第4話 恋人体験 ハグ&キス


カランカラーン

//SE お店のドアを開けた時の鈴の音



「いらっしゃいませー! ようこそ、癒し屋 蘭へ」//明るく



「あ♡ お客様、また来てくれて嬉しいな!!」



「えっとえっと、今日のご指名は……?」//自分だよねと期待した感じで


「へへへ、今日も私を選んでくれて嬉しいです♡ じゃあ、今回も精一杯癒させていただきますね!」



「えっとえっと、それで今日は……あれ? どしたんですか? ちょっと、悲しそう」


「……あ、失恋したから癒して欲しい?」//少し切ない感じ



「……そうなんですね。分かりました。AコースとBコースどちらになさいますか?」


「はい、今回はAコースご希望ですね。分かりました。どのような内容をご希望ですか?」



「えっと、……あ、はい、分かりました。“恋人体験” ご希望ですね」//恥ずかしそうに


「……え? 嫌とかじゃないです。その……前にも言いましたけど、お客様って私のタイプだから……ちょっと、恥ずかしいだけです」 //照れながら



「では、お部屋にご案内しますね。こちらへどうぞ」



//SE ふたりの歩く音


//SE 扉を開ける音



「はい、こちらが本日のお部屋です。テレビにソファーにベッド……普通のお部屋っぽいでしょ? なんせ恋人体験ですから♡ 今日はこのお部屋で甘々に癒して差し上げますね♡」//気を取り直して明るく


「あ……それとも、外でデートプランの方がいいですか? それだとオプション料金かかっちゃうんですけど……」


「お部屋プランでいいですか? よかったです。それでは、早速はじめましょっか」



//SE メイが歩く音


//SE メイがソファーに座って隣に座るようにポンポンとシートを叩いて促す音



「……じゃあ、お客様、ここへ来てください」



//SE 主人公がメイの元に歩く音


//SE 主人公がメイの隣に座る音



「じゃあ……今日は私を彼女だと思ってくださいね♡ 何がしたいですか?」


「このままお話しててもいいですし、膝枕して耳かきでもいいですし、ゲームしてもいいし……」


「え? ハグがしたい?」



「先払い……ってことですか? ……分かりました。じゃあ、お客様のハグに見合った分のお返しができるように、精一杯務めさせていただきます! 好きなだけハグしてください」


//両手を広げて受け入れるポーズ


//SE ハグする音



「ん……お客様、長い、です。いえ、嫌とかじゃなくて……こんなにいただいちゃったら、時間内にお返し出来るか……ん、……ひゃあっ!」


//SE 後ろに倒れる音


「もお、倒れちゃったじゃないですかあ。……こういうの、押し倒された形って言うんですか?」



「……お客様? ……元気ないですね。そんなに……ショックだったんですね」


「……仕方がないなあ。じゃあ、このまま頭撫でてますね。こうしてたら、お客様は癒されますか?」


「そうですか。……それならよかったです」




「……失恋なんて、信じられないです。こんなにいつも頑張ってて、優しくて、かっこいいのに」


「……ちょっと……えっちですけど」



「ねえー、前回も思ったけど、お客様っておっぱい好きですよね。いつまでメイのおっぱいに顔埋めてるんですかあ。もう、仕方ないなあ。……特別ですからね?」



//SE 頭を撫でるSE



「失恋って、思ってる以上につらいですもんね。だから、メイでよかったらたくさん甘えて癒されて欲しいです」


「他になにかしたい事とかして欲しい事とかありますか?」




「え? 私と……キスしたい? ……それは……それだとメイがお客様のエネルギー吸っちゃうから……もらいすぎになっちゃいます」


「いいんですか? ……んー、お客様がしたいなら……じゃあ、してください」



「えっ私からですか?」//恥ずかしい



「それは……恥ずかしいです。でも、もらった分お返しする意味では、……『お客様のして欲しい事』として……じゃあ、失礼しますね。……ちゅ」



「え? もっと? だめでーす。私、サキュバスですよ? これ以上したらお客様のこと食べたくなっちゃう。……そんなことしたらお店、クビになっちゃいます」


「でも、今日はたくさん先払いしてもらっちゃったので、今度出張サービスさせていただきますね」



//SE 何かを取り出す音



「私を呼び出したくなったらこの笛を吹いてください。人間の耳には音は聞こえないですけど、私にだけ聞こえる特別な笛です」


「今、私あんまり指名とかないんで、いつでも呼んでもらって大丈夫です。空き時間だったらすぐに飛んでいきますね!」



//SE プルルルル―― 部屋の中にある呼び出しベルの音



「あれ? もう終わりの時間? ごめんなさい、珍しくご指名入っちゃったみたいです」


「あ、言ってなかったですね。一応お出迎えからお見送りまでで一時間制で、次のご指名が入ってると一時間経ったら今みたいに呼び出しベルが鳴るんです」


「あーあ。次のご指名がなかったら、お客様にならいくらでも延長したいところだったのに。なーんて、こんなこと言ったら指名してくれた人に失礼ですね」




「……なんだか今日はすごく早く感じます。もう少し一緒にいたかったなあー。……いつでも笛、使ってくださいね。どこへでも会いに……じゃなくて、癒しに行きます!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る