第81話:待ちに待った駅弁

「あの乗り物に乗ってみたいんだよ!」

もちろん乗るわよ。さらに言うとあの中でお弁当を食べるのよ!

それが今回の目的よ!どこに行くとかそんなのは小さなことなんだよ!

重要なのは流れる景色を見ながらお弁当を食べるってことなのよ!

「それはとても楽しみなんだよ!」

そんなわけで、まずはお弁当を選ぶのよ!


「結構種類が豊富なんだよ・・・」

一番のおすすめはこのお店で売ってなかったけど、どれもおいしそうね。

やはり海の近くだから海産物系のお弁当が多いわね。

「これってお寿司なんだよ?」

お寿司と言えばお寿司ね。普通のお寿司じゃなくて押し寿司って言うのよ。

「これを食べてみたいんだよ!」

あたしはこっちの西京焼きが入ってるのにするわ。

「お嬢様、私はこの人気上位3つです」

サンドウィッチと鯵の押し寿司とシラス弁当ね。

それにしても、3個も食べるの!?

「研究のためです。決して私がこれだけの量を食べたいわけではなく・・・」

ヘタな言い訳は要らないわよ。

「黒音は釜飯が食べたい。家ではまず出ないメニュー」

これも普段はあんまり食べないやつよね。

花子はそういう基準で選ぶのね・・・

「私は普通に幕の内っす!」

どこにでもありそうなやつね。

もうちょっと熱海っぽいというかご当地的なのにしなさいよ。

「でも、中のおかずはそれっぽくないっすか?」

まあ、確かに・・・

ついでに飲み物も買うわよ?


「さっきのお店でお金を払ってないんだよ?」

実はちゃんと払ってるのよ?

「銀貨とか銅貨を使ってなかったんだよ?」

ああ、この世界ではこういうのがあるのよ。

「鳥さん?の顔のカードなんだよ?」

ペンギンは知らないか・・・まあいい。

このカードの中にお金が入ってるのよ。

入ってるといっても実際に銀貨とかが入ってるんじゃないのよ?

「手形みたいな感じなんだよ?」

手形は知ってるのね?

「依頼報酬が払いきれなくなったときとかにくれるんだよ。ギルドに持っていくと金貨が山盛り貰えるんだよ」

金貨で払いきれないほどの報酬って・・・いったい何をやらかしてるのかしら?

それに、設定上は金貨って1枚10万円相当の価値よ?それが山盛り?

どうりで300枚もお供えしてくれるわけだわ・・・


「この電車?ってのに乗るんだよ?」

これじゃないわ。行き先が逆よ。

こっち側に来る電車で次の次のやつね。行き先が色々あるのよ。

「これってすんごい長いけど、何人乗れるんだよ?」

9両編成だと全部で500人くらい乗れるみたいよ?

「500人!すごいんだよ!」

でもね、あっちの白と青のは16両編成で1000人以上乗れるのよ?

「1000人!?小さな街くらいなんだよ!」

まあ、あの世界の街はそれくらいだったわね。


「マスター、踊り子号がきた。これが乗るやつ」

6号車よ。12のABと13のABね、それに14のAよ。

リーゼロッテが窓側ね。

「海が見えるんだよ!」

佳乃が海側の席を予約したのよ。

「なぜにメイドの隣・・・」

佳乃と花子がペアなのね。

「私だけぼっちっす・・・」

正確にはぼっちではない。小麦の隣には見知らぬおっさんが座ってる。

ちょっとかわいそうだけど、人数が5人になったから仕方がない。

「早速お弁当なんだよ!」

リーゼロッテの席のテーブルを用意してあげて、お弁当とお茶を乗せる。

自分の分のテーブルも用意して同じようにお弁当を準備する。


「いただきますなんだよ!」

ワクワクが止まらないリーゼロッテがお弁当の蓋を取る。

「お寿司1個が意外に大きいんだよ」

リーゼロッテのは押し寿司。鯵と鯛ともう1種類は何かしら?

包み紙を見ると、残り1種類は『特上鯵』らしい。普通のとどう違うのかしら?

「アジは食べたことがあるんだよ!干物が美味しいんだよ!」

お箸は使える?

「問題ないんだよ!」

うん、普通にお箸を使いこなしてるわね。

パンが主食じゃないの?そういえばお寿司を知ってたわね・・・

「堅パンも好きだけど、卵かけご飯も好きなんだよ?」

TKG!?

なんか無茶苦茶ね。

「ラーメンも好きだし、お餅も好きだし・・・」

結構充実したメニューなのかしら?

そんな料理のレシピなんて実装されてなかったはずなんだけど・・・


まあいいわ。あたしも自分のお弁当を食べよう。

念願の駅弁なんだよ!

これこれ、移りゆく景色を眺めながら・・・

って、全然景色が変わらないわね。海しか見えないし・・・

それよりも、金目鯛の西京焼きのお弁当なんだよ!

「コヒメ、このお茶ってどうやって飲むんだよ?」

そうか、ペットボトルを知らないのか・・・

これは上のところをこうやって捻って開けるのよ。

飲まない時は蓋を閉めておけば溢れないのよ。

「すごいんだよ!この瓶は是非とも欲しいんだよ!」

素材がないから向こうの世界では作れないと思うわよ?

「残念なんだよ・・・」


やっぱり金目鯛は美味しいわね。

蓮根や人参なんかも味が染みて美味しいし、これはアタリね。

「お嬢様、それでは今後は西京焼きもメニューに導入しますね」

後ろから佳乃の声がした。

通路越しに後ろを振り返ってみると、佳乃はすでに2個目のお弁当を食べている。

ちなみにリーゼロッテは2個目の押し寿司に手をつけるところ。

「1個目はサンドウィッチでしたからね、すぐになくなりました」

それでもよ!

「お嬢様はゆっくりと味わってください。あ、食べきれなければ処理いたしますので!」

しかも、あたしが食べきれないことを見越しての3個だったみたい・・・

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