第91話:神様のお菓子

「それにしてもここはすごいね。市場も露店も噴水広場も全部建物の中にあるんだよ!」

向こうの世界じゃこういう施設はないと思うわよ?

「しかも、向こうには電車の乗り場もあるんだよ?」

駅直結だからね。もっとも、あたしたちは車で来たから関係ないけど。

電車だと乗り換えが多いのよ。


さてと、そろそろ帰ろうかしら?

花子たちも学校から帰ってくる時間だし。

「ごめんなさいするときはお土産があった方が良いんだよ?」

お土産か・・・

ケーキでも買って帰るか?

しかし、半端なものを買うよりも佳乃の作ったケーキのほうがおいしい。

佳乃が作れなそうなもの、もしくは佳乃が作らなそうなもの・・・

まあ、リーゼロッテの食べたことのないヤツでいいか。


「これは知らないんだよ」

ユーハイムのバウムクーヘンね。

「ユーハイムは知ってるんだよ。お蕎麦の神様なんだよ!」

ああ、ユーハイムって名前の神様だったのね。

ここでは、お店の名前よ。

「もしかしてパステルもお店の名前なんだよ?」

プリン屋さんね。向こうにあるわよ?

「アンテノールは?」

焼き菓子屋さんね。すぐそばのあのお店よ。

「古代神の名前が全部お菓子屋さんなんだよ!?」

そんなもんよ。


ちなみに龍神の名前は全部山の名前よ?

それぞれの大陸で一番高い山の名前なのよ。

「エリザベートが世界一高い山なんだよ?」

ああ、そっちじゃないわ。元のエベレストの方よ。

「行ってみたいんだよ!」

無理よ。登れないわ。

リーゼロッテは絶壁山脈を歩いて登れる?

「絶対無理なんだよ・・・死んじゃうんだよ・・・」

でしょ?

エベレストは絶壁山脈よりも何倍も高いのよ?

「え?」

それと、タダじゃないのよ。登るのにお金がかかるのよ。

しかも金貨がジャラジャラよ?100枚とかかかるのよ?

「すんごく高いんだよ!?」

素人が気軽に登れないようにしてるのよ。

「ダンジョンも危険なところは入場料があるんだよ。駆け出しの弱い人が来ないように」

それと同じよ。


さてと、神様の名前のお店で一通りのお菓子を買ったし、そろそろ帰るわよ?

「食べたことないお菓子も多かったから楽しみなんだよ!」


-そこのサンタ止まりなさい!-

「なんか赤く光ってるのが追いかけてくるんだよ!?」

ああ、あれが衛兵とか騎士団的なやつよ。


「免許はある?」

もちろんです。特に違反はして居ないはずですが?

財布から取り出して警官に渡す。

「一応車検証も見せてもらえるかな?」

ダッシュボードから取り出して警察に見せる。

「確認出来ました。両方とも問題ありません」

違反してないんだから、わざわざ止めないでほしいんですけど?

「しかし、通報があると確認しないわけにはいかないのでね・・・」

どうせ、子供が車を運転してるとか通報されたんだろう。

きちんとこっちの年齢を確認してから通報してほしいものだ。

白い方の車で来ればよかったか?こっちは目立つから・・・


余計な時間を取られた。

「コヒメがお子様に見えるから止められたんだよ?」

そうなのよ。で、確認すれば当然問題ないわけで、すぐに解放されるけど・・・

毎回止められるのが面倒だから、普段は佳乃に運転を任せてるのよ。

「でも、ヨシノは大人じゃないんだよ?」

年齢的には大人なのよ。資格も持ってるし。


ようやく、マンションの駐車場に到着。

なんか疲れたんだよ・・・


「お嬢様、おかえりなさいませ」

ただいま佳乃。これお土産よ。

「お菓子ですね・・・どこに行ってたのですか?それにそのお召し物は・・・」

リーゼロッテの服を買いに行ってたのよ。

そしたら、おそろいの服がいいって言うし・・・

「マスターはサンタクロースだった。サンタはマスターだった!」

花子って実はサンタを信じてるのかしら?

すっごいキラキラした目で見つめてくるんだけど・・・

「山田、残念ですがお嬢様のはコスプレです。なぜなら、本物はクリスマスの日にしか現れません!」

佳乃が斜め上の説明をするが、どうやら納得した模様。


「それにしてもその姿だとものすごくそっくりですね」

佳乃が一生懸命違いを見つけようとしている。

しゃべらなければ見分けられないんじゃないかな?

試しに腕を組んでグルグル回ってみる。

「こ、これは・・・」

どう?

「完全に一致」

やはり、外見で判断するのは困難なくらい似ているわけだ。


「ただいまっす」

小麦が帰ってきた。

リーゼロッテと二人で玄関に出向いて土下座をする。


「「お仕事をサボってごめんなさい(なんだよ)」」


とりあえずは謝った。

「うわぁ、これが本物の双子美少女サンタっすね?」

なにそれ?

「見た目じゃ違いが判らないっすね・・・」

小麦でも判別出来ないのか。

「お詫びの印にお菓子を買ってきたんだよ。コヒメが」

リビングにあるわ。あとで食べましょう?

神様のお菓子よ?

「しゃべるとようやく判別が出来るっす・・・」

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