第3話 仲良しか



「なあ凪。ゲームしたくねえ?」

「したくねえ」

「ってことでゲーム持ってきましたー!」

「聞けよ俺の話をよ」



日曜日の午後になったばかりの頃、いきなり俺の家を訪れた陽翔の第一声がコレである。

何度かうちに来たことのある陽翔はそのままズカズカと中に入り、リビングへとその荷物を下ろした。



「で、そのでかいカバンの中にゲームを入れてきたってことか?………ったく、一体どれだけ………」



満面の笑みを浮かべている陽翔から一つのバッグを受け取り、中を開ける。

その瞬間目に入ったそれに、俺は思わず絶句した。



「…………お前、本体ごと持ってきやがったな」

「あたりー」

「『あたりー』じゃない。しかもこれパーティーゲームだし。二人でやるには大掛かりすぎないか?」

「そうだろ? ってことで」



ニヤッと笑った陽翔に嫌な予感がして、俺は一歩後ずさる。

その瞬間、いつも通りのファ〇リーマートのインターホン音が鳴った。


ガチャリ、と扉を開けると、やはりと言うべきか隣に住んでいる幼馴染と、その親友であり俺の友人でもあるそいつらがいて。



「「来ちゃった☆」」

「………だよなあ」



思わず天を仰いだ俺は、きっと悪くない。





◇◇◇◇◇





「あ、私あがりだー! 丁度いいし、ちょっとドリンク取ってくるね」

「冷蔵庫の左側な」

「知ってるよー」



安定のマ〇オパーティーをプレイしていると、一番に玲於奈があがりを宣言する。

そのままパタパタとかけていった玲於奈を見送った瞬間、陽翔本条でそれぞれ寄ってきたのを見て、俺は思わず渋い顔をした。



「…………で、どうだったのよ」

「何がだ」



何が『どう』だったのかわかっていながらも、俺は現実逃避のために一応とぼけさせてもらう。

そんな俺にニヤニヤしてさらに寄ってくる二名にテレビ画面を指差すと、二人は時間切れになりそうなサイコロを焦ったように選択した。



「なー、それでそれで?」

「だから、何がだ!」

「とぼけやがって。もちろん如月さんとのデートだよ。デ・エ・ト」

「気色悪い」

「流石の俺でも泣いちゃうよ?」



しくしく、と泣きまねをしてきた陽翔にうざい、と吐き捨てる。

それでもめげずに俺に話しかけた二人は本当に肝が座ってると思った。



「………別に。ちょっとぬいぐるみ取ったりして、そのあと軽くコインゲームしたぐらいだ」

「「へええええ? 『ちょっと』???」」



最初に少し声が上ずったのを二人におうむ返しされる事で再確認され、俺はテレビ画面を見ながら黙り込む。

ふんふん、やら、ほー、やら左右からそれぞれ聞こえる声をフル無視して、俺はAボタンをポチリと押した。




「あがり。次その話題出したらぶっ飛ばすからな」




そう言うと、左右からブーイングが飛んでくると同時に、帰ってきた玲於奈がこてりと首を傾げた。





◇◇◇◇◇






「よっ、ほっ、はっ」

「なあ凪、ひぃっ、まじっ、笑わせんのやめろよおっ、ひぃぃ」



…………人が真面目にプレイしているのに、なんて失礼なことを言うのだ。


あれからしばらく立ち、今はマ〇オのコースプレイ真っ最中である。


バンバン、と膝を叩いて大爆笑している陽翔の横で、本条はプルプルと肩を震わせ静かにうずくまり、玲於奈はいつも通りに見えて口元がピクピクと動いていた。



「ほっ、とっと、」

「バリエーション増やすなよぉ…………!」



もうやめて………と遂に息絶えてしまったらしい陽翔が震えて呟く。

チームプレイなんだから協力しろよというと、「協力させる気ねえだろ」というなんとも理不尽な言葉が返ってきた。



「あ、ほらもう本条のチームがゴールに、っと、よっ、ほいっ」

「ふっ………ちょ、なー、マジでやめてってあああああああマグママグママグマ!!」

「ふははは見ろ凪の口撃を!……っく、でもツボるな………って、待て俺もヤバいってクッ〇あああああああ! おい凪味方にも口撃すんのはダメだろ!」

「してねえよ。ノーダメだよ」



勝手にコントローラーをそっちのけで笑い始めて自爆した本条と陽翔に、俺はスンッと真顔になって答える。



「ほら、お前らがそんなんだから残ったのはマリ〇と助けられるはずのピー〇姫だけだ」

「ゲーム内でも現実リアルでもカップルって、リア充じゃん」



ゴトリ。


本条がそう言った瞬間、俺と玲於奈のコントローラーが鈍い音を立てて床へと落ちた。

それをじっと見つめたあと、真顔で陽翔が本条を見る。



「謝れ本条。今回はお前が悪い」

「ごめんなさぁい」



ぺこり、と本条が頭を下げたのがきっかけで時は動き、俺たちは慌ててコントローラーを拾う………が、手元が落ち着かない。

運が悪いことに強制スクロールのそのステージは、無惨にも主人公と姫をマグマへと突き落とした。



「「…………あああああ!!!」」

「仲良かよ」




——————————————————————————



お久しぶりです。よし、二ヶ月は経ってない(基準が低い)


次回は星那と陽翔による『第643回凪と玲於奈をくっつけよう会議(回数は適当)』です。


眠り姫のせいで陽翔をめっちゃ春輝って打っちゃう。

親友キャラの名前似てるとごちゃごちゃしてきてやばい。


面白いなとか続きが気になると思っていただけたら☆を塗りつぶしてくださると嬉しいです。

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