第76話:時間切れ
さてと、とりあえずマッサージかしら?
「マスター。マッサージ屋さんはもうやってる?」
現在時刻は8:41まだやってないか?
ああ、もう!何も出来ないじゃない・・・
「先輩、仕事はあんなに計画的なのに私生活はグダグダっすね・・・」
それは仕事は全力でサボるために効率を考えてるからよ!
今は休日。のんびりするのに効率も何もないのよ。
「私が作った旅のしおりも結構無意味でしたね・・・」
あら、佳乃まで落ち込んじゃった・・・
ヴヴヴヴヴ・・・
あら?何かしら?
「あ、私のスマホの着信っすね」
なーに?仕事のへまの呼び出しじゃないでしょうね?
「うぅ、思い当たることがあり過ぎっす・・・」
小麦がスマホを取り出して画面を確認する。
「ありゃ?なんすかこれ?」
どれどれ?
そこには画面に張り付いたリーゼロッテの顔があった。
『たっけて』
声まで聞こえる。どういうこと?
小麦はいつの間にこんなアプリを作ったの?
「私はこんなの作ってないっすよ?」
では誰がこれを?
『ここに閉じ込められて出れないんだよ!』
閉じ込められた?
リーゼロッテが?スマホの中に?
『世界が壊れたからログアウトしてきたんだよ!神様、世界を直してほしいんだよ!』
世界はこの前直してあげたじゃない?また壊したの?
それにしてもログアウト?だからスマホの中に居るの?
『何も出来なくなったんだよ!リズもジブリールもみんな止まっちゃったんだよ!』
何も出来ない?世界が止まった?どういう事よ?
『新しいスレッドを作ってほしいんだよ!ところでスレッドって何なんだよ?』
ギギギっと小麦の顔を見ると、頭を抱えてうずくまっている。
いったい何をやらかしたのよ・・・
「システムログが書き込めなくて世界が停止したんだと思うっす・・・」
ログならストレージを自動拡張にしたから書き込めないってことは無いはずよ?
「それはそうなんすけど・・・」
とにかく白状しなさい。
「昔の巨大掲示板みたいにログが1000件までしか書き込めないようにおちゃめなイタズラを・・・」
じゃあ、新しいスレッドを作成すれば解決ってことね?早くやりなさいよ。
「それがその仕組みを作る前にプロジェクトが終了して・・・」
まさか、作ってないの?
どうするのよ・・・
『神様でも、世界を直せないんだよ?』
あのね、壊れたんじゃなくて、まだ出来てなかったのよ。
『そもそもスレッドって何なんだよ?』
掲示板はわかるわよね?
『ギルドで依頼が貼ってあるんだよ』
そう、それよ。
で、依頼をどんどん張ってくとどうなるかしら?
『誰かが依頼を受けるから特に問題ないと思うんだよ?』
でも、誰も依頼を受けなかったら?
『張る場所がなくなるんだよ・・・あー!もしかしてそう言う事なんだよ!?』
そうなのよ、張る場所がなくなったから新しい掲示板を作ってねってことなのよ。
『新しいスレッドはどうやって作るんだよ?』
その機能はまだ出来てないみたいなの。
小麦が担当だったんだけどね。
「コムギって誰なんだよ?」
ああ、造物主のアンドーって言った方がわかるかしら?
『アンドーってグレイスの中の人だった人なんだよ?』
そうよ。コイツね。
そう言ってスマホの画面を小麦に向ける。
『アンドー!早くどうにかして欲しいんだよ!』
どうしようかしら、ここじゃ機材が無いわよね・・・
『ところで、どうやったらこの部屋から出られるんだよ?』
リーゼロッテはスマホの中に居る。
最初に見た時は画面に顔を押し付けてほっぺがむにょんとなっていた。
どうやら窓(スマホの画面)をどうにかして開けようとしていたらしい。
『この部屋は出入り口が窓しかないみたいなんだけど、窓が開かないんだよ・・・』
そこは部屋じゃないのよ。
ギルドの石板があるでしょ?あれと同じようなやつにあなたの顔が映ってるのよ。
『え?』
さすがに理解の範囲を超えたらしい。リーゼロッテが絶句して固まった。
『じゃあ、私はずっとこの中から出られないんだよ?』
そうね、そもそもログアウトすら出来ないはずだったんだけど・・・
『分からないけど、世界が止まっても動けたし、ログアウトも出来たんだよ!えへん!』
画面内のリーゼロッテが胸を張って反り返っている。
そっかーログアウト出来たのか・・・
その結果がスマホの画面って言うのも理解出来ないがどうなってるんだ?
「マスター、リーゼロッテはここから出られる?」
出る?出るとどうなる?実体化するのか?それとも私みたいに・・・
「お嬢様、叩けばよいのでは?」
佳乃もとんでもないことを言う。大昔のテレビじゃあるまいし・・・
べしんべしん・・・でろん
「うわぁ、本当に出てきたっすよ・・・」
って、なんで小麦が実行してるのよ。しかも半透明の手のひらサイズのリーゼロッテが出てきてるし・・・
『わーい!外に出られたんだよ!』
リーゼロッテは地面に立っている。
花子が抱きかかえようとしたけど、スカッとすり抜けた。
『あれ?もしかして私って死んじゃってる感じ?ゴーストみたいなんだよ!?』
リーゼロッテも自分のスケスケ具合に気付いたみたい。
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