夏らしいイベント

大学生は、俺のことを見て梨奈さんのお父さんとこそこそ話し始めた。


「顔はいいよね」


「髪型を変えれば」


「それな」


などと話していた。すると、梨奈さんのお父さんが


「この子は、俺の友達の息子なんだ。あそこの美容室で美容師をやってるんだ」


「どうも」

と言われたから、俺は軽く会釈をした。


「この人たち、見た目こんなのだけど腕はピカイチだから」


「とりあえず美容室行こうか」

と言われ歩いて五分くらいの美容室に来た。俺は、生まれて初めて美容室に来た。いつもは、千円カットで切っているからとても緊張している。


「こんなのが似合うんじゃない?」

とおじさんと美容師さんが話し合っていた。


「じゃあ、切って行くよ」

と言って美容師さんは、髪を切り始めた。俺は、昨日全く寝れて居なかったからカットの時に寝てしまった。


「切り終わりましたよ」

と言われ俺は、目を覚ました。俺は、目の前の鏡を見て驚いた。さっきまでと全く違う自分になって居たからだ。


「韓流マッシュにしてみたよ。ロン毛より似合ってるよ」

俺は、驚いた。髪型を変えるだけでこんなに見た目が変わるとは、思わなかった。少し自分に自信がついた気がした。


「海の家に戻ろうか」

と梨奈さんのお父さんが言って、二人で戻ることにした。


海の家に戻ると、俺の父親と梨奈さんが二人で忙しそうにしていた。俺が、店の中に入ると父親が


「どこ行ってたんだ。って髪切ったのか?」


「梨奈さんのお父さんに連れられて美容室に行ってきた」


「そうだったのか」

と話していると梨奈さんが


「ねえ、話してないで・・・。って和樹髪切ったの!?」


「そう。似合ってる?」


「めちゃくちゃ似合ってる」


俺は、梨奈さんにそう言われて少し嬉しかった。生まれて初めて髪型が似合っていると言われた。


「じゃあ、仕事に戻ろうか」


と言ってまた仕事をし始めた。梨奈さんのお父さんはというと、外のテーブルで呑気にビールを飲んでいた。まあ、さっき理由を聞いたからそのまま放っておこう。


なんとか、営業時間終了まで何事もなく仕事を終えることができた。俺は、片付けを終え父親のところに行くと梨奈さんのお父さんとビールを飲んでいた。俺は、外にあるシャワー室でシャワーを浴びた。シャワーを浴びて外に出ると父親と梨奈さんと梨奈さんのお父さんがバーベキュー道具を出していた。


「何してるの?」


「これから、バーベキューやるぞ」

そう言って、俺の父親は、でかい肉をグリルで焼き始めた。こんな肉いつ買ったのだろうか。そんなことを考えていると


「和樹、皿出せ」

と言われ、皿を出すと焼き野菜ばかり乗せてきた。俺は、野菜が嫌いだから


「なんでこんなに野菜おくの?」


「いいじゃないか。野菜も食べろ」

その会話を見て梨奈さんと梨奈さんのお父さんは、笑っていた。


「変わってないなー、和樹くんは」

俺はなんのことを言っているのか全くわからなかった。


「なんのこと?俺、昨日初めて会いましたよね?」


「和樹くんは、覚えていないか。川辺でバーベキューをしたのを覚えてないか?」


俺は、思い出した。あれは、今のところに引っ越す前に父親の友人を集めてバーベキューをやった。その時にいた人の一人が梨奈さんのお父さんだった。


「あー、今思い出しました」


「あの時、和樹くんは野菜を食べなくて梨奈は肉を食べなかったんだよなー」


「お父さん、私のことはいいから」

と梨奈さんは、少し恥ずかしそうに言った。その姿が少し可愛かった。


「今は、ちゃんと肉も食べるから」


「そうだな」


そんな話をしていると、でかい肉が焼けたみたいだ。その肉を父親は切り分けてみんなのお皿に分けた。すると梨奈さんのお父さんが


「なんか、俺の少なくね」


「お前は、太ってるから野菜食え」


「そんな太ってねえよ。BMI値は28だぞ」

自慢できる数値ではなかった。なぜそんなに大きな声で言えるのか不思議に思った。


「お前だって、太ってるだろ?」


「俺はな、BMI値は29だ」


「俺より太ってるじゃん」


大人の醜い争いが始まった。俺がその戦いを見ていると


「放っておいて食べない?」

と梨奈さんに言われ、


「そうだね」

と言って二人で食べ始めた。俺が野菜を避けながら肉を食べてると、梨奈さんが俺の野菜を食べ始めた。


「和樹もこうしてくれたよね」


俺は、思い出した。あの時、肉を避けて野菜しか食べてない女の子がいた。

俺は、気になったからその女の子に声をかけた。


「肉食べないの?」


「私、肉が食べられない」

そう言ったから、俺は女の子のお皿に乗っている肉を全て自分のお皿に乗せた。


「あー、思い出した」


「もー、思い出すまで時間かかりすぎ」

と笑いながら梨奈さんは言った。


梨奈さんと二人で食べてると、


「おーい、スイカ割りするぞ」

と父親が声をかけてきた。父親の方を見ると、ブルーシートに大きなスイカと木刀がおいてあった。


「俺が先頭を切って割るぜ」

と言って梨奈さんのお父さんは、木刀を持ってぐるぐる回り始めたが酒が入っているからかスイカより手前で盛大に転んでしまった。その姿を三人で笑っていた。


「次、梨奈ちゃんやりな」

と父親がいい、梨奈ちゃんが木刀を持ってぐるぐると回り始めた。回った後、俺たち三人で右だ、左だなどと色々と言っていた。


「もー、どっちー?」

などと言いながら、梨奈さんは棒を振った。するとスイカが綺麗に割れた。


「スゲー」

と三人の声が同時に重なりハーモニーみたいになってた。


割ったスイカを切り分け、みんなで食べた。今までこんなことをしたことがなかったからとても新鮮だった。いつもは、早く終わってほしい夏休みだったが今年は、ずっと続いてほしいと思ってしまった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る