第85話:カニ尽くし再び

宿に戻ったら浴衣に着替える。

うーん、温泉宿っていう気分になるんだよ!

「気分も何も完全に温泉宿っすよ?」

温泉街のビジネスホテルに泊まるのとは違うんだよ!

「この服は向こうの世界でも採用するべきだと思うんだよ!」

ほら、リーゼロッテだって浴衣の重要さを理解してるじゃない。


そんなわけで大宴会場なんだよ!

「白ウサの間」のお客様ですね?

一人増えたって伝えたと思うけど、大丈夫?

「問題ありません」

案内された席にはすでにお膳が準備されている。


うーん、大宴会場の座敷でお膳なのに洋食のフルコースは場違いだったかしら?

いや、でも・・・懐石料理だってフルコースみたいなもんだし・・・

「準備万端なんだよ!」


-前菜-

カニのマリネ、カニのココットと言うか、小さなカニグラタン?

もちろんカニは多めに使用されている。


-スープ-

てっきり、カニのビスク風かと思ってたのに、透明なコンソメスープ?

「これ、カニの出汁ですね・・・」

もしかしてカニの甲羅を使ったスープ?

「おそらくカニの甲羅を砕いて漉して出汁を取ったのかと・・・」

一口でそれを見抜ける佳乃もそれなりにすごいと思うわよ?

「中に入ってるのもカニ真薯じゃなくてカニのミートボールっすね」

思ってたのとちょっと違ったけど、すごくおいしいんだよ!


-魚料理-

当然カニなんだよ!

「巨大コロッケ?」

カニ爪が刺さった俵型ではないカニコロッケ。

「カニクリームじゃなくてカニコロッケっすね・・・やはりカニの割合が狂ってるっす」

カニの肉がぎっしりと詰まっている。

コロッケと言うよりもカニ肉のメンチに近いかも?


-ソルベ-

口直しのシャーベット。

「さすがにカニ味のアイスじゃないんだよ・・・」

レモンとほうじ茶のシャーベット。

「これはこれでおいしいですね」

口の中がさっぱりとするわね。


-肉料理-

本来はお肉なんだけど、なんとカニの鉄板焼きよ!

「こんなの初めて見た・・・」

豪快にカニを半身鉄板で焼いたものなんだよ!

「でも、私とコヒメは足1本なんだよ・・・」

まあ、食べきれないからね。

ちなみに今までの料理も全部少ないサイズよ?

「こんな豪快な食べ方したことないっすよ!」

どっちかと言うとBBQでやるような料理よね。


-デザート-

ケーキなんだけど・・・カニね。

いや、カニ味のケーキなんじゃなくて、見た目がカニなのよ。

「かわいいカニさんなんだよ!」

ちょっとデフォルメした感じのカニの格好をしたケーキ。

味はイチゴね。


-コーヒー-

そして、食後のコーヒー。

もちろんあたしのは砂糖とミルクたっぷり。

付け合わせにはカニのクッキー。もちろん見た目だけ。


げふぅ・・・美味しかったんだよ。

「美味しすぎて食べ過ぎたんだよ・・・」

やっぱりカニには人を夢中にさせる魔法がかかってるのよ・・・

「他のお客さんたちが注目してたっすね・・・」

でも、別に特別な料理ってわけじゃないのよ?

ちゃんと他の宿泊客も選べるコースなんだし。


「ですが、アプリの予約画面には見当たりませんが?」

そんなバカな?

ほら、ここのさらに表示を選ぶと出てくるでしょ?

「なんか意図的に隠してあるようにも見えるっす・・・」

でもまあ、めったに選ばれないのよね。

「通常のコースが1泊2食付きで12000円ですよね?」

そうね。リーズナブルな温泉旅館を目指したからね。

「このスペシャルカニコースは料理だけで追加5万円っすね・・・」

そうね。カニを満喫出来るように全力を尽くしたからね。

「という事は1泊2食付きで62000円。ふつうこれは選ばないと思う・・・」

あら、花子もあきれたような顔をしてるわね?

「どうせなら1泊2食付きで20000円くらいの少し贅沢なカニコースを作るべき」

むむっ、花子がそう言うなら検討してみましょうかしら・・・

「先輩って、たまにやることが極端すよね・・・」

カニは人を夢中にさせる以下略なんだよ!


「お嬢様、でも朝食のバイキングにもカニがありましたよね」

そうよ。あれは結構人気なのよ。

それに一般の夕食にもカニは付いてるのよ?

「カニの甲羅グラタンみたいのがチラッと見えた」

そうなのよ。で、使うのはカニの甲羅でしょ?

「なるほど、もいだ足が朝のバイキングで使われてるっすね?」

しかも、もともと足が何本かもげてる訳あり品のカニを仕入れてるのよ。

「そう考えると12000円のコースもお得っすね」

口コミで評判もいいのよ?

夕飯よりもモーニング最高って・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る