秋穂君との会話
翌日、秋穂君と会った。
昼前の講義が一緒だったので声をかけた。講義が終わると昼食を共にした。学食は混んでいてせわしないので、近くのファミレスを提案した。ぼくも彼も午後から講義はなかったので、だらだらと先の講義をふり返ったり、小説や映画、アニメの話をしたりした。
秋穂君は終始和やかで、館にいたころの切迫感はなかった。
ぼくは何気ないふうで切り出した。
「秋穂君さ、結局、小説の続きは書いてないの?」
「あー、うん、書いてないよ」
「やっぱり」
「木崎君、あれ読んだんだね」
「つい昨日ね。夏樹君、帆村さん経由で見せてもらったんだ。現実に起こったことだからかな、なんだか恥ずかしかったけど、面白かった」
「それはよかった」
「でさ、そうすると、やっぱ続きが気になっちゃうんだけど、あれはどういう落ちがつくんだろう」
瞬時、秋穂君はぼくを見た。目が笑っていなかった。
「木崎君も見たとおりだよ。まあ、何も起きなかったんだ。そして、続く作者は続編を書くことができずに終了。それが落ちだよ」
「それはわかるんだけどね。例えば秋穂君が小説として書こうと考えていた落ちとか、聞きたいなって。話したくないかな」
秋穂君は黙った。言葉が出てこないようで、何度か口を少し開けては閉じた。いたたまれない思いが込み上げてきた。
ぼくは言った。
「ぼくの考えを言おうか」
「え?」
「少しはぼくも小説を書くんだ。二次創作として聞いてほしいんだけどね。よければ修正してくれて構わない」
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