日帰り鐡道一周記
キハチチト
第1話 思いたったら吉日と縮小という現実
時間と自由そして金銭には、制限がある。
月曜日の朝から金曜日の夜まで、毎日職場へ行き、勤め、働き、家に帰って眠る。そして、土日祝という、与えられた自由な時間に体を休めて、心を癒す。
だが、しかし、体と心を癒しても、毎週同じことを繰り返している内に段々とそれに慣れてしまい、いつしか癒せなくなる。
何か始めようと思いたち行動に移そうとするも、何から始めるかがわからない。わかっていても長続きしないもしくは、行動に移さないないまま一日が終わるという、負の連鎖に陥る。
貴重で制限のある休日を、いかにして、自分的に有意義に活用するか考える日々を過ごしている内にある結論に至った。
列車に乗って日帰り旅をする。
列車での日帰り旅ならば、ガソリン代と高速道路代の出費はなく切符代のみで済むことができる。あと自動車を運転することによる、精神的肉体的な疲労もない。
そうと決まれば、書店へ赴いて時刻表を購入。
時刻表といっても種類は豊富で、ポケットタイプから電話帳なみのものまである。何冊が読み、吟味したうえ電話帳なみの方を購入することにした。JR
・大手・中小零細私鉄・バス・船・航空と日本全国の公共・交通機関が掲載されていたからである。
家に帰宅して、早速、購入した時刻表を見ながら、どの路線に乗って目的地に向かうか検討しているとあることに気づいた。
地方・地域の路線の縮小化と消失である。
北陸新幹線が金沢まで延伸したことによって、それまで日本海の花形路線だった北陸本線は石川・富山・新潟の三県で、各県ごとに第三セクターへ移管しローカル線化。また、北海道の日高本線・留萌本線と「本線」の付いた路線も廃線・縮小へと向かっていくかたちである。理由は、災害による不通や少子・過疎化で不採算と判断だという。
そのことによって、路線図や地図から線路を示す線が消え、その一帯が交通空白地帯となる。
日帰り旅を計画し、検討している内に鉄道衰退化という悲して厳しい現実を叩き付けられた。
日帰りするにあたり、いくつかの制限を設けた。
まず一つ目に始発時間帯に乗車。これは文字通りに始発電車に乗車すれば、土日祝日の出勤・通学者や国内外旅行者の乗車による混雑する時間帯を避けるため。
二つ目、終着駅もしくは鉄道以外の交通機関がない駅の場合は、早々の乗ってきた列車で戻る。貴重で有限のある時間を極力かつ無駄なく消費することで滞在時間を短くする。また、突発的な災害による交通不通や体調不良・怪我といった不測の事態も避けるためである。
以上の二つの制限もしくは項目を掲げて、日帰り旅を実施することにした。
そして、鉄道による日帰り旅において重要な切符についてである。代表的なのは、青春18きっぷである。しかし、青春18きっぷは季節限定の販売であるのと乗車可能範囲がJR線と一部の交通機関のみと少々使い勝手が悪く、第三セクターや私鉄路線は別途料金が必要と金銭的に厳しい。
今回の日帰り旅には使用できない。
なにか、青春18きっぷの代わりに使える切符はないかと時刻表を読みながら探している内に、ある切符の記載に目がとまった。
それは、JR東日本が期間限定販売している「週末パス」という土日限定のフリーパス。エリアは、関東甲信越と南東北のJR線。第三セクターと一部の私鉄が利用可能。さらに特急券を別途購入すれば、新幹線・特急の乗車可能であると明記。値段は大人一枚八千八百円と、そこまで高額ではない。
早速、最寄り駅の高崎駅へ行き、週末パスを購入。券売機のタッチパネルの操作手順に従い、ものの2,3分で発券された。
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