第83話:バナナワニ園

「コレがワニなんだよ!?」

あたしも実物を見るのは初めてかしら?

「思ったよりもだいぶ大きいんだよ!」

まあね、今見てるのは一番大きいイリエワニだから大きいわよ。

「小さいのも居るんだね。これは結構可愛いんだよ!」

コビトカイマンね。

成長してもあたしの身長と同じくらいにしかならないからね。

とは言っても尻尾が長いだけだからね。胴体はそれほどでもないんだよ。

「ここに閉じ込められてるんだよ?」

一応、危険な動物だからね。


「で、ワニはこれで、バナナはどこにあるんだよ?」

さあ、順路通りに進んでいけばいいんじゃない?

「ここはあったかいね。ちょっとムシムシするんだよ」

熱帯植物を展示しているみたいね。


それにしてもバナナがないわね?

「お嬢様、バナナは向こうの分園に展示されてるみたいです」

なるほど。分園ってのがまだ別にあるのね?


これはウツボカズラ。食虫植物って意外と小さいのね。

まあ、虫を食べるんだから、この大きさでいいのか。

「これの大きいのをダンジョンで見たんだよ!」

もしかしてそれって、人を食べるやつ?

「美味しくいただかれちゃうんだよ・・・」

触手とかで掴まれる感じなのかしら?


「マスターこれはトカゲ?ワニとは違う感じ」

オオサンショウウオって書いてあるわね。

両生類だからカエルやイモリの仲間みたいよ。

「山椒魚は知ってる。図鑑で見た。こんなに大きいとは思わなかった」

まあね、図鑑と本物は違うからね。

いくら模様とか大きさとかが書いてあっても実際に見ると違うわね。


「水の上にでっかい葉っぱが浮かんでるんだよ」

オオオニバスっていうみたいね。

あたしやリーゼロッテくらいなら上に乗っても大丈夫みたいよ。

あ、でも乗っちゃダメよ?怒られちゃうから。


「先輩、バナナのアイスが売ってるっす!」

バナナ以外にもいろいろなソフトクリームがあるのね・・・

でも、ここはバナナワニ園。だとすれば選ぶのはバナナ一択。

「じゃあ、バナナ味5個でいいっすね?」

そう言って小麦がソフトクリームを購入してみんなに配る。


「確かにバナナの味ですね・・・と言うかバナナアイスの味と言いますか・・・」

佳乃の言いたいことはわかる。本物のバナナとは違う味。

だけど、この味が何かと言われるて、答えるならバナナの味。

でも、そんなことは関係ないんだよ!

このソフトクリームは美味しい、それが大事なんだよ!


「分園にはバスで行くみたいですね。歩けないこともありませんけど・・・」

バスの時間によるわね。

なんだったらタクシーでもいいし。

「先輩、普通のタクシーだと人数的に乗れないっす」

じゃあ、やっぱりバスか歩きね。

「マスター、バスがもうじき出発」

運が良いわね。リーゼロッテが居るのに。

「きっと盗賊に襲われるんだよ・・・」

まあ、盗賊が居ないから大丈夫よ。


バスに乗って、すぐに到着。

これだけ近いなら歩きでも大丈夫だったかしら?

「ここが分園っすね?」

バナナやマンゴーやパパイヤを展示してる場所なんだよ!

「先輩、ワニやレッサーパンダも居るっすよ?」

ワニはさっきも見たし、レッサーパンダもちょっと可愛いたぬきみたいなもんなんだよ!

「完全に果樹園に意識がいってますね・・・」

香料と香辛料も興味あるんだよ?


「おおー!なんか可愛いんだよ!」

リーゼロッテはレーさパンダに夢中・・・ではなく、ゾウガメを見つめている。

こんなに大きいのじゃなくて、小さい方が可愛くない?

「だって、この大きさなら乗れそうなんだよ?」

確かに、リーゼロッテならゾウガメに跨って乗ることも可能だろう。もちろんあたしも・・・


「それにしても、バナナってってこんな風になるんですね・・・」

まあ、木になってる状態はなかなかお目にかからない。

と言うか、バナナってそもそも木じゃ無いらしい。でっかい草というか分類としては野菜らしい。

「スーパーで見かけるのとは違いますね」

吉野はバナナをじっくりと見つめている。

「てっきり、あれがそのままかと思ってたのですが、房の一部だったのですね・・・」

あたしも、あれが木の枝にぶら下がってるイメージだったわ。

「バナナはダンジョンの果樹園にあるんだよ!」

本当になんでもあるのね・・・

「とりあえず、初めて見たやつは片っ端からぶっ込んだんだよ!おもにシャーリーが・・・」

一度見てみたいわね・・・


さて、大体これで全部回ったのかしら?

「パパイヤって言うのはダンジョンの果樹園になかった気がするんだよ・・・苗が欲しいんだよ・・・」

さすがにそれはお土産コーナーには売ってないわよ?

それに、木の苗はアイテムボックスに入らないんでしょ?

「そうなんだよ、持って帰れないんだよ・・・」

あたしの家に持って帰ることは出来るけど、向こうの世界へは持っていけないでしょうね。

「でも、コヒメは神様だからきっとどうにかしてくれると思うんだよ!」

仕方がない。パパイヤのデータでも実装してあげよう。

他のデータを参考にすれば追加することは出来ると思う。

既に実装済みであればリーゼロッテが手に入れられるように細工してあげるか・・・


「マスター、これが欲しい」

なにこれ?ぬいぐるみ?ここのマスコットの?

帰り際に売店で花子がぬいぐるみをねだる。

よくあるマスコットキャラのぬいぐるみだけど・・・

「マスコットが2種類あるのですか?」

こっちの直立したワニよりはましか・・・

花子が選んだのは黄色くてバナナの様にカーブしたデザインのワニ。

「こっちの方がバナナワニっぽい」

うん、まあ、いいけどね・・・

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