第71話:新幹線に乗るよ!
「とりあえずこの異世界のパンは持っていきましょう」
2泊3日だから腐ることはないと思うけど、異世界の物だからね・・・
それにりんごのパンには興味があるし。
「マスターこれ食べるの?」
むしろ食べないの!?
リーゼロッテがくれたものだし大丈夫じゃない?
むしろHPとか回復すると思うんだよ!
さてと、忘れ物はない?
東京駅まで行くわよ!
「この時間なら直通の品川行きに間に合いますね」
佳乃がスマホアプリの乗換案内で確認してくれた。
マンションのエレベーターもそれほど待つことなくやってきた。
駅への連絡通路がある2階のボタンを押す。
直接駅と繋がってるのって本当に便利ね。
「東京駅までは36分ですね」
あれ?
東京から熱海も36分じゃなかった?
「つまりここと熱海は東京から同じ距離?」
いやいやいや、何でそうなるのよ?
「やはりメイドはおつむが残念・・・」
さすがにこの時間は結構空いてるのね。
余裕で座れた。荷物は佳乃に網棚にあげてもらった。
ところで小麦は大丈夫かしら?
『先輩、東京駅に着いたっす』
え?
もう着いちゃったの?こっちはまだ20分くらいかかるわよ?
『駅弁買っとくっすよ。何がいいっすか?』
何にしようかしら・・・
『シウマイ弁当が食べたいんだよ!』
あら?いつの間にか返信してたわ・・・
-リーゼロッテが返信しましたね-
-マスターの指は動いてなかった-
『ところで本当にお弁当食べるんすか?』
もちろんなんだよ?
駅弁は電車の中で食べることに意味があるんだよ?
『もちろん新幹線で食べるんだよ!』
お弁当を食べてるネコさんスタンプとともに返信する。
『今何時だか理解してるっすか?』
スマホの時間を確認する。現在15時32分。
『お弁当を食べて晩御飯入るんすか?カニのフルコースなんすよね?』
ああ!
駅弁なんて食べたら絶対に入らない。あたしの胃袋はアイテムボックスではない。
『うわぁぁぁん!駅弁も食べたいんだよ!』
でもカニだって食べたいんだよ!
「明日の予定を変更して駅弁を食べるための電車での移動を考えましょう」
おお!
それなら今日のところは駅弁はあきらめることにしよう。
カニのフルコースも重要だからね。
『そもそも先輩はカニのフルコースを食べきれるんすか?』
私の分は種類はそのままで、量を少なくしてもらってるんだよ。
子供用の料理だとフルコースじゃなくて、お子様ランチになっちゃうからね。
そんなこんなことをメッセージで送りあっているうちに東京駅に到着。
ここからさらに新幹線のホームに移動して小麦と合流。
「先輩、会いたかったっす!」
そして小麦が抱き着いてくる。そもそもそんなに長い時間離れてはいない。
朝も一緒にご飯を食べたし、ましてや同じベッドで一緒に寝ている。
いまいちよくわからないけど、再会を喜んでいるというていなのだろう。
「マスター座席はどこ?」
佳乃、座席はどこ?
予約したのは佳乃だ。
「10号車の1A、1B、2A、2Bです」
そう言いながら佳乃がシートを回転させる。
すると4人用のボックス席になった。
「しかも一番前なので他のお客様に迷惑になりません!」
よくやったわ佳乃!
「私は先輩の向かいでいいっす!」
そう言って小麦が1Bの席に座った。あたしは2A確定なの?
「先輩、進行方向逆とか絶対酔うっすよね?」
うーん、否定出来ない。リーゼロッテのファンタジーボディーだから状態異常には強そうだけど・・・
「黒音も逆向きだと酔うかも・・・」
そう言って花子が2Bに座る。残った1Aには佳乃が座った。
「私はここですか・・・まあ、すぐに着いちゃうんですけどね・・・」
まあ、3つ目の駅だしね。
さすが新幹線、すごく速い。
「でも、お嬢様の車も同じくらいの速度が出ますよね?」
あのね、日本じゃ出す場所がサーキットくらいしかないのよ。
それだとこんな風に景色が流れていかないのよ。
「先輩の車って、軽自動車っすよね?」
あれは小さいけど軽じゃないのよ。でも、スピードが出るのは別の車。
「マスターは赤いスーパーカーも持ってる」
小麦に見せたことなかったかしら?マンションの駐車場にあるわよ?
でもまあ、リズの方が圧倒的に速いんだよ!
そうだ、新幹線と言えばアイス!
「まあ、アイスくらいなら夕食にはそれほど影響はないでしょう」
佳乃が車内を探して買ってきてくれた。
これこれ、シンカンセンスゴイカタイアイス!
これも食べてみたかったんだよ!
「本当にすごい硬いっすね・・・」
べきゃ
スプーンが折れちゃったわ・・・
「お嬢様、問題ありません。こんなこともあろうかとミスリルのスプーンを用意しています」
ミスリルって・・・ただのアルミ製じゃない。
「おおスゴイ!さすがミスリル!」
ハナコは信じてるってわけじゃなくて空気を読んでるだけね。
「もうすぐ到着ですね」
魔導師の杖の声で車内アナウンスが流れる。
短い新幹線の旅が終わりを告げた。
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