第4話 久しぶりの耳かき。

(シャラシャラと鳴る鍵を取り出して解錠する音→ドアを開け帰宅する貴方)


「(部屋の奥からヒサメさんの声)おかえり〜マイハニー♪」


(ドアを閉じる音→駆け込んでくる小さい音→ドアが開けられる音)


「(ヒサメさんの荒い息遣い)そ…そこは荷物を放り投げて…はぁ、僕の胸にIt’s so good と叫びながら飛び込んで来るべきだろう! え、ハニーじゃなくてダーリンでは…? ツッコミどころはそこなのかい…?? アハハ…はぁ…久々に走った…はぁ」


(ドアを閉めて肩で息をするヒサメさんと一緒にリビングまで歩く貴方)


「(ヒサメさんがソファに座りながら話す)不思議そうな顔をしているけれど、この間約束しただろう? 君の努力の結晶とも言える耳を綺麗にするって。その為に…(ガサガサと雑貨店のものらしい袋の中から色々と取り出すヒサメさん)ほら、(箱を振ってポコポコと音を鳴らすヒサメさん)黒い綿棒とか〜、(耳かきを指で叩くカツカツした乾いた音)ふわっふわの梵天が付いてる耳かきとか、(箱を揺らしてシャカシャカと鳴らすヒサメさん)色々と仕入れて来たんだ☆」


(早く来て欲しそうにヒサメさんがペチペチと自分の膝を叩く)


「おいでおいで」


(ヒサメさんの膝枕に左耳を差し出して凭れる貴方)


「今日は随分と素直に来てくれたね? これはもう睦まじい恋人同士と言っても過言ではないね☆ …過言すぎる? ハハハ、またまた照れちゃって! (吐息混じりにヒサメさんが右耳に囁く)同じ部屋で寝食を共にして、休みの日にはこうして膝枕をしたりされたり…他の人達の目には、カップルか甘々な新婚のおのぼせさんだと映っているさ。(少し緊張した感じで)僕は一向に構わないけど、君はどうだい…? …嫌じゃない、か」


(ヒサメさんが安心した様に息を吐く)


「問題ないなら早速始めようじゃないか。まずは…耳かきで大きな子達から片付けてしまおう♪ じっーとしているんだよ」


(耳かきが垢をかき割って右耳を撫でてくる音)


「(小さなヒサメさんの囁き声)…やっぱり結構汚れているね。大きそうなのからカリカリ、と。(耳の壁を伝うように耳かきの先っちょが動く音)カリカリ、カリ…カリっと…(集中するヒサメさんの吐息)はぁ…すー…んん…すー…はぁー…爽快な程に垢が剥がれていくね♪ 癖になってしまいそうだ…カリカリ…(とても小さな囁き声)お、凄く大きなのが取れたよ…そおっとそおっと…よし」


(耳かきが引き抜かれ頭の横でティッシュが擦れる音)


「(嬉しそうな囁き声)すっごい大きい…♪ こんなモノを隠し持っていたなんて、君は本当に策士だね。いや、それすら一撃で仕留めた僕の腕の方が上かな? ハハハ、なんてね☆ 今ので大きな耳垢は一掃出来たから、次は綿棒で細かい垢やカスを絡め取っていくよ♪」


(箱に詰まっている綿棒を取って右耳の中でクルクルと回すヒサメさん)


「(優しい囁き声)んん、フフ。くすぐったいだろうけど、動いてはいけないよ? 耳垢は敏感な耳の中を護る役割があるからね。それを剥がした今の無防備な君の耳は、柔らかい綿棒ですら傷ついてしまうかもしれないデリケートな状態だ。いい子にじっーとしているんだよ…スリスリ…クルクル…はあ…すぅ…」


(暫く集中するヒサメさんの吐息と綿棒が耳の中を周る音が続く)


「…うんうん、かなり綺麗になったね♪ 僕の声もだいぶクリアに聞こえるようになったんじゃないかな? …元からよく聞こえてる? それはどうも☆ (不意を突いてヒサメさんの吐息)ふ〜〜…ハハハ、ざまあ味噌漬けって奴だね! 耳にふーってされてる時の君、とてもカワイイ目をしていたよ♪」


(綿棒を抜いて、耳かきの梵天部分を右耳にヒサメさんが入れる)


「仕・上・げ・に! 梵天で小さな小さな垢やカスを巻き取ってしまおう♪ ほら、フワフワ〜(梵天がカサカサと右耳の中で回転する心地良い音) …そんなに気持ち良いって目をされると、何だか僕まで癒されてくるよ。それ、ふわふわ〜…ふわ、ふわ〜っと♪」


(暫くヒサメさんのフワフワな声と梵天がカサカサと耳の中で擦れる音)


「(梵天を引き抜いて耳の中を覗き込むヒサメさん)…うん、君本来の上質で可愛いお耳に戻ったね♪ このまま左耳も綺麗にしてしまおうね、ごろーんってして左耳を向けておくれよ」


(衣擦れの音と首の骨がボキボキと鳴る音)


「(ひどく驚いた様子で)!? だ、大丈夫かい? 首を片手でへし折られたような音が鳴ったけれど…そう。まぁ、君が痛い思いをしていないならいいんだ。では、気を取り直して耳かきからやっていくよ!」


(耳かきの先端が左耳に張り付いた垢をぺりぺりと剥がす音)


「(冷静に囁く声)こっちのお耳は湿った感じというか…カリカリというよりはゴソゴソといった感じだね…ふむふむ…これはこれで面白いね♪ ジョリジョリ? なんだろう…(楽しそうに)不思議な手応えと感触だねー。痛かったりは…フフ、むしろ逆の境地にいるみたいで安心したよ♪」


(暫く耳の中をなぞる様に耳かきが動く音とヒサメさんの楽しそうな吐息が続く)


「(耳かきが引き抜かれる)…こっちのお耳は耳垢同士がくっついて簡単に取り切ってしまえたけど、(囁き声)その目が物足りなーい♡って訴えて来ているね。それじゃあ、今度はこのブラシを使って耳の中を軽くマッサージしてみようか。…いくよ?」


(耳の中でブラシのヒダヒダがゾリゾリと耳を撫でる感触と音)


「(楽しそうな囁き声)うわあ、ブラシが入っていくほど君の目がトロトロ〜って溶けていくの。(イケボな囁き)凄くカワイイね…続けていくよ。ゾリゾリ……ゾリゾリー…このブラシの他にもね、命を刈り取る形をしているノノンジ耳かきとか電動?の耳かきというか、掃除機みたいな奴もあってねー。悩んだけれど、あまり奇抜なものだと君のお耳を綺麗にするという目的から外れてしまう気がしてさ? …ぞりぞり…ぞりぞり〜…もう耳垢という垢もないようだね」


(ブラシを抜き、梵天を入れるヒサメさん)


「最後にこっちのお耳もフワフワしてしまおうね♪ (ヒサメさんが梵天をゆっくりと左耳の中で回す) そーれ、ふわふわ…ふーわふわ……(嬉しそうな囁き声)こうして君を上から眺めていると、何だか大きくて甘えん坊な犬と戯れてるようなあったかい気持ちになってくるなぁー…ふわ、ふわ……ふわふわふわ〜」


(梵天を抜いて左耳を覗き込むヒサメさん)


「(吐息混じりの囁き声)うんうん♪ こっちのお耳も宝石みたいに綺麗になったね。もう起きてもいいよ…おやおや☆ 口数が減って来たとは思っていたけど、とっくに夢の世界へ旅立っていたんだね」


(ヒサメさんが貴方の頭を優しく撫でる)




「(優しい囁き)今日もお疲れ様♪ ゆっくりとおやすみ」













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