる。



「ジイさん、相変わらずとんでもない威力だな。ともあれゴブリンはかなり片付いたみたいだ」


「ホホホ、ワシに掛かればこんなモノよ」


「よし、この隙に十字路まで前進するぞ」


 ジジイのドヤ顔をまるッと無視して、重徳と門弟は大急ぎで前進して十字路を確保。どうやらジジイの迷わず成仏波の一部は左右の通路にいたゴブリンたちにも大きな被害をもたらしたようで十字路周辺に生きているゴブリンは見当たらない。



「森田兄弟は転移魔法陣方向からやってくるゴブリンを押し留めてくれ。ジイさんは中央通路を塞いでほしい。あとのメンバーは俺と一緒にホールに突入するぞ」


「オーケーだぜ、若。こっちは押さえておくから先に行ってくれ」


「若、早く生徒さんたちを助けだしましょうぜ」


 こうして引き続き十字路を確保する組とホール突入組に分かれて、重徳たちの救出作戦はなおも継続していく。






   ◇◇◇◇◇






 依然としてホールに取り残されている歩美たちは危機的状況が続いている。歩美は結界を展開した時からかれこれ1時間以上印を結んで立ったまま一心不乱に霊力を流し続けている。最初のうちは全員を勇気づけようと返事などを返していたものの、今となっては疲労と心許なくなってきた霊力と相まって言葉を発する余裕もなさそう。それだけではなくて、額には珠のような汗が滲み顔色は悪くなる一方。この歩美の様子にいち早く気付いたのは、一番近くで彼女を見守っていた彩夏。



「歩美、大丈夫か?」


「ちょっと魔力がきつくて…」


 今の歩美はこれだけ口を動かすのが精一杯。だが歩美が置かれている苦しい状況は彩夏に確実に伝わる。



「歩美ひとりに任せっきりで申し訳なかった。今の私にはこれしかできないが、どうか受け取ってもらいたい」


 彩夏はそっと歩美の背後に回ると、時折フラつく体を支えるように抱き留める。そして…



「これが私の聖女としてのスキルだ。魔力譲渡」


 彩夏が声を発すると同時に歩美の体内に彼女の魔力が流れ込んでくる。おそらくこのスキルは聖女にとっての最後の切り札に相当するであろう。すなわち味方がほぼ全滅状態に陥った際、自分の中に残っている魔力をすべて攻撃陣に譲り渡して事後を託すという言ってみれば自爆にも等しいスキル。もちろんこのスキルを用いたとしても即座に命を失うわけではないが、戦闘不能に陥るのは目に見えている。



「彩夏ちゃん、なんてことを!」


 歩美が振り返って驚いた表情を向けるが、彩夏はむしろ満足げな様子。



「歩美、私はずっと聖女になったことを恨んでいた。でも今こそ自分が聖女になった意味がわかった気がする。後は頼んだ。みんなを助けて… く… れ…」


 そのまま彩夏はその場に崩れ落ちていく。体内の魔力を余すことなく歩美に渡したせいで意識を失ったよう。だが目を閉じているその表情は彼女が残した言葉通り満足げ。



「彩夏ちゃんの気持ちは絶対に無駄にしません」


 決心した表情で再び印に力を込める歩美。彩夏のおかげで一時的に魔力切れの危機から脱したとはいえ、現状では保ってあと10分程度。彩夏の魔力程度では一時しのぎに過ぎない。だがここでビックリする出来事がおきる。



「私の魔力も差し上げます。どうかあなたの力で皆さんを守ってください」


 彩夏に続いて歩美の背後に立ったのは奈良康代。確か彼女はこれまでの歩美に対する態度がヒドかったし、女子の間で派閥づくりに最も熱心な生徒だったはず。だが今の康代の表情はまったく違っている。身を挺してこの場の全員を守ろうとする歩美と自分を犠牲にして魔力を歩美に託した彩夏の姿が、今まで自分の常識に凝り固まっていた康代の心を動かしている。彼女は誰から何か言われているわけでもなく、自らの意思でこうして歩美の背後に立っている。



「鴨川さん、今までヒドイ態度をとってしまって申し訳ありませんでした。これは私のお詫びと懺悔の気持ちです。どうか受け取ってください」


 彩夏に続いて康代の魔力が歩美の体内に流れ込んでくる。おかげで歩美の霊力タンクが3分の1ほど埋まったよう。康代の行動に触発されたように、クラスの女子たちが挙って歩美の後ろに並びだす。幸いにも彼女たちは午前中の実習で少々魔力を消費しただけなので、全員合せると結構な量になる。



「皆さん、ありがとうございます」


 たった一言を苦労しながらも口にする歩美。だがその表情は先ほどのような苦悶ではなくてむしろ喜びに溢れている。1年生の聖女たちにしたら、もちろん自分が助かりたいという気持ちがあったのだろう。だがこれまで無視を続けてきた経緯をかなぐり捨てて歩美に自発的に協力している… これは朝方先輩が口にした「命を懸けた戦いの中では聖女だろうが勇者だろうが一般人だろうが、そんなことはどうでもよくなる」という例の話が実証された成果のように感じている。


 あとは何とかこの状況を保って助けを待つだけ。



「ノリ君がきっと助けに来てくれるはず。お願い、ノリ君…」


 歩美が小さく呟いたその瞬間…


 ゴォォォォォォォォォ


 不気味な音が通路の向こう側から聞こえてくる。そしてその直後…


 ドガガガガガガガガガガーーーーン!


 目が眩むほどの閃光と頭が割れると錯覚するほどの轟音が1階層全体に響き渡る。歩美は本能的に結界に込める魔力を増やして衝撃に備えると、案の定どこからともなくやってきた衝撃波が結界を揺るがす。



「敵かの攻撃か?!」


「わからない。ひょっとしたら味方かもしれない」


 結界内部は原因不明の大爆発にちょっとしたパニック状態。とはいえ歩美のおかげで結界自体は無事なので、生徒たちはすぐに落ち着きを取り戻していく。



「ひとまずはこのまま様子を見るしかなさそうだ。再度あのような爆発が起きるとも限らないから注意しろ」


 近藤が声を掛けると、まだ意識が残っている生徒は首を縦に振っている。そんな中、歩美の耳には入り口の方向から小さな爆発音が伝わってくる。その音にさらに注意を向けると、徐々に自分たちがいる場所に近づいてきているような気配が。


 歩美が必死に目を凝らすと、一瞬だけゴブリンを相手に八面六臂の戦いぶりを披露しつつ徐々にこちらに近づいてくる重徳の姿が目に飛び込んでくる。歩美は居ても立ってもいられずにその場で大声を上げる。



「ノリ君、ここです! 私たちは何とか無事です」


「鴨川、急にどうしたんだ?」


 急に大声を張り上げた歩美を不審に思ったのか、近藤が眉間にシワを寄せながら問い掛けてくる。



「救援です。すぐそこまできています。皆さん、あと一息ですから頑張りましょう」


「なんだって!」


「本当に救援が来てくれたのか?!」


 昼休憩の終わりの時分から今まで2時間以上、困難な状況に包まれて果たして無事に戻れるのかさえ定かではなかった生徒たちにとっては待ちに待った朗報に違いない。歩美の言葉で沈み込みがちだった結界内部のムードが一気に明るくなる。



「いいか、あとひと踏ん張りだ! だがダンジョンを出るまでは絶対に気を抜くなよ!」


「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」


 近藤の檄に全員の声が揃う。ようやく希望は見えてきたのもあって生徒たちは完全に士気を取り戻している模様。



「鴨川、負担を掛けるがもうしばらく頼んだ」


「はい」


 歩美は短く答えると両手の印に今一度力を込めるのであった。






   ◇◇◇◇◇






 ホールに突入した重徳と三人の門弟は次々に襲い掛かってくるゴブリンを相手に気弾を浴びせバールや鉄パイプを振りかざして蹴散らしながら片っ端から亡き者に変えていく。レベル100に近い人間が手を下せばゴブリンごときはまさに凱歌一蹴。とはいえこのホール全体が見渡す限りゴブリンで埋め尽くされている。その数はざっと見積もっても3千体は下らないだろう。


 だが重徳や門弟は絶対に折れない、メゲない、ヘコたれない。四條流とはそんな甘っちょろい修行で身につく武術ではない。単身で数千の敵に突撃することすら想定した上での人殺しに特化した戦闘術が今この場で実践されている。


 ホールに突入して20分以上が経過、その間も絶え間なくゴブリンを蹴散らしていると重徳の目に異なった光景が飛び込んでくる。それはまさにここまで重徳が探し求めていたモノ。すなわち歩美が創り上げた結界に他ならない。


 重徳の口から思わず声が迸る。



「歩美、無事か! もうちょっと辛抱してくれ」


 しばらくすると離れた場所から応えが…



「ノリ君、ここにいます。全員無事です!」


 今まで重徳の心の中に澱のように淀んでいた歩美の安否がようやく確認される。心のトゲが抜け落ちた重徳は俄然パワーアップ。これまで以上に〔ゴブリン叩き潰すマン〕と化して手当たり次第に殲滅する。もはやゴブリンが気の毒になってくる程の圧巻のその戦いは、結界の内部からも見通せる距離まで迫る。



「なんだ、あの戦いは?!」


「ゴブリンが軽々と吹き飛ぶなんて、通常の人間の戦い方じゃないぞ!」


「一体どこの誰なんだ?」


「いや、誰でもいい。こうして駆け付けてくれたんだったら、地獄の鬼でも感謝するぜ」


 重徳の暴れっぷりを目の前で見せつけられた先輩方は目を白黒させている模様。1年生聖女はあまりに刺激が強すぎるその光景に声も出せない有様。


 さらに重徳が接近してくると、その戦いの様相がよりハッキリとわかってくる。近付いてきたゴブリンを右手のバールで叩き伏せては左手から気弾を打ち出して数十体まとめて消し去り、さらに反対側から接近してきた連中を左足の回し蹴りでまとめて払いのける。その間にも左手は休むことなく気弾を飛ばしてやや離れた場所にいるゴブリンに容赦なく死の鉄槌を下す。


 しかもホール内でゴブリンを討伐しているのはどうやら重徳だけではないよう。同じような影があと三人確認できる。もちろん重徳と同様に一片の容赦もなくゴブリンに平等な死を分け与えている。



「一体どこの集団なんだ…」


 そのあまりに苛烈で激烈な戦いぶりに、近藤の口から思わず疑問の声が漏れ出している。


 その間にも驚くべき速度でゴブリンの掃討が進んでいく。どうやら重徳が結界のより近くを、門弟たちはその外周部を担当しているよう。重徳の活躍を目の当たりにした歩美の頬には一筋の涙が流れ落ちている。



「ノリ君、本当にいつも無茶ばかりするんですから…」


 セリフはいつもの重徳に対するお小言だが、心の中は感謝の気持ちでいっぱい。なぜ重徳が助けに来ると信じていたのか自分でもわからないが、死に直面していた自分を助けるために颯爽と登場したその姿はあたかも白馬の王子様のように映っているのかもしれない。


 そしてついにホールの内部には1体のゴブリンも見当たらなくなる。



「歩美、もう大丈夫だ。結界を解いてくれ」


「はい、ノリ君」


 重徳の言葉に従って歩美が結界を解除して、中から転がり出てくるように重徳に飛びついてくる。



「歩美、よく頑張ったな」


「ノリ君が助けに来てくれると信じていました」


 そう返事をするなり、彼女の体から力が抜けてその場にへたり込む。おそらく80人の命がその両肩に懸かっているという緊張感や責任感で歩美自身相当に精神的な重圧を感じていたのだろう。それが重徳の顔を見た途端に一気に疲労となって彼女に襲い掛かってきたよう。重徳は黙って歩美の体に手を差し伸べてお姫様抱っこで抱え上げる。そのまま全員に向かって…



「今なら安全に外に出られます。動ける人は動けない人に肩を貸してゲートに向かってください」


「救援に深く感謝する。全員今のうちに撤収するぞ!」


 まだ勇者全員と戦士たちは十分に動ける状態なので、フラついている先輩聖女や意識を失った1年生を抱えながら一列になってゲートへと向かう。


 退避の際重徳は門弟たちに指示。



「俺たちがいなくなってから1分後に撤収してくれ。十字路にいるジイさんと森田兄弟にも声を掛けて一緒にゲートの外に出るんだ」


「若、しんがりは任せてくれよ」


 こうして午後4時近くになってようやく生徒たちの救出が完了して、全員がゲートの外に出てくる。救助された面々はこの奇跡のような出来事にホッと胸を撫で下ろすと同時に肩を叩き合いながら無事を喜び合うのであった。



   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ようやく重徳の救援が間に合った歩美たち。ダンジョンの外に無事に出ることが出来ました。へたり込んだ歩美を抱える重徳、なんだか二人の関係が進展しそうな予感が…


この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


「面白い」「続きが早く読みたい」「ジジイの働きが物足りない」


などと感じていただいた方は、是非とも☆☆☆での評価やフォロー、応援コメントへのご協力をお願いします! 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る