血塗られたシステム 決着編其の2 (約1.3000文字)



ー本社要塞、研究区画警備室ー





「異常はないか?」「あぁ……」


兵士たちがお互いの無事を確かめる。

襲撃者の侵入を伝える警告アナウンスが

放送されてから暫く経ったが、曲者は

どこかに隠れたのか続報はない……

誰かが撃退に成功したのだろうか?


「お、おい、誰か手を貸してくれっ

さっき怪しい奴を見かけたんだよ!」


そんな希望的観測を打ち砕くように、

ひどく慌てた様子の同僚が現れる。


「そいつは今どこにいるんだ?」


「目の前にいるよ」


ピシッ


透明な何かが兵士たちの視界を横切ると、

彼らの喉笛が一瞬にして斬り裂かれた。


「「はうっ」」


肺に溜まった空気が気道から溢れる音が

広い廊下に鳴り響き、物言わぬ肉塊と

化した兵士たちが血を吹き出して死ぬ。


「前世でステルスゲーをやり込んでた

甲斐があったぜ……最新作が出る前に

癌が悪化してくたばっちまったがな。」


男の手には魔法によって生み出された

ナイフ状の氷塊が握られている。

傷を凍らせ、用済みとなれば跡形もなく

溶けて無くなる武器は暗殺に最適だ……


「その…濡れ衣で賞金首になる前は

海外の軍隊にでもいたのか?」


「いや、その前も冒険者やってた。

公には出来ない依頼ばっかし受けてたら

お偉いさんに都合の悪い事を色々と

知りすぎたみたいで謀反人扱いよ。」


「待てよ、裏切られたのに同じ職場で

普通に働いて依頼を受けてるのか?」


「半分は俺が殺して、もう半分は

シンが豚箱にぶち込んだからな。」


「えっ……僕が調べた限りじゃ、

不正がバレて自殺した事になっt」


「あぁ、実質的に殺したって事な!

処刑許可出てないのに人殺しなんか

しちゃダメだろ……非常識じゃん。」


アウトキャストは兵士から刀を奪い、

サイズの合うタクティカルヘルメットを

見繕って自分のものと交換した。


「しかしこの刀カッコいいな……

刀身が人工クリスタルで出来てるお陰で

金属製のやつより軽いし。」


「それは対冒険者軍刀だね、

気に入ったなら後で専用のを作るよ。」


研究区画は警備の数が多い上、

正面突破しようにも練度の高い兵士や

外部から雇われた冒険者が邪魔となる。


アウトキャストは苦戦による消耗から

正面衝突を避ける為に変装を選んだが、

その際に愛用のスコップを封印せざるを

得なかったのだ。


「警備兵以外の社員証か白衣があれば

どうにかなるかも知れないけど……」


「今警備用クリスタルを確認してるが

オフィスには誰一人写ってないし、

タイムカードを見る限り事務員やら

整備士やらは全員帰るか避難してる。

変装を警戒したのか更衣室も空だ。」


アウトキャストは冷蔵庫を開けると

中にあったエネルギー・バーを齧り、

オレンジサイダーを口に含んだ。


「もう全員ぶち殺すしかない……

Sランク冒険者が来たら死ぬけど。」


アウトキャストは防具を脱ぎ捨て、

白い防刃レインコートを羽織ると

仮眠室で寝息を立てていた警備兵に

刀を突き立てながら呻く。


「僕からも余裕があったら手伝うよう

皆に言っておく、持ち堪えてくれ。」


「悪いな、足引っ張っちまって……よォ!」



ズ バ ァ ッ!


 

アウトキャストはサイダーを飲み干して

警備室から出て行くと、視界に入った

兵士に乱雑な袈裟斬りを叩き込んで

真っ二つに引き裂く!


「く、曲者だぁっ」


兵士がクロスボウを構えるより早く

刀の一振りで右腕を斬り落とし、

関節技を仕掛けて来た兵士の顔面に

ハイキックを叩き込んで脳を揺らす!


「貰った!」


キィンッ!


大型ハンマーを持った兵士が

アウトキャストに殴り掛かり、

打撃を受け止めた刀が砕け散る!


「何だこのゴミ、一発で折れたぞ」


「死ねっ!」


「まぁいいや」


アウトキャストは大型ハンマーの

一撃を氷の刃で弾き、回し蹴りで

兵士の体勢を崩し距離を詰める!



ドスッ



折れた刃を掴み取って脇腹に刺し、

膝蹴りで内臓まで押し込んで殺害!


「対冒険者軍刀は相手に刺した後に

刀身を砕いて刃の摘出を難しくする

仕組みなんだけど……」


「まず刺さらなきゃ意味ないだろ。」


次々と兵士を窓から投げ落としながら、

アウトキャストが不機嫌そうに語る。


「しかし参ったな、ここに来るまでに

魔力を消費し過ぎた……早いとこ

片付けて他を手伝いたかったんだが。」


最後の一人が前蹴りで昏倒し、

アウトキャストは片膝をつく……

思えば苦しい道中であった。


最初に立ち塞がったのはB.O.I.Sの

被験体三体……手練れの冒険者を

複数人相手取るに等しい激戦だったが

頭を殴った事で一体の人格が復活し

仲間割れを起こした為、必然的に

2対2の状況が実現し勝利。しかし

エイジの要望もあって共闘後は

別行動を取る事となったのだ。


次に現れたのは彼の足元に転がる

アインハルス社の精鋭部隊たち……

冒険者でこそないが、強力な武装と

練り上げられたチームワークに

苦戦を強いられ、変装からの奇襲を

余儀なくされた強敵だった。


「あらあら……お疲れのようね?」


彼の頭上から女の声が響く。


「…女一人くらい、簡単に殺れる。」


魅了チャーム


「ぐあっ!?」


アウトキャストは立ち上がろうと

するが、女の目を直視して頭を抑える。


「キャハハハハッ!あのレッドラムの

右腕と聞いて警戒したけど、所詮は

人間のガキね……物理攻撃しか脳のない

ゴリラといい勝負をしたところで、

私のような本物の夢魔には無力……」


血涙を流して痙攣する少年の頭を

踏みつけ、サキュバスが笑う。


「可愛いワンちゃん……答えて、

貴方の飼い主は誰かしら?」


「シンビジウム」


「えっ」


ブ ォ ン !


狙い澄ました氷の刃がサキュバスの

髪を散らす……


「この世で俺に命令出来るのは唯一人、

シンビジウム・バアル・イーラだけだ」


目元を拭いながらアウトキャストが

ゆっくりと立ち上がる。


「半年前、奴の財布を拾ったんだ……

ただそれだけだった。なのに向こうは

俺の顔を覚えてた……無罪の証拠を

集めて俺の懸賞金を撤回させたんだ。」


「無罪にしてやると言われた時、

俺は裏切られると思って先手を打った。

で、ぶちのめされて……目が覚めたら

無罪になってた、馬鹿みたいだろ?

何の見返りもないのに助けたんだ。」


「くっ、来るな!」


サキュバスの投げたナイフを蹴りで

弾き返しながら、幽鬼のように

覚束ない足取りで距離を詰めてゆく。


「馬鹿みたいな事をやり抜くってのは

死ぬ程カッコいい……俺には無理だ、

ラノベの主人公やRPGの勇者じゃない。

だが勇者は俺を選んだ……」


パキ……ミシッ……


アウトキャストの持つ氷の刃が

片手剣と呼べるサイズに成長する。


「どんなに救いようがない屑でも

かけられる資格のない言葉を

かけられた人間はもう逃げられない、

ソイツが金塗れの殺し屋でもな。」


「人間風情に魔界貴族の従者など

務まる筈がない、何かの間違いよ!」


「間違い以外に考えられねェ……

前世では何も出来ず癌で死に、

異世界では力に溺れ堕落した俺が、

正義とかいう馬鹿みたいな物の為に

命懸けで戦ってる女に頼られた!」


死に至る魅了チャームオブデス!」


再び魅了魔法が放たれるが、

アウトキャストは氷の剣を構えて

これを正面から迎え撃つつもりだ!


破竜氷矛バルムンク!」


ギ ィ ン !


「例え間違いでもよォ……」


魔力を込めた眼光が直角に弾けた!

高い魔力によって研ぎ澄まされ、

ダイヤモンドの数倍の硬度まで

到達した氷が光を捻じ曲げたのだ!


「助けてやりてェだろうがァ!!」



ザ シ ュ ウ ッ ! !



肉を切断した確かな手応えと共に

サキュバスの血飛沫が凍りつく……


「ハァ……ハァ……一芸特化ってのは

中々に厄介なモンだよな……!」


アウトキャストはそう呟いた後、

グロテスクな氷像からポーションを

奪い取って一気に飲み干した。


「ぷはーっ!我ながら冷えてるぜ!

不味い飲み物は冷やすに限るな!」


はっきり言ってこの世界の回復薬は

クソ不味い……臭い薬草を煮詰めて

大量のスパイスと砂糖を入れるんだ、

美味いと感じる要素が1mmもない。

 

湿布と蜂蜜とシナモンをミキサーで

グチャグチャにかき混ぜたものを

想像して貰うと分かりやすい筈だ。


「さっきから誰に話してる?」


無線越しにエイジが尋ねる。


「いいだろ、誰が相手でも……

この先にいる奴をぶちのめせば

重役の財布は俺のものだ。」


アウトキャストは護衛を窓から

投げ捨て、拳を固めながら笑う。



「あぁ、だが気を付けてくれよ。

ここの警備主任は冒険者ギルドから

要注意人物としてマークされていた

危険な男だ、さっきの護衛よりも

戦闘能力は上の筈……」



ド ォ ン !



エイジが警告した次の瞬間、壁が

音を立てて崩れ落ちアウトキャストが

20mほど吹き飛んで倒れる!



「あーん?」



土煙の中、何事もなかったかのように

立ち上がるアウトキャストだったが、

目の前の光景に思わず硬直した。

 


「グルルルゥ……ッ!!」



体高だけで3mは下らない巨大な

ライオンがいたのだ……それもただの

ライオンではない、背中から山羊の

頭を生やし、蛇の尾を持つライオンだ。



合成獣キメラか……!」



シンビジウムから魔術を教わった際、

合成獣の話を聞かされた事があった。


黒魔術による生体錬成で造られた

禁忌の戦闘獣キメラ。その歴史は古く、

1000年前の戦争では既に実用化され

1500年前に書かれた東洋の医学書にも

似たようなスケッチが存在する。


兵器としての性能は高かったが、

各地の戦乱が落ち着いた後に人道的な

観点から法改正がなされ、多くの個体が

処分される事となったが、現在でも

権力者の番犬としての需要があり

秘密裏に製造している輩は大勢いる。



「……中々強そうな冒険者だな、

ま、せいぜい生き汚く足掻いて

我が社のデータ収集に協力してくれ。」



キメラの首輪から男の声が響く。

恐らくは重役の一人だろう……



「クククッ、まるでローマ帝国の

コロセウムだな……面白ェ!」



アウトキャストは氷の刃を投げ捨て、

真っ白な冷気を放つ両手を構えた!



「笑ってしまう、ガキが猛獣相手に

丸腰で勝てるとでも思ってるのか?」



「ネコが猿に勝てる訳ねーだろ。」



「思い上がるなよチンピラァ!!

ボリス、そのクソガキを食い殺せ!」



「ガルルッ!!」



軍刀のように鋭く研がれた爪が

ライオンの筋力で振り回される!



ズ ン ッ !



0.5秒前までアウトキャストがいた

場所の金属壁が引き裂かれ、

剥き出しの配線から火花が散る!



(とは言ったものの何発も食らって

やる訳にはいかねェな、この威力…)



「キシャーッ!」



蛇の噛みつきを巧みに受け流し、

アウトキャストは油断なく敵を睨む。


ライオンの攻撃はシンビジウムと

比べる程でもないが、蛇の尾が手数を

補強し山羊の頭が死角を無くす……

一度でも被弾すれば攻撃が連鎖し、

無視できない損害を負うのは確実だ。



「ガオォッ!!」



掴みかかって来たライオンの爪を

左腕で防ぎ、残った右腕で鼻先に

ロシアンフック(手の甲を使った打撃)

を叩き込んで怯ませる!



「グォォ……ッ」



腕を覆う鋭い氷の殻で顔面の皮膚を

チーズグレーターのように削り取り、

激痛でライオンが怯んだ隙に離脱!



「根性ねェな、女だって耐えるのに」



「シュルルッ!!」



アウトキャストの挑発に応じるように

尾の毒蛇が襲い掛かる!



「財布にしてやるよっ」



アウトキャストは側転で噛みつきを

避け、回し蹴りで反撃! 



ブシュッ



「ぐあっ!?」



しかし蛇が吐き出した毒液の塊が

アウトキャストの顔面に命中!



「コイツの尻尾には海外から輸入した

毒吐きコブラの遺伝子を入れてある!

これで両眼は確実に潰れた……

さぁ、ここからは残虐性のテストだ!

殺れっボリス、惨たらしく殺せ!」



「グオォォォォッ!!」



ライオンの爪がギロチンめいて

勢いよく振り下ろされる!



ブ ゥ ン !



「えっ」



ライオンの一撃が虚しく空気を裂き、

首輪に内蔵されたカメラの向こうで

研究員が唖然とする。



「待てよ、ここからが面白いんだ。」



バキッ べリッ



アウトキャストは凍り付いた毒液を

自分の顔面から引き剥がす。



「凍っちまえば皮膚やら目玉やらに

染み込んで悪さする事もできねェ訳だ…

少しばかり産毛が抜けて痛ェがな。」



「ボ、ボリス……何をやっている、

さっさとこの男をぶち殺せぇっ!」



「ガルルゥ!!」



アウトキャストとキメラは四つで組み、

まるで相撲のように睨み合う!


しかし、摩擦係数が少ない氷の塊が

相手ではライオンの筋力を完全に

生かす事は不可能に等しい!

容易く攻撃を受け流され、そのまま

勢いよく投げ飛ばされる!



「馬鹿な……なぜ蛇が動かない!?

お互いに動きが止まっているんだ、

今がチャンスの筈なのに……」



研究員が慌ててカメラを切り替え

キメラの背後に視点を移すと、

そこには茹でられたナスのように

ぐったりとした蛇の姿があった。



「し、しまった……蛇は変温動物、

氷魔法で周囲の温度が下がったから

低温下では筋力を維持できない…!

貴様、まさか最初から……」



「腕っ節に自信がないんでなァ……

少しばかり算盤を弾かせて貰ったぜ。

お望み通り残虐性のデータを取らせて

やろうじゃねェか、えぇ?」



「フン、喋れるうちに粋がっていろ!

少しは腕が立つようだが、ボリスに

敵う人間はこの世に存在しない!」



プシュッ



キメラに装着された首輪から奇妙な

音がした途端、その目が真っ赤に

充血し、立て髪が一斉に逆立つ!



「グルオォォォォォンッ!!」



咆哮で窓ガラスが激しく揺れ、

電球に無数の亀裂が走る!



「ハハハハッ!ボリスには最先端の

人工臓器を移植してあるんだ……

普通のキメラなら三回は死ぬ計算の

ドーピングだって余裕で耐える!」



「その鳴き声はボリスか…まずいな、

そいつはドーピングの時に凶暴化して

飼育員を3人も殺してる危険な奴だ。

こっちまで声が聞こえた辺り、遂に

本気を出したって事らしい……!」



「そんなの見りゃ分かんだよ!

で、コイツの豆知識は?」



「ボリスに使われている増強剤は

未認可の試作品、凶暴化という大きな

副作用をカバーする為に電極付きの

首輪である程度動きを制御してる……

破壊すれば合理的な判断力を失って

後先考えずに暴れ回る筈だ。」



「面白い賭けになりそうだな……

凶暴なライオンがスタミナ切れを

起こすまで生きていろってか?」



「勿論、限界なら出直してもいい。

他の三人や僕が加勢すれば勝機は」



「いいや、俺一人の手柄にさせて

貰おうか……このデカブツの首なら

シンへの言い訳にも足りる。」


「……止める資格なんてないけど、

帰ったら何か奢らせてよ。」


「ああ、サンキューな。」



アウトキャストは自身が生み出した

氷の仮面を被り、白い目を光らせた。



「生まれた事を後悔させてやるよ」



「ガオォォ!!」



「来い!」



ギィン……ガッガッガッガッガッ!



ボリスが大型動物とは思えない速度で

ダイヤモンドチタン製の爪を振り回す!



「オラオラオラァ!!」



アウトキャストは耐久力に任せて

正面からの打ち合いを展開し、

脳細胞をフル回転させる……


彼が得意とする徒手の格闘術は

前世の趣味であったスポーツ観戦…

特に空手や総合格闘技の試合から

着想を得た対人向けのものだ。


故に異常体質を持った異種族や

体格差の大きい野生動物などが

相手では決定打に欠けており、

真価を発揮できない。


こんな時、シンビジウムが居れば。



苦痛を味わう間もなく命を奪い、

恐怖を感じる暇もなく失神させる。

この猛獣に勝てる最強の一撃を

アウトキャストは知っていた。



(今の俺なら……出来るかな?)



彼女が学生時代に編み出した

魔術は何れも優れたものであったが

その中に致命的な欠陥のある呪文が

一つだけ存在した。


身体強化の上位術式を一部改変し、

本来全身に行き渡る筈の強化を

片腕に集中させるというものだ。


詠唱を簡略化した上で一撃の威力を

数倍に増加させるという効果だけに

注目すれば、まさに理想的な魔術……

しかし、これが流行する事はなかった。


彼女の肉体強度が前提だからである。


数年前、彼女の制止を聞き入れずに

この魔法を行使した一人の術師がいた。


詠唱を始めた直後に彼の腕は破裂し

大量の魔力が逆流、肥大した筋肉が

全身の表皮や骨格を内部から破壊する

惨事となったのだ。


治癒師がいた為に命は助かったものの

術師の右腕は骨格の形成異常を起こし、

完治には数年間を要したという……



「ま、やらなきゃ死ぬよな……」



アウトキャストは氷の殻で

自信の右腕を重点的に強化し、

大振りのテレフォンパンチを構える。



「ハハッ、頭おかしいんじゃないか?

ライオンを殴り殺せる訳ないだろ!?」



「それを今から試すんだよ、間抜け。

剣と魔法の世界に生きてる癖に

夢がねェ奴だな……」



「もういい、終わらせろ。」


 

「ガオォッ!!」



獅子が牙を剥いてアウトキャストに

飛び掛かり、それと同時に

アウトキャストも拳を突き出す!



「うおおぉぉぉ!!」



骨が激しく軋み、関節が悲鳴を上げ、

血管が音を立てて破裂していく!



破城槌バトリング・ラム!!」




ズ ド オ ン ! !




「キャウン」



轟音の中でか細い悲鳴を上げ、

最強のキメラ兵器が壁を突き破って

研究室の培養槽を叩き割る。



ふらつきながらも立ち上がるが

たてがみに覆われた凛々しい顔面は

半ば崩壊しており、剥き出しに

なった歯茎から牙が抜け落ちる。



「……グゥフ」



血を吐きながらも唸り声を上げ、

低姿勢を維持しつつ構えを取った。



「それ見ろ…ボリスを殺せる奴なんて

この世に存在しないんだよバカが!」



瓦礫の奥からクロスボウを抱えた

研究員が現れ、片腕を押さえている

アウトキャストを嘲笑う。



「どこまで外道なんだてめェは…」



「さぁトドメをさせ、新鮮な肉を」



バキィッ!



「えっ」



次の瞬間、クロスボウがへし折られ

断面から機械油と配線が飛び出した。



「は、はひーっ!ボリス、貴様何を」



彼は気付いていない。

ボリスの首輪が破壊され、残骸となって

自分の足元に転がっている事に……



「グオォォ……!」



「やめろ」



追撃の準備をするボリスだったが、

アウトキャストの一言によって

大人しく引き下がる。



「わ、私は命令されてやっただけだ、

金がなら幾らでもやる!だから」



「オラァ!」



命乞いも虚しく地面に叩きつけられ、

鼈甲の眼鏡フレームがひしゃげる。



「ぐわっ!?」



「”やる”って何だよお前、それが

人に物頼む時の態度か、あん?」



「ふざけるな……これは犯罪だぞ!

人の了承もなしに大勢で押し入って

書類やらを漁りやがって、それを

金で解決してやろうと言ってるんだ!

これだから馬鹿なガキは困る!」



研究員は胸ぐらを掴まれながらも

激しく抵抗し、大声で叫ぶ。



「先生!曲者です、侵入者です!」



バチッ!



次の瞬間、紫色の稲妻が走り

黒装束に身を包んだ冒険者が現れる。


美しい銀仮面を被り、アメジストにも

似た水晶質の角を頭から生やした

その男の名は、冒険者であれば

誰でも知っているものだ。



「なっ…お前、いや、アンタは……

Sランクのスワッシュバックラー!」



アウトキャストは驚愕し、戦慄した。

史上最年少でSランク冒険者となった

伝説の男が目の前にいる。



「よりによってアンタか……!」



「ハハハッ、ツキが回って来たぞ!

幾ら貴様が強くともその身体では

先生に手も足も出まい……!」



「グルル……」



自分の認めた男の敵であるのなら

容赦なく噛み砕く、といった具合に

手負いの獣が凄む。



「やめろネコ助、死んじまうぞ!」



スワッシュバックラーは静かに頷く…

彼の呼び掛けに賛同しているのだろう、

腕を組んだまま目線で撤退を促す。



「ギャオン……」



ボリスは何度か振り返りながら

心配そうにその場を立ち去る。



「ネコ助見ても殺すなよエイジ!」


「そ、それってボリスの事?」


「そうだ、俺の代わりにソイツを

連れてSランク殺す準備しとけ。

あと、シンに謝っといてくれ……

約束守れないかも知れねェ。」


「えっ」



アウトキャストは一方的に連絡を

終えると研究員を殴り飛ばして

失神させ、強敵に向き直る。



「何だ、律儀に待ってたのかよ!?

悪党に手ェ貸す割に真面目だよな。

まぁ俺も大概悪党なんだけど……」



ヒュン!



「うわっ!」



回復のポーションが投げ渡され、

アウトキャストが悲鳴を上げる。



「ああ、回復ね!ビックリした……

もう斬られたかと思ったよ。

こんなの無くても結果は大して

変わらねェと思うがな。」



「………………」



バチッ



スワッシュバックラーは

首を横に振って否定の意を示すと

彼の間合いまで光速で移動し、

丁寧な所作でスコップを手渡した。



「……フッ、ここまで期待されて

逃げるのは男じゃねェ、か。」



スワッシュバックラーが目の前の

強者に敬意を払い、一礼をすると

アウトキャストもそれに応える。



「こう見えてアンタのファンでよ、

死ぬ前に握手してくれないか?」



「…………!」



スワッシュバックラーは少し驚いたが

慣れているのか、軽く頷いて

アウトキャストに握手を求める。



「あざーす」



ガシッ



アウトキャストは彼の手を握ると

全力で氷魔法を発動して腕を固定、



「死ねえッ!!」



グ シ ャ ッ



そのままハイキックを顔面目掛けて

叩き込み、スワッシュバックラーを

吹き飛ばし壁に叩きつける!



「チィッ、寸前で逸らしたか!」



スワッシュバックラーの刺剣が

雷鳴を轟かせ、0.1秒前まで

彼がいた空間を斬り刻んでゆく!



(……手柄はシンに譲る事になるか、

せいぜい楽させてやらねェとな。)



キ ィ ン !



アウトキャストは動きを止めるため

鍔迫り合いに持ち込むが、徐々に

押されてゆく!



ズバァ!



雷を纏った斬撃を氷の殻で防ぎ、

装束の端を掴んで投げ飛ばした!



タンッ!



「オラオラオラオラオラオラ!!」



ガガガガガッ!



だがスワッシュバックラーは最強の

代名詞たるSランク冒険者、壁を蹴り

直撃を避けると同時に体勢を整えて

徒手空拳での追撃を捌いてゆく!



ド オ ッ 



蹴りでアウトキャストを弾き飛ばし

間合いを確保し、鋭い突きを放つ!



「ナマクラがぁ!」



アウトキャストは刺剣を拳で弾き、

そのままタックルを繰り出すが

もうスワッシュバックラーは居ない。



ギィン!



「危なっ!?」


 

背後からの斬撃をスコップで受け、

狭い部屋を飛び回りながら

氷柱を飛ばして敵を牽制する!



バチッ



「ぐはッ!?」



スワッシュバックラーは目を細め、

稲妻を纏って光速移動すると一瞬で

間合いを詰め、剣で脇腹を抉る!



「ぐっ……」



アウトキャストは血を吐いて

片膝を突き、敵を睨みつける……

肩で息こそしているものの、未だ

有効打は与えられていない。



(来る……!)



バチン



スワッシュバックラーが稲妻を

纏った瞬間、アウトキャストは

喉に溜まった大量の血を敵の顔面に

吐きかけて凍らせ、視界を塞ぐ!



「…………ッ!?」



「オラァ!!」



肝臓を狙った鋭い右フックが炸裂し

スワッシュバックラーが怯む!



「クソが!」



スワッシュバックラーは

真っ赤な泡を吐きながらスコップを

振り上げるアウトキャストを見て

満足そうに目を細め、血に濡れた

銀仮面を外して素顔を晒す。



許されざる純愛レ・ヴィエタート・ルナ



「はうっ」



最高のパーツが最良の位置に存在する

中性的な顔だった。


傷も汚れもなく、人形のように白く

美しい白紫色の滑らかな肌に薄い唇、

宝石のように透明感のある紫の瞳。


まるで金属を薄く、細かくしたような

均等で艶のある灰色の長髪……

本能が傷付ける事を拒んでいる。


 

「か、身体がうまく動かねェ……

また精神攻撃系かよ!?」



「こうでもしないと君を無意味に

傷つけてしまうからね、

久しぶりに本気で戦えたよ。」



スワッシュバックラーは

幽鬼の髪で編んだ手袋を脱ぐと

彼のサングラスを優しく外し、

左手で頬を軽く撫でた。


シュッ



「くっ……」



脳が痙攣するように異質な刺激に

アウトキャストが苦悶の声を上げる。



「じゃ、本気で堕としにいくから…

痛かったらちゃんと言ってね。」



「……当ててやろうか?

雷魔法と魅了魔法の合わせ技だろ」



「正解。」



シュッ



「ぐうっ!?」



満点を取った子供を褒めるように、

スワッシュバックラーは彼の頬を

もう一度撫でた。触れられた箇所に

電流が走り、力が抜けてゆくと

同時に敵意が薄らいで来る……



「凄いね、まだ耐えるんだ……

普通は一発で堕ちるんだけど。」



「あぁ、すげェ鳥肌立った……

ハンドクリーム何使ってんの?」



「自分で調合したんだ」



シュッ



「クソ……この変態が!

まだ96人しか殺してないような

ガキを魔法で苦しめて楽しいか!」



「まぁ変態なのは否定しないけど

一応は騎士だからね、君が痛がる事や

嫌がる事はしてあげられないよ。」



「じゃあ何が目的だ、性悪女!」



「君が誰の指示で動いてたか教えて

くれるとすごく助かるんだよね……

もちろん、タダでとは言わない。」



「い……嫌だね、俺はお前みたいに

プライドが高い女の言う事を無視して

イラつかせるのが大好きなんだよ…!」



「参ったなぁ……そんな事言われても」



スワッシュバックラーは彼の首を

掴み、絶えず電流を送り込む!



「興奮するだけなんだよね」



「ぐっ……あぁァァァッ!?」



「ほら、早くしないと脳味噌電流で

焼かれて所有物になっちゃうよ?」



「お……俺は、アイツの指図しか

受けない……もう金の奴隷じゃない!

アイツだけは裏切っちゃなんねえ……

俺たちのように汚れた連中が……」



「口にも出さない、手も出さない、

そんな女の子を好きになったとして

報われる訳がないと思うけど?」



「……分かってる」



「えっ」



アウトキャストの頭突きが

スワッシュバックラーの胴に命中し、

培養槽を突き破って敵が吹き飛ぶ。


 

「そんな事は分かってんだよ……

ただ、異世界こっちに来てから

嫌な事が多くてなぁ……そんな時に

優しくされて、勘違いしたんだ。」



震える手でスコップを握りしめ、

血を吐きながら敵に歩み寄る。



「前世は病気のせいで歩けなかった。

だから、強くなりたかった……

強いアイツの隣に並んだとしても

恥ずかしくないような男になりたい。

そんな“憧れ”が俺を強くした……」



「憧れ無くして成長は存在しねェ、

裏を返せば俺のようなクズでも

憧れがあればここまで強くなれる」



「………ッ」



スワッシュバックラーは何かを

思い出し、口を開こうとしたが

彼の覚悟を汲んで剣を抜いた。



「Sランク冒険者と差し違える

位には強くなれるんだよォォ!」



「……いい仲間を持っ」



破城槌バトリング・ラム!」



ド ゴ ン ッ !



スワッシュバックラーの胴を

筋力と質量の塊が撃ち抜き、

壁に叩きつけて沈黙させた。



「よく持ち堪えましたわね、

さすが私の親友ですわ!」



「……また手柄を横取りしたな、

スワッシュバックラーを殺せば

一躍有名人になれたのに。」



「死亡記事なんて御免ですわよ。」



「だな……助かったぜ。」



「他の三人を手伝いに行きましょ♪」



「待てよ、まだやる事がある……

オラアァァァァッ!!」



「ふぎゃっ!?」



アウトキャストは地面に伸びている

スワッシュバックラーに歩み寄り、

脇腹を思い切り蹴り上げた。



「うぐ、ステーキが戻って来そう」



「このクソ女、よくもこの俺様を

散々コケにしてくれたな……!」



ガッ ガッ ガッ!



スワッシュバックラーの頭を何度も

踏みつけ、髪を血で汚しながら

アウトキャストが凄む。



「女子の前で恥かかせやがって!

オラーッ死んでまえこの外道!」



ガッ ガッ



「ちょっ……ちょっと待って、

さっきまで認め合う的な感じで」



「うるせェ!敗者に人権があると

思うなよ、同人誌ですらヌルいと

感じるくらい屈辱を与えてやる!」



ガッ ガッ



「ちょ、助けてってば……

このままじゃ殺されちゃうよ僕」



「フン、100%自業自得ですわ、

セタンタ様が見たら笑うでしょうね。」



「も、もうしないから、お願い!」 



「殺し合いに二度目はねェんだよ

このゴミクズドブ野郎ーッ!」



「その辺で許してやって下さいまし」



シンビジウムは心底呆れた様子で

アウトキャストを羽交い締めにして

敗者への追撃をやめさせた。



「何だよ、知り合いか?」



「……この男はベラドンナ。

私の……その、実の兄ですわ。」



「男……兄貴……シン、お前

冗談は嫌いじゃなかったのかよ」



「本当、冗談なら良かったのに。」



スワッシュバックラーは服を叩いて

埃を落とすと、髪型を直している。



「えっと……めちゃくちゃ強いし

顔もカッコいいよな、お前の兄貴。

いい男だと思うぜ、うん。」



「あなたに気を遣わせるなんて、

多分お兄様が初めてですわね……」



「取り敢えず、顔洗って来るわ。

野郎に触られてドキドキするとか

一生モノの不覚だし。」



「ちょ、酷くない!?」



アウトキャストは重役専用の

居住区に向かい、洗面所に駆け込むと

ミネラルウォーターを頭から被った。



「……今月で一番の贅沢したな、俺」



髪を乾かしながら、鏡の前で呟く。



「Sランク冒険者相手に本気で戦って、

1本30Gもする水で髪を洗った……」



「世界一の美少年をサンドバッグに

した、も追加ね」



「わあっ!?」



いつの間にかベラドンナが背後に現れ、

アウトキャストの髪にブラシをかける。



「怖えよ」



「さっきは意地悪してごめんね……

ほら、シンって騙されやすいから

悪い男に引っ掛かる事も多いんだ。」



「……待てよ、俺を試す為だけに

あんな連中と手を組んだのか?」



「いや、元から潜入中だったんだ。

先月に重役の一人が流した告発文を

偶然見つけてさ……その人を逃す為に

長期の護衛を引き受けたって訳。

彼は上手くやってくれたみたいだね。」



「全部アンタの思惑通りって訳だ」



「いや……君の強さは予想外だった。

プライドが高いとは聞いていたけど

あそこまで粘った人は久しぶりかな」



「……これから先、辛い事があったら

アンタに拷問された時を思い出すよ。」



「えー、気持ちよかったでしょ?」



「ああ、お陰で肩凝りが取れたよ…

だが俺は気に食わない奴に従うのが

死ぬ程嫌いなんだ、分かってくれ。」 



「……いいね、そういうメンタルで

弱い人って見た事ないんだ。」



「悔しいが……アンタに言われて

悪い気はしねェな、ありがとよ。」



ベラドンナはそれを聞いて微笑むと、

ブラシをマルチバッグに入れる……



「君って歳の割に顔付きが幼いから

可愛い系の方が似合うと思ったんだ。

流石僕、天才すぎ!」



アウトキャストの紫がかった銀髪は

オールバックからショートボブに

なっており、サングラスも円形で

色が薄いものになっていた。



「確かに似合ってるけどよ……

俺のキャラと合わなくね?」



「そこが良いんだよ!この顔で

毒吐きまくってチンピラ丸出しの

言動と戦闘スタイル、最&高!

屈服させた時の顔を想像するだけで

パン10枚はいけちゃうね!」



「だから怖えって」



ベラドンナはハンカチで涎を拭い、

目を輝かせながら熱弁する。



「……ま、アンタ程の色男がそこまで

言うんだ、前よりはマシになったか。」



「ちょっとは自信ついた?」



「あぁ、かなりノって来たぜ。

返り血を浴びないようにしなきゃな」



「じゃ、ちょっと遊ぼうか♪」




ドンッ!



二人は武器を担ぎ、ドアを蹴破って

シンビジウムの両隣に立つ。



「送迎車が来るには早くない?」



20人余りの冒険者が一斉に剣や弓、

魔術杖を構えてベラドンナ達を

油断なく取り囲む。



「これはスワッシュバックラー様…

悪徳企業の陰謀を暴くだけではなく

ナンバーテンも捕らえるとはお見事、

あとは我々にお任せ下さい。」



代表者らしきハイエルフが三人の前に

現れ、大袈裟な動きで一礼した。



「この方々、第38支部の所属ですわ。

自分の管轄下で起きた事件だから

後は任せて欲しい、と……」



「東洋街の連中が苦しんでる間は

何もせず、企業が尻尾を出した途端に

手柄の横取りとは立派な心がけだ……

アンタもそう思わねェか?」



「同感……今度からギルドには

事後報告した方がいいかもね。

どこから情報が漏れたのかな?

僕たちだけで手は足りると思うけど」



二人の挑発に、ハイエルフの

眉がぴくりと痙攣する。



「……お互い、無意味に傷つくのは

避けたいと思いませんか?」



「傷つく?傷つくって……プッ!

コイツらこの俺に傷をつけられると

本気で思ってんのか、マジウケる!

ギャハハハハハハッ!!」



アウトキャストは笑い転げながら

身体を二つ折りにして悶え、

これ以上ない程に不快な声を出す。



「ヒャハハハハハハーッ!ダメだ、

助けてくれ……笑い殺される!

最高位の冗談魔法の使い手だぁ!」



「ぐっ……下等種族が……!」



ハイエルフの整った顔が怒りに歪み

杖を握る手が小刻みに震える。



「私に殴られた時より苦しんでるの

なんか嫉妬しちゃいますわね。」



シンビジウムは半ば呆れた様子で

アウトキャストを抱き起こしながら

心底不機嫌そうに呟く。



「……それで、気は済みましたか?

ではさっさと決めて」



更に不機嫌そうなハイエルフが

魔法陣を展開しながら詰め寄る……



「遺言はそれで大丈夫?」



バチン



「えっ」



ハイエルフの眼前にベラドンナが

現れ、首に小さく赤い筋が入る。



「ぐうっ!?」



本能的に回避したものの傷口からは

真っ赤な血が吹き出し、

全身の体温が一気に下がる。



「あらら、意外と察しがいいね…

確かBランクのコーヴァス君だっけ?

こんな事しなくても昇格できそうだし

点数稼ぎとか要らないと思うけど?」



「……正当防衛だ、殺せ!」



コーヴァスと呼ばれたエルフの指示で

屈強な冒険者たちが殺到する!



「所詮は三人、多勢に無勢だ!」


「討ち取って名を上げろ!」


「Sランクをぶち殺せえっ!」



「可愛い女の子いるかな?」


「あぁ、俺の隣に一人いる」


「もう!皮肉はよそで言って!」




三人は武器と魔術を構え、

コーヴァスの軍勢に真っ向から挑む!









続く



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