第2話:転生

朝、目を覚ます。いつもと同じ天井。俺が一人暮らししているマンションの部屋。

ベッドの脇に置いてあるメガネを取って装着する。つもりだった。

メガネが無い。寝てる間に落としたか?床にも転がっていない。

それどころか眼鏡をかけていないのに物がよく見える。

メガネを掛けたまま眠ってしまった?そんなことはない。

とりあえず顔を洗ってコーヒーでも飲もう。頭をシャッキリとさせたい。


ベッドから起き上がりすぐに気付いた。視界がいつもと違う。

上を見ると天井が高く見える。

家具の配置も昨日までと変わらないはずだが視点が低い。

違う景色に見える。なんだ?部屋が大きくなった?

違う。自分が縮んだんだ。そんなバカな?

自分の身体を見る。手足が小さいというか細いというか。

この視界にはちょうど釣り合いが取れているサイズ。


昨日までの俺は身長は172センチだった。

それが今は高さ110センチの本棚の天板がギリギリ見える程度。

だとすると120センチそこそこだろう。

それに肌の色が白い。色白とかそういうレベルじゃない。病的に白い。

昨日まではごくごく一般的な日本人の色だった。


とにかく確認だ。

この部屋には鏡がない。まずは洗面所だ。

ドアのノブが高い。電気のスイッチも。

洗面所で鏡を見る。誰だこれ?俺なわけだが。でも、誰だこれ?

白髪というか銀髪というか?プラチナブロンド?

昨日までは黒髪だったし、髪を染めたこともない。

それに目の色が赤。欧米人的な青い目でも緑の目でもない。

本当に赤。ルビーのような色。

どこの国どんな人種でもこんな色の目はしてないのでは?

それに髪の色だってこれは普通じゃない。

茶髪とか金髪くらいならわかる。銀色ってあり得るのか?

コスプレ用のズラかと思ったが取れない。地毛だ。

元が黒髪で、こんなにキレイに染まるもんか?

一本引っ張って抜いてみた。痛かった。根元から同じ色。

染めてるわけではなさそうだ。

それよりも顔。自分が若返ったわけではなさそうだ。

全くの別人の顔。本当に誰なんだよこれ?

ただ、どこかで見たことある気がするな・・・

アニメかゲームのキャラか?ちょっとすぐには出てこないな・・・


少なくとも俺じゃない。俺は32歳のオッサンだった。

しかも彼女いない歴イコール年齢のいわゆる魔法使い。

まあ、この場合の魔法使いとは実際に魔法が使えるわけではない。

もてない男の比喩表現的なものだ。魔法が本当に使えるのなら苦労はしない。

ここはゲームの中でも異世界でもない・・・よな?この姿だと否定できん・・・


それなのに鏡に映ってるのは本当に魔法が使えそうなアニメやゲームのキャラクター。

むしろこんな姿のやつ、どこの国にもいないと思うが。まさにお人形。

いわゆるイケメンとは違って中性的な顔立ちだが、この顔ならモテるだろう。

とはいっても見た目まだまだお子様だ。せいぜい10歳になったかどうか程度だろう。

将来はかなり期待できそうだ。芸能事務所にスカウトとかされてもおかしくないレベルだと思う。

ベタだがほっぺたをつねってみる。痛い。夢じゃない。

そもそも考えれば、さっき髪の毛を抜いた時も痛かった。まったく無意味な行動だった。


とすると、確認しなきゃいけないのはこの身体は俺のものなのか?ということ。

実は他の誰かと精神だけ入れ替わっているのかもしれない。

だとすれば俺の身体にこの身体の持ち主の精神が入っているはず。

お子様がいきなりオッサンになってものすごいショックを受けているだろう。

思い余って自殺とかするかもしれん。その場合元の俺の身体がダメになるわけで・・・

実はヤバくないか?早めに元の俺の身体を探さないとダメでは?


持ち物を確認しよう。財布だ。運転免許の写真。

どういうことだ?免許の写真は確かにこの顔だ。

しかも名前も橋本真一。俺の名前だ。

どう見ても橋本でも真一でもないだろう。もっとカタカナ風な名前の顔だ。

年齢も32歳。イヤイヤイヤ、どう見ても小学生だろ?


そういえば今日は何月何日だ?会社は?

俺の記憶では今日は11月1日。昨日はハロウィンで渋谷で騒ぎがあった。

テレビをつける。時間は7時5分。いつも見ているニュース番組を確認。

日付は問題ない。ニュースでもハロウィンのことを言ってる。

この辺は俺の記憶と差異はない。先日起きた事件の続報とか特に違和感は感じない。

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