白と黒 -03 : outside-

更科灰音

第1話:プロローグ

異世界転生ものとか、異世界に迷い込むとか、

そういう物語はたくさんある。少なくとも10万とかそんなもんじゃないだろう。


何らかの原因で死を迎えて神を名乗る存在に異世界へと転生させられるとか。

電車に乗っていて気付くと見知らぬ駅に停まっているとか。

そういうわかりやすい導入があれば異世界だと認識できるだろう。

しかし、普通に朝目を覚ますと異世界に来ているパターンもある。

このパターンにおいても、目を覚ましたのが見知らぬ場所なら異世界と認識できるかもしれない。


いかにもと言ったような中世ヨーロッパ的な、と言うか昔の王道RPG的な世界ならわかりやすい。

しかし、異世界とはいえファンタジーの世界とは限らない。

例えば、三丁目の田中さんの左の瞼が一重から二重に変わっているだけの世界とか。

さらに言えば自分がその田中さんを知らなければ、異世界として認識することは不可能だろう。

もしくは、田中さんが知り合いだったとしても違いに気付かないかもしれない。

気づいたとしても、プチ整形でもしたのかな?で終わると思う。

おそらく一生異世界に来たことに気付かないだろう。

実はそんな気付かない程度の異世界に足を踏み入れている人は多いのかもしれない。


そんなあなたも異世界に来てすでに数十年たっているかもしれない。

昔のアルバムを見ると、幼稚園の時に桜組だったはずなのに梅組になっているかもしれない。

そもそもそんな昔のことを覚えてないし、アルバムもないという人も居るだろう。

あなたは本当に生まれてからずっと同じ世界に居るのだろうか?

誰もそれを証明できない。あなた自身でさえ。


だから、目が覚めた時に違う場所に居るとか。

過去や未来など自分の認識していた日付と違うとか。

自分自身の姿が違うとか。

わかりやすいヒントがあればいい。

そうでないと異世界に来たことに気付かない。

俺の場合はわかりやすかった。

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