第10話:社会科見学


 聖女適性試験に合格し、聖女学院の学生寮へ戻ったルナ。


 彼女は今現在、


「あぁ~、極楽極楽ぅ……」


 肩までとっぷりと湯船につかり、今日一日の疲れを洗い流していた。


「スペディオ家のお風呂もよかったけど、ここのも十分いい感じかもー……」


 ルナがお風呂の中でとろけていると、浴室の外からローの声が聞こえてくる。


「――ルナ様、お湯加減はいかがですか?」


「もうばっちり、このまま溶けちゃいそうだよ」


「それは何よりです」


 彼女はそう言うと、脱衣所から退出した。


「それにしても、時代は豊かになったなぁ」


 ルナはぬくぬくのお湯につかりながら、文明の利器に感動する。


 円筒状えんとうじょうの棒に火と水の魔石を詰めた『ウォッシャー』、これに魔力を通せば、棒の先端から温かいお湯が噴き出し、いつでも好きな時に髪や体を洗える。


 円状に加工した鉄製の輪に火の魔石を詰めた『ヒーター』、浴槽の底に張られたこれに魔力を通せば、お風呂の温度を自由に上げられ、ポカポカの湯船につかれる。


 三百年前、こんな便利なものはなかった。


 髪や体を洗うためには、外で水をんでくる必要があったし、お風呂を沸かすにはまきをくべて、火を焚かねばならない。


「いやぁ、便利な時代になったものですなぁ……」


 ルナはしみじみとそんなことを呟きながら、温かいお風呂を満喫するのだった。


 しばらくして、湯船からあがったルナは、ふわふわのタオルで体の水気を拭き取り、就寝用のルームウェアに着替えた後、ローに髪を乾かしてもらう。


 転生した直後は、「髪ぐらい自分で乾かせるってば!」と言って拒否していたのだが……。「髪のお手入れは侍女の仕事です」とローがかたくなに主張を曲げなかったので、仕方なく一度だけ髪をとかしてもらったところ――思いのほかいい気持ちだったので、そのままお願いすることにしたのだ。


 ローは柔らかいタオルで、ルナの髪の水分を優しく吸い取り、木のくしを使って丁寧に整えていく。


「――終わりました」


「いつもありがと」


「いえ、当然のことですから」


 そうしてお風呂を済ませたルナは、氷の魔石が入った大きな直方体の箱――『フリッジ』の中から、ガラス瓶のフルーツジュースを取り出す。


「ふーんふふーんふふーん」


 上機嫌に鼻歌を奏でながら、瓶のフタを爪でカリカリと外し、キンキン冷えたそれを一気にグィッと飲み干す。


「くぅ~ッ。やっぱりお風呂上がりの一本は格別だ!」


「わふっ!」


 ご機嫌な御主人様の声に呼応して、タマも元気よく吠えた。


「よーし、タマ、一緒に遊ぼっか!」


「わんっ!」


 小さなおもちゃのボールでタマと遊んだ後は、ローと一緒に夜ごはんを食べる。


 ちなみに……料理と後片付けは当番制だ。

 ローは「私が全て担当します」と言ったのだが、「共同生活なんだから、家事は協力してやらなきゃ!」とルナが説得したところ、本当に渋々「ルナ様がそう仰られるのなら……」と折れたのだ。


 そうこうしているうちに時計の針は進んで行き、もう間もなく深夜零時を迎える。


「ふわぁ……おやすみ、ロー」


「おやすみなさいませ、ルナ様」


 それぞれのベッドに移動した二人は、明日に備えてゆっくりと体を休めるのだった。



 聖女適性試験が終わった後、聖女学院は一時的に午前授業のみとなった。

 これは学生の体調コンディションに配慮した措置であり、およそ一週間にわたって適用されるのが通例だ。


 そして今日この日――厳しい試験を乗り越えた生徒たちへ、『社会科見学』という楽しい行事ごほうびもたらされる。


 行先いきさきは、王都の郊外に位置する、エルギア王立博物館。

 歴史的な遺物・文化的な工芸品・著名な画家による美術品などなど、希少な価値を持つ品々が展示されるここは、エルギア王国でも有数の観光スポットだ。


 この博物館には、世界中の人々を引き付けてやまない、超特大の『目玉』がある。

 その展示物の名称は――『聖遺物』、伝説の聖女パーティが遺した、人類史に残る究極の宝だ。


 そして現在、博物館前に集合した聖女学院の生徒たちは、正面玄関の横で――一般来場者の迷惑にならない位置で、班ごとに分かれて座っていた。


「ふふっ、楽しみだね、博物館巡り!」


 胸を高鳴らせたルナがそう言うと、両隣のローとサルコが柔らかく微笑む。


「そうだねー。ルナは興奮し過ぎて、昨日全然寝付けなかったもんねー」


「あら、ルナはまだまだお子様ですわね」


「ちょ、ちょっとロー、それは秘密って言ったでしょ!? サルコさんも笑わないでください!」


 ルナは慣れ親しんだ侍女のローと新しい友達のサルコと一緒に班を組んだ。


 ちなみに……ローが敬語を使っていないのは、サルコがすぐ近くにいるためである。


 ルナ・ロー・サルコの三人が、雑談に花を咲かせていると……聖なる十字架を握り締めた一団が、博物館の正門前に集結し始めた。


「――さぁみな、今日もまた聖女様に祈りを捧げるのだ!」


 指導者らしき男がそう言うと同時、その場に集う人たちが全員、張り裂けんばかりの大声をあげる。


「「「聖女様……ッ! 聖女様……ッ! 聖女様……ッ!」」」


 彼らは途轍もない熱量で、ただひたすらに『聖女様』と叫び続けた。

 なんとも熱狂的な集団である。


「ね、ねぇ、あの人たち、いったい何をしてるの……?」


 ドン引きしたルナの問いに答えたのは、王都周辺の事情に詳しいサルコだ。


「あぁ……あれは聖女教せいじょきょうですわ」


「聖女教?」


「王都に本拠地を置く、聖女様を信奉する狂信者の集まりです。毎日ああやって決められた時刻に、聖女様へ祈りを捧げておりますの」


「あ、あの熱量を毎日ですか!?」


「えぇ。……あまり大きな声では言えませんけど、聖女教には関わらない方がいいですわ。彼らの強引な布教は、尋常じゃありませんもの」


「な、なるほど、わかりました(聖女教、思想が強めの危険な集団ですね……)」


 ルナは聖女教への警戒を強めた。


 そうこうしているうちに、生徒の出席状況を確認し終えた引率のジュラールが、コホンと咳払いをして注目を集める。


「生徒諸君、本日はこれより課外授業として社会科見学を行う。エルギア王立博物館は、我が国の民はもちろんのこと、帝国・神国・共和国など周辺諸国からの観光客も多い。エルギア王国の品位を落とさぬよう、げんつつしみを持って見学するように――よろしいな?」


「「「はい」」」


「それではこれより二時間の自由行動とする――解散」


 ジュラールがパンと手を打ち鳴らすと同時、生徒たちはみな博物館の入場ゲートへ向かう。


「ロー、サルコさん、私達も行きましょう!」


「あ、ちょっ、引っ張り過ぎだってば」


「ふふっ、元気がよろしいですわね」


 ルナはローとサルコの手を取り、博物館の中に入っていった。


「おぉー……。あんまりよくわからないけど、価値のありそうなものがいっぱいだ」


 キョロキョロと周囲を見回したルナは、最初の展示品のもとへ足を向ける。


「うわぁ、綺麗な絵だなぁ……」


 壁に掛けられた美しい風景画を見上げていると、横合いからサルコが解説を加える。


「そちらはエルギア王国第五代国王ダフード・ロウ・エルギアが、お描きになられた風景画『ラウネス湖のほとりにて』。病床に伏したダフード王が、若き日に王妃とお出掛けになられたラウネス湖を思い起こしながら、かろうじて動く人差し指一本で描いた傑作ですわ。光り輝く美しい湖面こめん・青々と茂る草原・雲一つない青空、荒々しくも繊細なタッチが見る人の心を揺さぶりますの」


 彼女はよどみなく、すらすらと展示品の説明をした。


「サルコさん、こういうの詳しいんですか?」


「もしかして、割とここ、リピッてる感じ?」


 ルナとローの問いに対し、サルコはコクリと頷いた。


「えぇ。小さい頃はよくお父様にせがんで、何度もこの博物館に連れて来てもらいましたから、ほとんど全ての展示物について知っておりますわ」


「それは凄いですね!」


「じゃあさ、さっきの紹介的なアレ、もっとお願いできる感じ?」


「えぇもちろん、朝飯前でございます」


 サルコはそう言うと、ちょうど近くにあった、展示物に目を向ける。


「こちらは、かつて大魔王が羽織っていたとされる漆黒のローブです。このローブにはまだ大魔王の魔力が残っているため、何重もの強力な封印魔法を施したうえで、このように飾られておりますの」


「おぉー、懐かしいですね(そう言えば大魔王、こんなの着ていたなぁ)」


 ルナがなんのけなしに感想を述べると同時、


「「懐かしい?」」


 ローとサルコの声が完璧に重なった。


「えっ、あ゛っ、いや……」


 自分が途轍とてつもない大失言をしたことに気付いたルナは、その優れた聖女ブレインをフルに活用し、この窮地を逃れる策を考える。


 その結果、


「な、懐かしいなー! 昔、こういう黒のローブ流行ったよね? ね!?」


 特に名案は思い浮かばず、強引な正面突破を試みた。


「えー、こんなダサいの流行はやったっけ?」


「私の周りでは、そのようなことはなかったかと」


「そ、そう……? あれぇ、おかしいなー、私の記憶違いかなぁ?」


 見るからに挙動不審なルナを見た二人は、


「まっ、ルナが変なのはいつものことだしね」


「えぇ、そうですわね」


 特に違和感を持つことなく、次の展示品へ向かっていく。


 無事に窮地を脱出したルナだが……。


(待って、私って……そんなに変、なの……?)


 彼女の胸中は、かなり複雑だった。


 その後、いろいろな展示物を見て回っていく中、とある大きなホールにたくさんの人だかりを見つけた。


「あそこ、凄い人だね。みんな、何を見ているんだろ?」


「んー? あー、聖遺物っぽいね」


「ここの目玉の一つですわね、行ってみましょう」


 三人が真っ直ぐ進むとそこには――大きなガラスケースが三つ並べられており、その中に聖遺物と見られる品々が飾られてあった。


 博物館の目玉ということもあってか、周囲には警備員が立ち並び、鋭く目を光らせている。

 また展示品の近くに設置された立て札には、聖遺物の詳細が事細かに記されており、ガイドスタッフと見られる女性がその解説を行っていた。


「こちらは伝説の聖女パーティの一員、大剣士ゼル様がお使いになったと言われる短刀。彼はこの小さな短刀を用いて、幾多の魔族を斬り捨てた、と言われております」


 流暢りゅうちょうな説明を聞きながら、ルナは心の中で感嘆の声を漏らす。


(使ってた使ってた! よくあれでお野菜切ったり、お肉さばいたりしてた! ふふっ……ゼルの料理、懐かしいなぁ)


 その他にも大魔法士シャシャのブランケットや大僧侶フィオーナの帽子などなど、様々な聖遺物が展示されている。


 それらを目にしたルナは、三百年前の思い出にひたる。


(伝説の聖女パーティ、か……。みんな、もう死んじゃっているよね)


 大魔王を討つために世界中から集められた人類最強の傭兵部隊、それが聖女パーティだ。

 みんなそれぞれが強過ぎる力を持ってしまったがゆえ、様々な苦労を経験してきた、心に傷がある者たちの集まり。

 とても癖の強いパーティだったけれど、活動した期間は一年に満たなかったけれど――それでも彼らと一緒に過ごした時間は、ルナが嘘偽りなく「楽しかった」と言える貴重なものだった。


 剣士ゼル・魔女シャシャ・僧侶フィオーナ――かつての仲間たちの遺品を眺めつつ、ガイドスタッフの説明を聞いていたルナは、とある奇妙なことに気が付いた。


(……ない)


 ゼル・シャシャ・フィオーナ、みんなの名前は立て札にもきちんと書かれているのに、『聖女様』という文言はたくさん出て来るのに、自分の名前がどこにもない。


 いっそ不自然なほど、『ルナ』という固有名詞が消されているのだ。


(うーん……なんでだろう?)


 不審に思ったルナは、ローとサルコに聞いてみる。


「そう言えば……聖女様の名前はなんていうんですか?」


 答えを返したのは、サルコだった。


「それは……残念ながら、誰にもわかりません」


「えっ、どういうこと?」


「聖女様のお名前や御功績はほとんど全て、消されてしまったのです。人類史に残る汚点……あのおぞましき『聖滅せいめつ運動』によって……っ」


「せいめつうんどう……?」


 初めて聞く言葉に、ルナが小首を傾げていると、サルコが丁寧に説明してくれた。


「聖滅運動は、聖女様が処刑された後に起こった、最低最悪の事件。聖女様に全ての責任を押し付けた愚かな人類は、彼女の全てを『悪』と断じ、彼女がこの世界に生きた一切の痕跡を消すべく、彼女の旧家や所縁ゆかりのあった場所を攻撃――歴史から葬り去ったのです」


「そ、そんなことが……」


「それよりもルナ……あなたそんなことも知らないで、よく筆記試験を通りましたわね。聖女様の処刑とその後に続く聖滅運動は、幼稚舎ようちしゃの学習範囲ですわよ?」


「う゛ぇ!? そ、それはその……っ」


 ルナがなんて説明したらいいのか困っていると、横合いから助け舟が出される。


「実はこの子さ。少し前に馬車にかれちゃって、頭がちょっとおかしくなっちゃってんだよね」


「まぁ、そうだったのですか。言われてみれば……大魔王のローブを見たときも変なことを言っておりましたし、日常でもたまに『ん?』と思う発言がありますわね」


「多分もうちょっちしたら、落ち着いてくると思うから、優しい目で見てあげてね」


「えぇ、わかりましたわ」


 そうして主の窮地を見事に救い出したローは、こっそりとルナに向けて親指を立てる。


(ルナ様、フォローしておきましたよ)


(もぅ、ローのバカ……!)


 伝説の聖女パーティの聖遺物を見終えた三人は、その後、館内に併設された売店に足を運んだ。


「あっ、これ可愛い!」


 ルナはそう言って、小さな子豚のクッションを手に取る。


「え、えー……不細工じゃない?」


「これは……中々にアリですわね!」


「でしょでしょ!」


「マジぃ?」


 そうして買い物を楽しむ三人は、どこにでもいる普通の少女のようだった。


 最近、ルナはよく笑う。


 彼女の過去を知らぬ者が見れば、「普通の生活を送っているだけなのに、どうしてあんなに楽しそうなんだろう?」と疑問に思うかもしれない。


 しかし、長年にわたって聖女という重荷を背負わされ、ひたすら最前線で戦い続けてきたルナにとっては、この平和で普通な毎日がたまらなく楽しかった。

 友達と学校に行って授業を受けたり、休み時間に他愛もない話で盛り上がったり、たまの休日に遊びに出かけたり――そんなどこにでもある日常の一ページが、どうしようもなく幸せだった。


 その後、ちょっとした買い物を終えた三人は、博物館巡りを再開させ――ついに最後の展示物のところへ向かう。


 それはエルギア王国の『国宝』であり、世界中で最も有名な書物の一つ。


 聖女の予言書、通称『赤の書』だ。


 ここにいる観光客はみな、聖女の予言書を一目見んとして、この博物館へ足を運んでいるのだ。


「あちらに展示されているのが、聖女様がお残しになられた『七つの予言書』の一つ――『赤の書』ですわ」


 サルコの指さす先には、とんでもない人だかりができていた。


(聖女の予言書……なんかちょくちょくと耳に挟む言葉だなぁ……)


 当の本人であるルナには、そのようなものを書き残した記憶はない。


「聖女様の予言書は、国宝の中の国宝。当然ながら、ここに展示されているものは複製レプリカ原典オリジナルは、王国の最深部にて厳重に保管され、今なお解読が進められておりますわ」


「王国の最重要機密扱いなんだよねー。一般公開されている複製は、解読が済んだ原典のほんの一部だとか?」


「へぇ、そうなんですか」


 サルコとローの小話を聞きながら、赤の書の待機列に並ぶ。


 赤の書はあまりにも観覧かんらん希望者が多いため、専用ホールに置かれており、ここに入るためには待機列に並んで、順番を待たなくてはならない。

 十分ごとに百人ほどのグループがホールに入り、赤の書を見ながら、ガイドスタッフの解説を聞く――この流れが一日に何度も繰り返されるのだ。


 待機列に並んだルナ・ロー・サルコが、雑談を交わしながら待つことしばし――ようやく彼女たちに順番が回って来た。


「――次のグループの方は、こちらへどうぞ」


 ガイドスタッフの声を受け、ルナたちの属するグループが一斉に動き出す。


 赤の書は大きな専用ホールのど真ん中、三重のガラスケースに収められていた。

 それは『本』というより『紙』、バラバラにされたページが合計十八枚、上下二列になって綺麗に並べられている。

 原典はちゃんと本の形になっているのだが、こちらは複製品のため、わざとページを切り離して置き、観覧客が見やすいように工夫されているのだ。


「おぉ、これがあの有名な赤の書か……!」


「聖女様がお残しになられた、人類の希望の書……!」


「あぁ、夢が叶いましたわ……っ。死ぬまでに一度だけでも、この眼で見たかったのです……!」


 他の観覧客が大いに盛り上がる中、


「……う、そ……っ」


 ルナはただ一人、呆然と立ち尽くす。


 驚愕に震えた。

 我が目を疑った。

 言葉も出なかった。


 それもそのはず……。


(わ、私の黒歴史・・・が……世界中に晒されている……!?)


 展示されていたのは、三百年前にルナが書いた私小説ししょうせつ

 主人公である聖女じぶんが、白馬の王子様に溺愛できあいされるという、甘酸あまずっぱくてちょっぴりエッチな恋の物語がつづられている。


 展示された赤の書には、専用のガイドスタッフが付いており、よく通るいい声で解説を始める。


「まずは赤の書の5ページ三行目をご覧ください。『あぁいけません、殿下……っ』。これは宮中におられる聖女様が、第三皇子バース・センチュリーに言い寄られるシーンです。第三王子は『三』、センチュリーは『百年』、バースは『復活』を意味します。これらを繋ぎ合わせれば、『三百年後に聖女様が復活する』という予言になるのです。さらに注目すべきは、8ページ十二行目の――」


(お願いだから、もうやめてぇ……っ)


 耳まで真っ赤に染めたルナは、両手で覆い隠した。


 彼女のライフは、もうとっくの昔にゼロなのだが……。

 ガイドスタッフはそんなことなどお構いなしに、活き活きと無慈悲な解説こうげきを続ける。


 途轍とてつもないオーバーキル状態だ。


(こ、こんなえげつないこと、普通できるものじゃない……っ。やっぱり人類は邪悪の結晶だ。こんなごうの深い生き物、救えるわけがない……ッ)


 ルナはかつての自分の判断が、人類を見限ったことが正しかったのだと強く再認識する。


(……たとえどんな手を使っても、この黒歴史だけは絶対にほふらなければ……っ)


 ルナはエルギア王国の国宝を――世界中に晒し上げられた自分の黒歴史の滅却めっきゃくを、固く心に誓うのだった。

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