住み込みでバイトさせて

「ここが和樹の部屋?」


「狭くてごめん」


俺は、海の家の二階にある俺の部屋に飯塚さんを入れた。俺は、初めて女の子を部屋に入れるからとても緊張している。


「あんまり住んでる感がないね」


「この時期しか住まないからね」


幸いにも、ここにいつも住んでいるわけではないからあまり物がない。だからと言って油断はできない。ことによったら何か変なものがあるかもしれない。俺は、ドキドキしながらこの部屋にいる。すると


「これ何?」

と飯塚さんが聞いてきた。何か変な物があったかと思い俺は、真っ青になった。何かと思って見ると小学校の時の卒業アルバムだった。


「小学校の時の卒業アルバムだ」


「中見てもいい?」


「ちょっとやめてほしいな」

なぜなら、今の俺と違いすぎてどこで間違えたのか考えてしまうからだ。


「わかった」

飯塚さんは、やけに素直に受け入れてくれた。


俺は、朝まで休むことなく仕事をしていたからとても疲れが溜まっていて眠たくなってきた。俺は、ベットの上で寝っ転がると飯塚さんが隣にきた。


「ちょっと・・・」


「一緒に寝れるね」

俺は、ベットの上から動けなくなってしまった。


「俺、床で寝るよ」


「だーめ。私の寝るの」


そう言って、飯塚さんは寝てしまった。シングルベットで男女が二人で寝るのは完全にアウト。よく考えると、俺の父親と飯塚さんのお父さんがいるんだぞ。俺は、そんなことを考えていたから一睡もすることができずに朝を迎えてしまった。


「和樹、おはよー」

と飯塚さんがベットの上で微笑みながら言った。俺は、その姿を見てとても可愛いと思った。


「顔赤くなってるよー」


「飯塚さんが隣にいるからでしょ」


「ねえ、苗字じゃなくて名前で呼んでほしいなー」


「梨奈さん」


「よくできました」


俺は、女子の名前を苗字以外で呼んだことがないからとても恥ずかしい。たぶん、めちゃくちゃ顔が赤いだろう。


「とりあえず、下に降りようか」

と言って俺と梨奈さんは、一階に降りた。


一階に行くと、父親と梨奈さんのお父さんは、テーブルの上で爆睡だった。俺は、呆れて机の上のコップをキッチンに持って行った。その時、


「お父さん、いい加減にして」

と言って梨奈さんは、バケツに入った水を二人の頭にかけた。俺の父親と梨奈さんのお父さんは、何が起きたのかわかっていなかった。


「なんだ、雨漏り?」


「お父さん、寝ぼけてないでしっかりして!」


「梨奈が水をかけたのか」

と言って、梨奈さんのお父さんは、また寝てしまった。


俺の父親は、ビクともしなかった。一瞬意識がないのかと思い俺は、声をかけに行った。


「父さん、もう朝だよ」

というと父さんは、真っ青な顔をして起きた。


「やばいじゃん」

なぜなら、あと三十分で開店しないといけないからだ。父親は、慌てて、キッチンに溜まっている洗い物を洗い始めた。洗い物の音で梨奈さんのお父さんは、目を覚ました。父親は、洗い物を俺に任せ違うことをやり始めた。俺は、皿洗いをしている時、


「和樹のお父さんとお父さん、ちょっときて」

と二人を呼び出した。俺はその様子を少し見ていた。


「羽目外しすぎじゃない?」


「ごめんなさい」

大人二人がギャルに謝っている姿が面白くて俺は、キッチンで一人笑っていた。


「なんでもいうこと聞くから許してくれ」

と俺の父親がいうと


「じゃあ、ここで住み込みのバイトをやらせて」

と梨奈さんが言った。


「本当にそんなのでいいのか?」


「うん、今日から三日間バイトさせて」


「わかった」


嘘だろ。梨奈さんが住み込みでバイト。俺の心臓と自制心が持たないかもしれない。でも梨奈さんのお父さんは、いいとは言ってなかったよな。すると


「梨奈がそういうから頼んでもいい?」

と言った。


「いいよ。時給良くないけど」


「お願いします」


ということで俺と父親と梨奈さんで開店の準備をすることになった。梨奈さんのお父さんはというとテーブルの上で寝てしまった。俺は、寝不足なんだろうなと思った。俺は、キッチンで食材の下拵えをしていた。すると、梨奈さんが


「私も手伝う」

と言って、野菜を切ったりしてくれた。料理ができるとは、意外だった。


「料理できないと思ってたでしょ」


「そんなことないよ」


「お父さんがいつも忙しそうにしてるから料理は、私がしてるんだ」


俺は、梨奈さんのことばかり見ていて、包丁で指を切ってしまった。


「イテッ」

というと、


「大丈夫?」

とポケットから絆創膏を出してくれた。俺は、手を洗い絆創膏を貼った。キッチンに戻ると全て食材が切り終わっていた。梨奈さんは、とても仕事が速いと思った。


十時になったから店を開けた。店を開けるとすぐに人が来て接客に追われていた。昨日以上に客が多いから少し驚いた。俺は、ひと段落したと思い梨奈さんの方を見ると、長蛇の列になっていた。俺のところに並ばないでみんな梨奈さんのところに並んでいた。それだけ、梨奈さんは美人ってことなんだよな。すると、俺のところに梨奈さんのお父さんが来た。


「和樹くん。俺も三日間居候してもいいかな?」


「俺はいいですけど。どうしてですか?」


「実は、妻と喧嘩してしまって、家にいづらいんだ。せっかく会社から五連休ももらっといて居づらい家にいるのも嫌だから・・・」


「なるほど」

梨奈さんのお父さんも色々と苦労していることがわかった。しかし、このご時世で五連休も取れる会社があることに驚いた。


「和樹くん、今暇かい?」


「まあ、空いてますけど」


「おじさんについて来て」

そう言われ、俺は梨奈さんのお父さんについて行った。すると、チャラい男子大学生がいた。俺は、これから何をされるのだろう。

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