第84話:スマートボールと射的

再び熱川から熱海に戻ってきた。

さすがに駅弁は食べてないんだよ?

「先輩、今日もカニ尽くしっすか?」

もちろんよ!

しかも昨日とは違うメニューのはずよ!

一応洋食メニューって伝えてあるからね。

「お嬢様、夕飯の時間まではまだしばらくありますけど・・・」

佳乃があたしの顔をチラッチラッとみている・・・

ああ、そうか。スマートボールか。午前中は店が閉まってたんだけ・・・


「ここがスマートボールのお店ですか!」

そもそもスマートボールってやったことが無いのよ。

ピンボールとも違うのね。昔のパチンコみたいなビンゴみたいな・・・

「おもしろそうなんだよ!」

あたしもこれはやったことないわね・・・


「金を入れると玉が出てくるだろ?そうするとこのレバーを引いて玉を打ち出す。穴に玉が入って3つ並ぶと景品がもらえる」

まさにビンゴなのね。

早速、佳乃はお金を入れて始めている。

「なるほど、レバーを引く強さで調整するのですね?」

とは言っても多少のばらつきが出るのね・・・


「出来た。黒音は才能がある模様」

斜めに3個並んでるわね。

「お、嬢ちゃんそろったか?1列だとこの中から選びな」

そうか、揃えるだけでなく列数で景品が変わるのね?

「私は1個しか穴に入らなかったっす・・・」

小麦はハズレね。

「おお!意外と簡単なんだよ!」

リーゼロッテはズンドコ穴に入ってる・・・

「でも、全然そろわないんだよ?」

穴は9個ある。リーゼロッテは6個穴に入れた。それでもそろっていない・・・

「こっちの嬢ちゃんは逆にスゲエな・・・残念賞でこの景品をやるよ」

おっちゃんが憐れんで飴ちゃんをくれた。

それにしてもこれが呪いの力?

9個中6個に入って1列もそろわないとか、すごい確率だ。

「コヒメ、敵を取ってほしいんだよ!」


どれどれ?

今までのみんなのプレーを参考にして、まずはこれくらいかな?

難なく下段右側に入る。まずは1個。

これを踏まえて微調整。レバーの強さだけじゃないわね、玉の回転でも調整が必要。

レバーを当てるのを玉の中心からどれくらいずらすか?

まあ、玉はまだまだある。何個か犠牲にしてでも軌道の計算をした方が結果はよくなるはず。

先ほどよりも強くボールの中心よりも少し右下を狙う。

下段左に入った。2個目。

先ほどとほとんど同じあたりを狙う。中断左をかすめて外れた。

ふむ。こんな感じか?

今度は狙い通り中段左に入った。3個目。

「コヒメ、頑張れ!」

さっさと左を埋めるとしますか?


再び1個の犠牲とともに左の上段をゲット。これで4個目。そして1列目。

今度は右側を狙っていく。一番最初と同じ軌道で微調整。

2個の犠牲を伴い、右側中段と上段もゲット。これで5個目と6個目。そして2列目。

残りは真ん中の列だけ。両側が埋まってるから幾分楽になったかな?

そのまま真ん中の列も順調に埋めてパーフェクト。合計8列だ。

「マジかよ・・・好きなもん持ってきな!」

とは言っても特に欲しいものは無いのでリーゼロッテに選ばせる。

「うーん、見たこともないものが多いんだよ・・・」

さんざん悩んだあげく招き猫をもらった。


と、まあ全力でやればこんなものよ。

でも、こういうのはそんなこと考えないで適当にやった方が面白いんだよ!

何も考えないでズンドコ玉を打っていく。

すべての玉を打ち尽くした後に盤面を跳ねている玉を眺めていると・・・

「3列そろってるんだよ・・・」

うーん、何も考えないで適当に打ったのに・・・


「射的もやってみたいです」

お祭りの屋台で見かけるのとは違う感じね。

どうやら直接景品を倒してゲットするんじゃないみたい。

点数のついた人形を狙うみたいね。それで合計点で景品と交換と。

使うのはコルク銃。これはお祭りの屋台と一緒みたい。

これはさすがに弾道計算は無理か・・・


「狙ったところに行きませんね・・・」

コルクだしね。詰め方によっても飛ぶ方向は変わる。


「レバーが引けないんだよ・・・」

リーゼロッテの力ではレバーが引けないらしい。ということは、あたしも無理か。

「この佳乃にお任せを!」

佳乃がリーゼロッテの銃のレバーを引いてあげる。

フラフラしながらコルク銃を撃つが、もちろんそんなものが当たるはずが・・・


ぽこ


当たった?しかし、人形は倒れない。それどころか頭の上にコルクを乗せている。

「相変わらずこっちの嬢ちゃんは斜め上にスゲエな・・・」

その後も何度かコルク銃を撃った結果、頭にコルクを乗せた人形が並んでいる。

どうするとこうなる?

「全然ダメダメだが、スゲエもんを見せてもらったから景品をやるよ・・・」

おっちゃんがお情けで30点分の景品をくれた。

「うぅっ、あんまりうれしくないんだよ・・・」

そして、小さな招き猫を選ぶ。招き猫好きね・・・


そろそろ夕飯の時間かしら?

「カニなんだよ!」

宿に戻るわよ。

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