第2話 高崎発小山・大宮経由高崎行き
四月第三週。土曜日。
春となり、すごしやすい季節だが、朝方はまだ寒い。自宅から徒歩で最寄り駅の高崎駅へ向かう。高崎駅は、群馬県内でもっとも列車本数の多いターミナル駅。ここから東京・新潟・栃木・長野方面へと列車が発着する。
6時53分発両毛線。普通列車小山行きが四番線ホームに入線している。車両は211系近郊型電車。四両編成。四半世紀ほど前まで、高崎線・東北本線・東海道本線といった大都市間で十五両編成で活躍していたが、今では、四両と短くなり地域間の役目をになっいる。
高崎を定時発車。これから先、終点の小山までの八十四・四キロの各駅に停車していく。
両毛線は、群馬・栃木両県を結ぶ 路線で戦前は沿線で生産・製造された蚕・繭・生糸といった養蚕・織物業の輸送として活用されていた。現在は、電車通勤通学客の足となっている。
車内のロングシートは、ほぼ埋まり、誰もみな、しゃべることなく座る。社会人・学生・外国人労働者と世代・人種と幅広い。
高崎を出てから、高崎問屋町、井野と停車するも列車から降りる人はおらず、乗車する人しかいない。住宅地から畑へと風景は代わりながら、新前橋に着く。
新前橋は、上越線・吾妻線の接続駅であるのと、駅の西側には車両センターが
ある。新前橋を出ると線路は単線になり、右へ大きくカーブしながら、高架橋をのぼり利根川橋梁を渡る。右窓から上毛三山の一つ赤城山が霞んで見える。
前橋で乗客が半数ほど下車するも、それを埋めるように乗客が乗り込んできた。発車すると再び、右にカーブし、南東方向へと加速。あたりは宅地整理された新興住宅団地と農家が点在し始め、その間を麦畑が広がる。左窓から県道もしくは国道のバイパスが線路と並行し、沿線には大型複合施設と真新しい住宅団地が形成され、より一層自動車による移動手段が必須している。駒形、伊勢崎と停車しながら、北東へと進む。桐生手前の国定から学生が増えた。同じ制服を着た学生たちが車内に乗る。先に乗っていた学生を見つけると軽く手を振り、顔には笑みを見せながら、静かに談笑をはじめた。
赤城山と足尾山地の山並みが近くなるにつれいて、緑の濃淡がはっきりとわかり、山の新緑が深くなっている。
高崎から五十分が経ち、渡良瀬川に架かる鉄橋を渡り桐生に着く。ドアが開くとそれまで乗っていた学生たちが一斉に降りてゆく。桐生を出ると足尾山地に沿いながら、栃木県に入る。小俣、山前と町の中を抜けながら足利に着くと再び通勤通学客が乗車してきて、席はすべて埋まり立ち客が目立つようになった。
足利を出ると麦畑が広がる。しかし、その中の一本の道路上に多くの車が一列になり渋滞している。どうやら、足利の次、足利フラワーパークの駐車場に入るための車列のようである。
富田、佐野で学生は列車を下りてゆき、通勤客のみとなった。
車窓からは麦畑と田植え前でなにも植えていない水田が再び広がり、その間を農家と中小、零細企業の工場建っている。
両毛線の線区の大半が単線である。そのため、列車の交互通行なり、駅で対向列車のすれ違いのため数分間停車しなければならない。それが、特に、多いのが富田から栃木間である。二十・三キロの距離で三回停車する。
栃木に着くと東武鉄道からの乗りかえ客が乗り込んでほぼ満員状態となる。住宅団地が増えはじめ南東方向へと進み、思川を渡ると線路は右にカーブして終点小山に8時51分到着。
小山から大宮へと向かう。東北新幹線・宇都宮線・湘南新宿ラインのうち、東北新幹線に乗車するため、新幹線ホームへ。9時18分発やまびこ208号。東京行きの入線を待っていると駅アナウンスで盛岡付近にて強風のため7分遅れての到着を告げられる。
9時25分やまびこ208号が入線。車両はE5系。車内は満席で通路にまで人が溢れている状態。
なるべく、ドア付近にいた方がいいと考えるもデッキは立ち客でいっぱいとなり、身動きがとれない状態だった。
新幹線は、ホームを離れると徐々に加速してゆく。立ち客の僅かな隙間から、畑と家々が高速で左から右へと流れてゆく。
自分と同じように席に座れなかった家族は各自で時間をつくっていた。親はスマートフォンで乗り継ぎ時間の確認と子供たちの世話。子供たちは立体パズルのおもちゃであそんでいる。すると、末っ子の子供がパズルの色を揃えたらしく、その小さくて短い腕で親に見せた。親は笑顔で末っ子を褒めた。
9時40分。大宮着。少しばかり休憩したと思い、改札口を出て西口の広場へと向かった。大宮は中山道の宿場町。鉄道が開業すると車両整備工場と操車場が備わった鉄道都市へと発展した。駅構内のコンコースは人の往来がはげしく、手には大きな荷物を持った旅行者が行き来している。
11時13分普通高崎行きに乗車。大宮を定時発車。左右の車窓からは住宅地がひしめき合い、その間から高層マンションが天高くそびえ建つ。
ネギ畑だけになる。しかし、まだ、作付けされていない畑が多く赤茶色の景色が広がる。
風が吹いているのか、土が風で舞い上がり、秩父山地の山々を霞ませている。
埼玉と群馬を流れる神流川に架かる橋梁を渡り、群馬県に戻ってきた。
右窓から、赤城山と榛名山が霞む。12時42分高崎に到着。
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