第79話:浴衣と温泉
でも、リーゼロッテの分の食事は無いのよ?
「え?」
だって、4人で予約したから4人分しか用意されないのよ。
「でも、コヒメは私と同じであんまりたくさん食べられないんじゃないかな?」
うっ、思ったよりも勘がいいわね・・・
「コヒメと半分こでも大丈夫だと思うんだよ!」
実際、昨日は佳乃と半分こしたし、間違ってはいない。
しょうがない、あたしの分を分けて配膳するように伝えておくわ。
「ありがとうなんだよコヒメ!」
それよりも、問題なのはリーゼロッテの服だ。
今はファンタジー素材満載の白ウサの服を着ている。
これはこの世界には存在しないもの。
あたしのサイズの浴衣でも用意してもらおう。
ついでだから2人分。
小麦は佳乃と同じMサイズで大丈夫かな?
「まあ、一般的なサイズっすからね」
花子はSサイズ?
「黒音もMで大丈夫なはず」
そう?あたしよりはだいぶ大きいとは思うけど・・・佳乃よりは背が低い。
「山田はSでないと裾を踏みますよ?」
佳乃の言うことも一理あるけど、どうなんだろう?
「黒音はしまむらではMサイズを購入する。だから問題ない」
花子が普段着ている服なら問題ないかもしれないけど、浴衣は足元まであるのよ?
「浴衣をお持ちしました。XXSサイズ2着とMサイズを3着でよろしいですか?」
ありがとう!
「え?」
リーゼロッテを見て仲居さんがびっくりしてるね。
「オーナーは双子だったのですか!?」
ああ、そんな感じなのよ。
だから、夕食もあたしとこの娘の分を半分サイズでお願いね。
「分かりました。厨房に伝えておきます」
これで夕飯は大丈夫ね。
「じゃあ、ご飯の時間まで温泉に入るんだよ!」
さっきは結局温泉に入ってないからね。
ところで、排水溝がまだ光ってるけど大丈夫かしら・・・
「黒音は何も見てない」
花子は見ないふりを決め込むわけね。
「ところで、リーゼロッテは浴衣を着れるのですか?むしろお嬢様も自分で着られるのですか?」
こうして、こうじゃないの?
「先輩、浴衣は右が前になるっすよ?」
どうりで結ぶ紐が変だと思った・・・
「リーゼロッテは私が着せてあげます」
佳乃が手際よくリーゼロッテに浴衣を着せる。
「おお!コヒメとおそろいなんだよ!」
おそらく見た目は完全に一致。
しゃべらなければ見分けるのは難しいんじゃないかしら?
「薄っすら光ってるのがリーゼロッテっすね」
私は光っていない。光っていないはず・・・
「早速、温泉なんだよ!」
さっきまで温泉に入ってたわよね?
「あれはなんていうか違うと思うんだよ・・・」
まあ、ケロリンの洗面器だったし、最終的には片足だけだったからね。
「まあ、昼食の時間までまだありますしいいのでは?」
そう、時間はまだ午前中。
観光やマッサージの予定は全部キャンセルしたからやることもない。
「リーゼロッテはお風呂が好き?」
まあ、お風呂屋さんを経営してるくらいだし、嫌いじゃないと思うわよ?
「もちろん大好きなんだよ!色々なお風呂を開発したんだよ!」
ああ、そういうこと?
「残念ながら、ここには普通のお風呂しかない・・・」
リーゼロッテがガックリとうなだれてるわね・・・
花子と同じ側の人間だったのか・・・
「おそらくリーゼロッテのイメージはスーパー銭湯っすね!」
それは今度連れて行ってあげるわ。
「ビリビリの電気風呂とかシュワシュワの炭酸風呂が好きなんだよ・・・」
花子もうんうんうなずいてるわね。
この娘達のお風呂のイメージの店も必要かしら?
「ここが脱衣所なんだよ?」
ちゃんとカゴに脱いだ服を入れている。
「タオルは?」
ここにあるのを使うのよ。
タオル置き場から体を洗う用の小さいタオルを一つ手に取る。
バスタオルで身体を隠すというのは思いつきもしないのか?
まあ、いいか。お子様だし。
「リーゼロッテ、身体を洗ってあげます」
佳乃がリーゼロッテを洗ってあげてる。
そういうあたしのことはいつの間にか小麦が洗っている。
「見た目はシャーリーみたいなのに洗い方がグレイスみたいなんだよ!?」
そうか、グレイスはそういう洗い方なんだ・・・
「なるほど、こうっすね?」
そしてそれを見た小麦がさっそく取り入れている。
「お嬢様とリーゼロッテは寸分たがわず同じサイズですね・・・」
それで佳乃はリーゼロッテを洗ってたの?あたしと比較するために?
結果寸分たがわないと断言できる佳乃に少し恐怖を抱く・・・
まあ、佳乃だからとしか言えないけど。
そして一人ぼっちの花子をあたしとリーゼロッテが洗ってあげる。
「とっておきの洗浄液なんだよ!」
りんごの香りがする異世界シャンプーだ。
「え?ちょっ!?そこは・・・」
右側をリーゼロッテ左側をあたしが担当する。
もちろん、前も後ろも全部きれいに洗ってあげる。
「ダメっ!そこはマスターしか触れてはいけないところ!」
問題ないわ。触れてるのはあたし。
「ハナコはお胸が大きいんだよ!」
余計なことを言うからあたしだけでなくリーゼロッテも触れていることに花子が気付いた。
「やっぱり、リーゼロッテも触ってる!」
でもね、あたしもリーゼロッテなのよ?だから問題ないわ!
「きゅぅぅぅぅ」
コテンと花子が気絶した。ちょっとやり過ぎたかしら?
「ハナコ!傷は深いんだよ!」
それを言うなら浅いでしょ?
リーゼロッテがどこからともなく薬を取り出し花子にかける。
「うぅぅぅぅん・・・」
どうにか目を覚ましたけど、花子がうっすらと光っている。
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