第3話 触ってもいいよ

カランカラーン

//SE お店のドアを開けた時の鈴の音



「いらっしゃいませー! ようこそ、癒し屋 蘭へ」//明るく



「あ♡ お客様、また来てくださったんですね」


「わー、嬉しいな!!」




「……あ、ご指名は……どの女の子になさいますか?」//自分じゃない可能性に気付いて不安そうに


「え、私ですか!? わあ、嬉しいです!! じゃあ、今回も精一杯癒させていただきますね♡」




「あれ? 今日はお見かけした感じ、身体のお疲れというより精神的なお疲れのご様子ですね」


「あ、当たってました? へへへ。そんな褒めないでください。調子に乗っちゃいます。……じゃなくて! そんな時にまた来てもらえて嬉しいです。今日は心の方を中心に癒させていただきますね」





「AコースかBコース、ご希望はございますか?」


「うんうん、なんとなくもやもやしている気持ちをスッキリさせたいんですね」


「かしこまりました。じゃあ、今日もメイにお任せください! 精一杯、癒させていただきます!」


「それでは、お部屋にご案内致しますね♡」




//SE 静かに歩いて行くふたりの足音


//SE ドアが開く音




「はーい、ここが本日のお部屋です!」


「奥にもお部屋が続いてるんですけど、それは後程のちほど行くとして、まずはお茶でも飲みながらお話しましょ♡ 愚痴でもなんでも聞きますよー!」




「それでそれで? なにがあったのー?」


「なんかちょこーっと、イライラしてるでしょ。職場でのこと?」




「うんうん、なるほどー。同僚のためにサービス残業してたのに、上司には仕事の効率が悪いからサービス残業になるんだとか文句言われたんだ」


「えーそれは確かに もやもやしちゃうね」




「事情も聞かずに頭ごなしに決めつけて文句言われて、だけど相手は上司だから文句も言えず我慢したんだ」


「んー! えらいじゃんー!!」


「メイはその場にいたわけじゃないけど、メイが知ってる限りでは、お客様は優しいし頑張ってるし、えらいと思うよ?」




「その上司の人も、もっとお客様の話をちゃんと聞いてくれたらいいのにね。でも、そういう人って、どうしたってそういう人だからさ、こちらがどんなに期待しても変わらないんだよね」


「でもでも、お客様ばかりがずっとイライラしてるのも嫌じゃん? だーかーら!」


「今日は、その嫌な気持ちを発散させて、スッキリしちゃおー!!」




「ってことで、お隣のお部屋行こっ」


//SE 立ち上がる音


//SE 扉を開ける音


//SE にぎやかな音が聞こえてくる




「じゃじゃーん!! ミニゲームセンターだよー!!」


「パンチングマシーンに、エアホッケーに、シューティングゲームに、もぐらたたきー!!」




「前回、肩凝りや睡眠不足もおありの様だったので、身体を程よく動かせてストレス解消もできて楽しめる、一石鳥です♡」


「ね、ね、一緒に遊ぼ―? どれからにする??」


「ここにあるゲームはどれも無料で、コンティニューもやり放題な上に設定甘めだからすーごく爽快感味わえると思うよ♡」




「……ん、まずはパンチングマシンする?」


「じゃあ、グローブ付けて」


「用意はいい? スタートボタン押すよ?」




「Ready Go!」//SE ゲーム内の機械の声


//SE 主人公が勢い良くパンチングマシンにパンチをする音


//SE ポイントが出た雰囲気の音



「おー! すごい!! 198kgfだって! もうちょっとで200だよ!」


「もっかいもっかい! がんばってー!」




「Ready Go!」//SE ゲーム内の機械の声


//SE 主人公がさっきより勢い良くパンチングマシンにパンチをする音


//SE すごいポイントが出た雰囲気の音



「きゃー! お客様すっごい!! 234kgfだって! こんな数字出す人初めて見たよ♡」


「お客様つよいんだね! かっこいいー♡」




「ね、ね、次はエアホッケーやろ? メイ、負けないよー?」


「じゃあ、スタートボタン押すね」


//SE ゲームの開始を知らせる音




「ちょっとお、お客様、メイのおっぱい見てるでしょ。えっちー」


「他の人だったら許さないところなんだからね。あはは」//笑いながら



――カコン //SE エアホッケーの円盤が出て来た音


「あ、円盤出て来たよ。メイからでいい?」


「じゃあ、いくよー!」




――カコンカコンカコン //SE しばらく円盤を打ち合う音


――ガコーン //SE 円盤がゴールに落ちた音


「やったー! まずはメイが一勝ね♡ お客様、メイのおっぱいばっかり見てるからだよー?」




「あはは、ねえ、お客様が勝ったら触らせてあげよっか」


「あー! 急に真剣な顔になった! でーも、メイも負けないんだからねー♡」




――――カコンカコンカコン //SE しばらく円盤を打ち合う音


「あ、待って待って、おっと、きゃあ!」


――ガコーン //SE 円盤がゴールに落ちた音


「あああ、メイ、自分で自分のところ入れちゃったあああ。次取られたら負けちゃう!!」




「行くよー? それ!!」


――カコーン! カコンカコンカコン //SE しばらく円盤を打ち合う音


――ガコーン!! //SE 円盤がゴールに落ちた音




「きゃああああ、負けちゃったああああ。お客様途中から急に強くなったね!!」



「え? なになに、その期待の眼差し!」


「勝ったから触らせろとでも言いたげだね?」


「もうー。仕方ないなあ」




「……特別だからね?」


「はい、触ってもいいよ」




//SE 触ってる感じの音


「んん、もー長いですー。おーしーまーい」



「ね、今日は楽しめた? スッキリ出来た?」


「それならよかった」


「ご来店された時より表情明るくなったね♡」




「今日も……お支払いはハグがいいな。ぎゅううううって、して?」//上目遣い



//SE ハグする音


「へへへ、確かにいただきました♡」


「……また来てね♡」//耳元で囁き

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