第42話 悪の勇者

 

 日曜日の夜も更けて、現在重徳はベッドに寝転んで今日一日を振り返っている。


(はぁ~、今日は頭が追い付かないくらいに色々あったな。レベルがたった一日で86まで上昇するなんて想定外にも程があるよ。明日学園で下手に誰かの肩を叩いただけで吹き飛ばしてしまいそうだよな。力の加減に注意しないと大変なことになるぞ)


 重徳の懸念はもっともだろう。体力の数値だけでも10倍になっているのだから今までとは基本的なパワーが桁違い。本当に注意しないと簡単に人間を殺しかねない… というわけではなく、日常生活でフルパワーで過ごしている人間なんていないように普段は無意識レベルで力のセーブが働いているのでそこまで心配する必要もない。まあそれでも注意するに越したことはないだろう。


 するとそこに携帯がメールを受信する音が耳に届く。開いてみると差出人はもちろん…


〔ノリ君、今日はずっとお稽古に励んでいたのですか? 私は春の例大祭で披露する奉納の舞を練習していました。しばらく踊っていなかったせいで細かい動きを思い出すのが大変でした。あっ、そうでした。土曜日はとっても楽しかったです。いつかまたノリ君と一緒にお出掛けしないなぁ~。明日学校で会えるのを楽しみにしています。それではおやすみなさい。  追伸 ネコちゃんはとっても元気です〕


 激動の一日を癒すかのごとくに絶妙なタイミングでやってきた歩美からのメール。重徳はなんだか心が洗われるような心地に浸っている。


(いやいや、歩美さんだけじゃなくって俺だって土曜日は本当に楽しかったよ。あんな過ごし方があるなんて今まで知ろうともしなかったし… 歩美さんのおかげでなんだか世界が広がったような気がしてくるなぁ~。おっと、自分の考えに浸りきってる場合じゃない。すぐに返信しないと)


 ということでいつものような箇条書きのメールをなんとか捻り出して返信する重徳。毎度ながらあまりの文才のなさに自分でも目を覆いたくなるが、これ以上の文章を作り出すスキルはない。ということでなんとか返信を終えて明日に備えて休むのであった。






   ◇◇◇◇◇






 翌朝、重徳が朝稽古を終えてシャワーを浴びてから茶の間にやってくると、普段はこの時間早朝の散歩に出ているジジイが珍しくちゃぶ台の前で湯呑を手にしている。妙に意味ありげな視線を送ってくるなと心の中で考えている重徳にジジイは…



「重徳よ、今日はだんじょんにはいかんのか?」


「なんだよ、すっかり味をシメているな。まったくこの年寄りはちょっとくらいは大人しくしていろよ」


「ワシを年寄り扱いするでない。現に昨日は大活躍じゃったろう」


「活躍のレベルが圧倒的過ぎて呆れたよ。それよりも平日は学校があるんだから、ダンジョンに行くのは放課後だぞ」


「なんじゃと! 学校など一日くらいサボればよかろうて。ワシは今日もだんじょんに行けるものと思うて朝の4時から目を覚ましておったのだぞ」


「サボれるはずないだろう。それから放課後のダンジョンはカレンと行くからな」


「ワシひとりくらい加わってもよかろう」


「だが断る。ジイさんは道場があるだろう。しっかりと弟子の面倒を見ないとダメだ」


「つまらんのぅ」


「次の土日まで待つんだな。間違ってもひとりで出掛けるんじゃないぞ。俺が案内しないと大変なことが起きそうな予感がするからな」


「そうか、ひとりで出掛けるという手があったか」


「婆さんに言いつけるぞ。道場をほっぽらかしてダンジョンに行っているなんてバレたら二度と口をきいてもらえないからな」


「むむ、それは困る。やむを得まい。そなたの体が空くまでは自重しよう」


 ワガママジジイにしては珍しく聞き分けがよろしい。やはり祖母の名前を出したのが効果てき面だったよう。この世界で唯一頭が上がらないのは祖母という、このジジイにしても実は長年連れ添った奥方の尻に敷かれている状態。


 ということでダンジョンに行きたがるジジイの頼みを断った重徳はいつも通りに朝食を摂ってから学園に向かう。これまたいつものように大急ぎで教室に入っていくと…



「ノリ君、おはようございます」


「歩美、おはよう」


「夕べのメールとっても嬉しかったです。また一緒にお出掛けしましょうね」


「もちろんだよ。どこか楽しそうな場所を探しておくから」


 重徳にしては珍しく真っ当な申し出をしている。肝心の行き先がダンジョンとかでなければいいのだが…



「それからノリ君、今日のお昼休みに一緒に散歩に付き合ってもらえませんか? 土曜日に二人で歩いたのがとっても楽しすぎて、またあんな時間を味わいたくなっちゃいました」


「もちろんオーケーだよ。それじゃあ昼休みに散歩しながらゆっくり話をしようか」


「はい、すごく楽しみです」


「あっ、担任が来たからまたあとで」


 こうして二人だけの約束を交わすと慌ただしく自分の席に戻っていく。その後すぐに〔絶対に重徳と目を合わせないマン〕になったクラス担任が教壇に立って朝のホームルームが始まるのだった。






   ◇◇◇◇◇






 午前中は実技実習の時間で、いつものメンバーで訓練をする重徳。本日は基礎訓練を終えると梓を相手にして剣の撃ち合いをしている。だが先週と何かが違う。重徳の中であれほど重たく感じた梓の剣が、今日は難なく払いのけられるくらいに手応えが物足りなく感じている。



「四條、なんだか急に貴様の剣が重たくなっているぞ。受けるだけで精一杯だ。何か反則技でも使っているんじゃないのか?」


「二宮さん、反則技なんてとんでもないです。極々真っ当に剣の腕を磨いただけですよ」


 梓から指摘されて内心冷や汗をかいている重徳。相当に手加減していたはずなのにまだ加減の度合いが足りなかったらしい。おかげで梓にあらぬ容疑を掛けられている。仕方なのでさらに力を緩めて打ち合うことしばし…



「なんだ、最初に感じた剣の圧力が急になくなったな。さては四條、お前はコッソリ身体強化を使っていたな」


 どうやら梓は差し障りのない方向に勘違いしてくれているよう。もちろんこの絶好の機会に重徳がのらないはずがない。



「いや~、バレちゃいましたか。いつもコテンパンにされているので、今日はちょっとでも頑張ろうと思ってコッソリ強化していたんですよ~」


「相変わらずセコいヤツめ。もっと基本的な部分の力を磨かなければ真の意味で強くはなれないぞ。小手先のスキルで何とかしようなどとは考えないことだな」


(いやいや、二宮さんが仰る「真の力」とやらが爆上がりしすぎて加減に手間取っているところなんですよ)


 急激なレベル上昇に戸惑っている胸の内を抱えてはいても、間違っても口には出せない。そもそも今この場で「レベル86です」と告げたところで誰も信じはしないだろう。ということで重徳は…



「デスヨネ~」(棒)


 などと挙動不審な受け答えをしながらも、時には梓の剣にブッ叩かれて痛がるフリなど織り交ぜつつ何とかやり過ごす。このような感じで午前中は何事もなく過ぎていく。


 昼食の時間になって学生食堂で食事を終えて五人がまとまって外に出ると、重徳と歩美が教室とは反対方向に歩き始める。これを見咎めた梓が…



「歩美、教室は反対方向だぞ」


「あ、梓ちゃん、ちょっと食べ過ぎたみたいなので歩きたいなと思いまして…」


 梓に呼び止められて苦しい言い訳を始める歩美。どうやら〔黙ってコッソリ二人っきりになろう作戦〕は失敗に終わった模様。女子二人がこんな遣り取りをしている間に、何かに気が付いた義人はニマニマした表情を浮かべて重徳に近づいてくる。



「師匠、相変わらずお熱いようで羨ましいッス」


「義人、それ以上余計なセリフを口走ったら下の毛を全部引っこ抜いてやるぞ」


 義人は先日自主的にボウズにした髪の毛が全然伸び切っていない。髪の毛が抜けない以上は下の毛を引っこ抜く宣言の重徳に義人はかなりビビった表情。



「小学生みたいになりたくないッス。何も言わないッス」


 どうやら強引に義人の口を封じられたようでひと安心の重徳。あとは梓をどうするかという問題が残っているが、ここで助け舟を出す人物が…



「二宮さん、よかったら教室で午前中の義人君の剣の技術について細かい分析をしてみないかい? 二宮さんの意見も是非とも取り入れたいんだ。義人君もそうだよね」


「もちろんッス」


 割って入ったのはもちろんロリ長。こういう時に実に助けになる重徳にとっては大変ありがたい存在といえよう。しかも重徳に向かってコッソリとサムズアップをしている。中々の男前ぶりを見せているが、一皮剥けば中身は変態ロリコン野郎なのはこの際ナイショ。


 

「そうか、仕方がないな。歩美、先に教室に行っているぞ。それから四條は変態セクハラ野郎だから気を付けるんだぞ」


「ノリ君はそんな人じゃありません。とっても優しくて頼りになる人です」


 似たような環境で育ってきた幼馴染のはずだが、どうしてこうなった? と突っ込まれても申し開きが出来ないくらいに、梓と歩美の重徳に対する見解が180度真逆を向いている。というか梓は歩美の重徳に対する思いに関してあまりにも鈍感が過ぎるのではなかろうか。ごく普通の感性を持ち合せている女子なら、これだけラブラブ光線を撃ちまくっている歩美の想いにいい加減気付いてもよさそうなモノ。だが何を隠そう歩美以上に恋愛事情に関して奥手な梓には、幼馴染の心に秘めた想いに考えが行きつかないらしい。


 ともあれ何とか面倒な追及を振り切った重徳と歩美は、ロリ長と義人にドナドナされていく梓の後ろ姿を見送っている。



「はぁ~… 一時はどうなるかと思った」


「梓ちゃんがあんなふうに絡んでくるとは思いませんでした」


 特段悪いことをしているわけではないのだが、梓に対する一抹の後ろめたさを感じながら重徳と歩美は教室とは逆方向似歩き出す。先に話を切り出したのは歩美のほう。



「ノリ君、私には土曜日の公園のお散歩が夢を見ているようで本当に楽しかったんです。だからあの時の嬉しい気持ちをもうちょっとだけ味わいたいと思ってこうして誘ってしまったんですが、もしかしてご迷惑ではなかったですか?」


「迷惑だなんてとんでもない。俺も土曜日はこんなに楽しい時間があるんだと驚いたくらいなんだよ。いままで稽古ばっかりで人並みの楽しさに背を向けていたけど、こんなに心が躍るんだったらこれから先何度でも味わいたいなと思っているんだ」


「本当ですか。なんだかノリ君と同じように感じていたのがとっても嬉しいです」


「もちろん俺も。これからも歩美がいっぱい笑顔になれるように二人で色々なところに出掛けようか」


「はい、もちろんです。ノリ君と一緒ならどこに行っても楽しいです」


 これ実質的な告白だろう。たぶん外野で聞いている人間にはそれ以外の意味には取れないはず。とはいっても、その、何て言うか… 友達以上恋人未満の時期というのが一番楽しいのもまた事実。重徳と歩美ももれなく二人の間に醸し出されるなんとも言えないいい雰囲気に鼓動を高鳴らせているよう。


 お互いにとってもいい表情になって今にも手を繋ぎそうな勢いなのだが、さすがに学園内というシチュエーションを考えた上で自重している。とここで歩美が何かを思い出したように…



「そうでした。ノリ君にお知らせしたいことがありました。ネコちゃんの名前が決まったんです」


「そうなんだ。メールには元気にしているって書いてあったけど」


「はい、すぐに慣れて今では神社の敷地を我が物顔で歩いています。それだけならいいのですが、ご神体にお供えしてある魚の干物やお神酒に口をつけてしまって… 中々のイタズラっ子なんです」


「ネコがお酒まで飲んじゃうのか?」


「そうなんです。せっかく買ってきたキャットフードとか猫用のオヤツには見向きもしないで、人が口にする物ばかり欲しがるんですよ」


「そういえば公園でもおにぎりをペロリと食べていたっけ」


「そうなんです。ご飯の時間になると毎度あんな感じなんです。白いご飯と焼き魚が一番の好物みたいです」


「人が喋っている言葉もわかっているみたいだし、なんだか不思議なネコだな」


「はい、とっても不思議なんです。実はウチの神社にはとあるいわれがありまして」


「いわれ?」


「そうなんです。奈良時代よりももっと前に神様の遣いの白いネコが現れて『この地に神をまつる社を造れ』と住人たちに命じたそうなんです。そうして建立された社が現在の我が家の神社の大元でして。白猫はウチの家系にとっては神様扱いなんです」


「なるほど、そういういわれがあったんだ」


 重徳が妙に感心すると同時に、なんだかこんな奇妙な偶然はちょっと出来過ぎているような気がしてくる。とはいえそれは口に出さずに歩美の話の続きを待つと…



「ということで両親とも相談しまして、ご神体の近くにネコちゃん用の小さな祭壇を設けて、そこにご飯とちょっとだけお神酒をお供えするようにしたんです。それからネコちゃんの食事場所がご神体のお隣になりました」


「普通だと罰当たりにも思えるけど、神社が出来上がった経緯を考えればそういうのもアリなんだろうな」


「はい、ということで神社の主みたいな態度のネコちゃんの名前は〔ヌシサマ〕と決まったんです」


「ヌシサマか… 本当に神社の主みたいだな」


「そうなんです。一番偉そうな顔をして境内や拝殿の中を練り歩いていますよ」


 ネコという生き物は時として飼っている人間を下僕のように考えている節が窺える。どうやらヌシサマもこの類の偉そうな態度のネコなのかもしれない。この話を訊いた重徳はというと…



「俺もネコの様子を見に行こうかな。拾った時の片棒を担いでいるんだし」


「ぜひ来てください。ヌシサマもきっと歓迎してくれるはずです」


「じゃあ、明後日の水曜日はどうだろう? その日はちょうど空いているし」


 毎週水曜日はカレンが稽古に専念する日なので、彼女はダンジョンには出向かない。重徳にとっては1週間の中で一番都合がつけやすい日といえる。



「本当ですか。とっても楽しみです。それじゃあ水曜日はノリ君と一緒に下校ですね」


「歩美のお宅にお邪魔させてもらうから、ご家族の皆さんによろしく伝えてもらっていいかな」


「はい、両親にはしっかりと伝えておきますね」


 歩美の頬はバラ色に輝いており、これ以上ないほどの喜びに包まれているよう。先週の土曜日に続いて重徳が家に来てくれるのがものすごい大イベントのように感じているのかもしれない。


 その後も二人は昼休みの時間いっぱいまで校内の散歩を楽しんで、見事なまでのバカップルぶりを周囲に振り撒くのであった。






   ◇◇◇◇◇






 重徳と歩美が仲良さげに学院の敷地を歩いている様子を、同じクラスの窓から見下ろして憎々しげな視線で見つめる人物がいる。彼の名は高山義和。もちろんAクラスに在籍している以上勇者の職業を持っている。


 さてAクラスには男女20名ずつが在籍しており、そのうち勇者は男子19名と女子が1名で合計で20名となっている。その勇者たちのうち4名は入学初日に重徳の手でボコられて心をへし折られ、さらに義人を含む10名が模擬戦で敗北を喫して重徳をバカに出来なくなっているのが現状。


 さらにロリ長と梓の2名が重徳と行動を共にしているとあって、彼に良からぬ感情を抱いている勇者は残るところ4名。高山義和はその4名のうちのひとりといえる。


 彼が狡猾なのは、このクラスには相応しくない一般人の重徳を叩き潰すために自ら率先して手を下すのではなくて、別の勇者を焚き付けて重徳の力を推し量った点といえるだろう。実は入学初日の騒動や重徳の模擬戦の相手としていきなり10名もの勇者が殺到した件は、この義和が背後で糸を引いている。要は入学直後で浮かれているアホな連中にそっと後ろから声を掛けて、重徳を排除するために自分が望む通りの動きをさせていた。


 ところがその行為がむしろ逆効果となって、現在1学年最強の呼び声は重徳だというのがもっぱらの大勢となっている。自分が仕掛けた策略が重徳の評判を高めたとあっては、今まで重徳に倒された勇者たち以上に傲慢で尊大な性格の義和には我慢が出来るはずもない。


(クソッ、一般人の分際でいい気になりやがって。しかも俺に断りもなく女まで連れているとは絶対に許さねえぞ)


 重徳と歩美が並んで歩く姿を目撃した義和は心の底から湧き上がる歯噛みするような感情を隠そうともしない表情。その目はつり上がり、小声で呪詛にも似た言葉の数々を並び立てている。 


 このように義和をより難儀な性格に押し上げているのは「自分の目の届く範囲にあるのは人も物もすべて自分のモノ」というかなりヤバい思考。これはジャイアン気質どうこうというよりも、彼の他人に対する考えの根本に深く根差した暗闇の部分だと思われる。要は「自分の周囲の人間は奴隷同然。その奴隷ごときが人並みに何かを所有するなど我慢できない」という、どこかの中世のお貴族様… それも相当アコギな部類の人を見下す態度といえばいいだろうか。そんなものが心の根深い部分にあるものだから、最も見下す対象たる一般人の重徳が歩美と仲良く歩く姿など彼の中では許されるはずもない。


 もっともこれは義和の一方的な思い込みであって、重徳たちからしたら大きなお世話で片付けられる言い掛かりとも取られかねないクレームに該当しそう。とはいえモンスタークレーマーのような義和の性格からして、この先重徳は歩美もまとめて何らかのトラブルに巻き込まれていきそうな流れが出来上がりつつあるのもまた事実。


 ではなぜこんなヤバい人間の義和が出来上がっているかというと、それは彼が生まれ育った環境が大きく影響していると言わざるを得ない。義和の家は横浜で手広く不動産業や飲食業、サービス業などを営んでいる。飲食業やサービス業といえば聞こえはいいが、その実はキャバクラやホストクラブ、それに風営法に関わるいかがわしい店舗等、あまり大声では口に出せない業種がほとんど。


 さらにこれらの不動産業や飲食業を営む企業は、いくつかのダミーの持ち株会社を経由して最終的には横浜の繁華街を牛耳る暴力団に行きつく。つまり義和はかなりの勢力をもった暴力団の会長の次男坊として生まれており、裏の業界でのし上がっていくために勇者の職業を手に入れた、いわば生粋の〔悪の勇者〕と呼べる存在。


 こんな人間に目を付けられたら、普通に生活している一般の人々なら堪ったものではないだろう。だがたった今、重徳と歩美というカップルは確実に義和にロックオンされてしまっている。重徳単独ならまだしも歩美まで巻き込まれるとなると、果たして無事に済むのか… 誰かがこの件を知ったら、このような不安が湧き立つのを抑えるのは相当な努力が必要かもしれない。


 そして義和は人気のない場所に移動するとポケットからスマホを取り出す。通話が繋がる音がして相手が出ると、彼はおもむろに用件を切り出す。



「兄貴か。腕っ節の強い若い連中を二十人くらい集めてもらえるか」


「なんだと、またお前の悪い病気が出やがったのか?」


 通話の相手は義和とは15歳年の離れた実の兄。彼は現在会長である父親の跡目を継ぐべく組の若頭に就任している。



「ああ、男と女を一度に拉致ってもらいたいんだ。2、3日尾行して隙があったら攫ってくれ」


「仕方ねぇな~。ここ最近取り締まりが厳しくてあまり危ない橋を渡りたくねえんだが、お前の頼みとあっちゃ断れねえな」


 若頭である兄が了承したとあれば、もう重徳と歩美の拉致は成功したも同然だとほくそ笑む義和。こうして重徳たちが何も知らないうちに、ひっそりとトラブルの種が撒かれて、近いうちに何かしらの形で騒動の大火に発展するのは間違いないのだった。



   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



力の制御に苦労している重徳ですが、そんなところにもってきて余計なチャチャが入りそうな気配。レベル86の彼はまだしも、標的とされた歩美にまで危機が迫って…


この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


「面白い」「続きが早く読みたい」「重徳は男としての態度をハッキリしろ」


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